夫婦別姓(ふうふべっせい)、あるいは夫婦別氏(ふうふべっし/ふうふべつうじ)は、夫婦が結婚後も法的に改姓せず、婚前の姓(氏、名字、苗字)を名乗る婚姻および家族形態あるいは制度のことをいう[1]。これに対し、婚姻時に両者の姓を統一する婚姻および家族形態、またはその制度のことを「夫婦同姓」(ふうふどうせい)あるいは「夫婦同氏」(ふうふどうし/ふうふどううじ)という。夫婦別姓(氏)に限らない夫婦の婚前・婚姻後の姓一般については、「Maiden and married names
」(英語版記事)を参照。夫婦別姓・同姓を選択できる制度を、「選択的夫婦別姓」(せんたくてきふうふべっせい)、あるいは「選択的夫婦別氏」(せんたくてきふうふべっし/せんたくてきふうふべつうじ)と呼ぶ[2]。通称として旧氏(旧姓)を使用することは「旧姓通称使用」と呼ぶ[3][4]。現在法的に夫婦同氏が規定されているのは日本のみであり[5][6]、日本においては夫婦別姓を選択できる選択的夫婦別姓制度の導入の可否が議論・検討されている[7]。 日本においては、現在、民法750条 現代では、「氏」、「姓」、「名字」、「苗字」は、同義に扱われることが多い[12]。「夫婦別姓(氏)」については、現在の一般的な議論では「夫婦別姓」という語が用いられることが多い[13]。また、歴史学者の久武綾子は、「氏」という表記が家族主義的概念だとして「夫婦別姓」を用いる[14]。一方、法令用語としては明治民法以来「姓」ではなく「氏」(うじ)が用いられているため、弁護士や法の専門家は「夫婦別氏」(ふうふべつうじ)を用いる傾向があり[13]、法史学者の井戸田博史は、法律用語としては「氏」を使うべきとしている[15]。法務省ホームページでは、民法等の法律で「姓」や「名字」のことを「氏」(うじ)と呼んでいるとし、「選択的夫婦別姓(氏)」について「選択的夫婦別氏制度(いわゆる選択的夫婦別姓制度)」と記載している[16]。「選択的夫婦別姓(氏)」については、ほかに「夫婦別姓選択制[17]」「夫婦別氏選択制[18]」「選択的夫婦同姓[19]」「夫婦同姓別姓選択制[20]」などの表記も使用あるいは使用の提案がされている。なお、現行制度下の非法律婚を夫婦別姓と呼ぶことがある[21][22]が、本項では「事実婚」を用いる。 日本では以下の民法および戸籍法により、日本人間の婚姻の場合、夫婦は同氏と定められている。民法 第750条
概要
用語
問題の所在
関連法令
民法および戸籍法の規定
これに対し、アイデンティティ喪失、間接差別、改氏の不利益[23]などの理由から、別氏のままの婚姻を選択できる制度の導入が検討され、訴訟も起きている[10][9][8][24]。一方で、親と子が異なる氏となるのは問題とする主張[25][26][27]や、旧姓の通称使用拡大で十分との主張[28]などの反対論・消極論がある。(「#賛否の論点」参照) 前節の夫婦を同氏とする規定は国際結婚には適用されず、国際結婚では選択的夫婦別氏が認められている。法の適用に関する通則法により外国人には民法750条が適用されず夫婦別氏になるが、戸籍法第107条に従い、戸籍法上の届け出をすれば戸籍法上同氏になる(原則別氏、例外同氏)。ただし、戸籍法上の届け出によって同氏となった場合も、戸籍実務では民法上改氏はしていないものとして扱われる[注釈 1]。戸籍上の氏と民法上の氏が食い違うほかのケースとして、離婚時、養子離縁時に旧氏に復さず婚氏、縁氏の名乗りを継続する場合(婚氏続称、縁氏続称)がある[29][30]。 また、日本人間の婚姻であっても、外国で現地の方式にしたがって、夫婦が同じ氏を定めないまま結婚を挙行した場合、戸籍の届出をしておらず別氏のままであっても婚姻は有効とされる[31]。法の適用に関する通則法 第24条(婚姻の成立および方式)[32]婚姻の成立は、各当事者につき、その本国法による。2. 婚姻の方式は、婚姻挙行地の法による。3. 前項の規定にかかわらず、当事者の一方の本国法に適合する方式は、有効とする。ただし、日本において婚姻が挙行された場合において、当事者の一方が日本人であるときは、この限りでない。戸籍法 第107条[33]2. 外国人と婚姻をした者がその氏を配偶者の称している氏に変更しようとするときは、その者は、その婚姻の日から六箇月以内に限り、家庭裁判所の許可を得ないで、その旨を届け出ることができる。 男女共同参画社会基本法第13条に基づき、男女共同参画基本計画が2000年に定められ、5年ごとに見直されている[34]。それぞれの基本計画では、選択的夫婦別氏に関して以下のように記載されている[34][35]。 計画選択的夫婦別氏に関する記載
国際結婚および婚姻挙行地の方式による婚姻
男女共同参画基本計画
2000年12月選択的夫婦別氏制度の導入について国民の意識の動向を踏まえつつ引き続き検討を進める[34][36]。
2005年12月(第2次)選択的夫婦別氏制度について、国民の議論が深まるよう引き続き務める[34][37]。