光球表面から放射される太陽光のスペクトルは約5800 Kの黒体放射に近く[22]、これに太陽大気の物質による約600本もの吸収線(フラウンホーファー線)が多数乗っている[19]。比較的温度が低いため水素は原子状態となり、これに電子が付着した負水素イオンになる。これが対流層からのエネルギーを吸収し、可視光を含む光の放射を行う[19]。光球の粒子密度は約1023 個/m3である。これは地球大気の海面上での密度の約1 %に相当する。光球よりも上の部分を総称して太陽大気と呼ぶ。太陽大気は電波から可視光線、ガンマ線に至る様々な波長の電磁波で観測可能である。
光球の表面には、太陽大気ガスの対流運動がもたらす湧き上がる渦がつくる粒状斑[22]・超粒状斑[32]や、しばしば黒点と呼ばれる暗い斑点状や白斑という明るい模様が観察できる。黒点部分の温度は約4000 K、中心部分は約3200 Kと相対的に低いために黒く見える。また、スペクトル解析からこの黒点部分には水分子が観測された[33]。
彩層詳細は「彩層」を参照
光球表面の上には厚さ約2000 kmの密度が薄く温度が約7000?10000 Kのプラズマ大気層があり[22]、この層から来る光には様々な輝線や吸収線が見られる。この領域を彩層と呼ぶ。皆既日食の始まりと終わりには紅色の彩層を見ることができる[22]。この彩層ではさまざまな活発な太陽活動が観察できる[9]。
コロナ皆既日食では、光球が完全に隠れたときに、真珠色に輝くコロナを肉眼でも見ることができる。STEREOBの紫外線イメージングカメラのキャリブレーション中にキャプチャされた太陽の月の通過[34]2007年1月12日に人工衛星「ひので」がコロナ放出の瞬間を撮影した貴重な画像詳細は「コロナ」を参照
彩層のさらに外側にはコロナと呼ばれる約200万 Kのプラズマ大気層があり[22]、太陽半径の10倍以上の距離まで広がっている。彩層とコロナの間には遷移層と呼ばれる薄い層があり、これを境界に温度や密度が急激に変化する[35]。コロナがなぜ太陽表面より温度が高いのかはわかっていない。
コロナからは太陽引力から逃れたプラズマの流れである[22]太陽風が出ており、太陽系と太陽圏 (heliosphere) を満たしている。コロナの太陽表面に近い低層部分では、粒子の密度は 1011 個/m3程度である。自由電子が光球の光を散乱しており、輝度は光球の1/100万と低いため普段は見えないが、皆既日食の際に白いリング状(またはアーチ状とも表現できる[23])に輝くコロナが観察できる[22]。
かつてコロナのスペクトル線を分析した際に、既知の元素に見られないスペクトルが発見されたため、地上に存在しない元素「コロニウム」が提唱されたことがある[36]。しかしこれはコロナの温度がもっと低温と考えられていたためであり、このスペクトルは一般的な元素が高階電離状態で発するものであった。例えば最も強い波長530.3 nmの緑線は13階電離(軌道電子を13個失った)鉄元素と判明した[22]。
コロナの領域では、X線が観測されない領域が発生することがある。これは「コロナホール」と呼ばれ、磁力線が宇宙空間に向けて開いている箇所であり、ここはコロナガスが希薄で太陽風を発生させる原因のひとつである[37]。
太陽活動
エネルギー源詳細は「陽子-陽子連鎖反応」を参照
光輝く太陽はどのようなエネルギーを源にしているかという問題は、19世紀頃までに続々と発見された化学反応ではとうてい解明できず、大きな疑問となっていた。当初は重力ポテンシャルエネルギーという想像もあったが、19世紀末に放射能が発見されると原子核反応が候補となった。