日本各地で伝承される巨人であるダイダラボッチの民話の中には、天秤棒で山を担ぎ上げるというものがある。それは、共に関東の名山として音に聞こえる富士山と筑波山の重さを量ってやろうと思い立ったダイダラボウ(ダイダラ坊、ダイダラボッチの常陸国方言名)が、天秤棒に2つの山を結わえつけて担ぎ上げようとする内容で、果たして、筑波山のほうは持ち上げられたが、富士山は重すぎて持ち上げることができなかった。なんとか持ち上げようとするダイダラボウは、誤って筑波山を大地に落としてしまい、それゆえに今のようにこの山は二つに割れてしまっているのだという。
また、紀伊国(現・和歌山県)の神島に伝わる巨人の場合は、天秤棒で島を担いで運ぶ途中で海に落としたという民話がある。詳しくは「神島 (和歌山県)#歴史」を参照のこと。 天秤(天秤ばかりを含む)や、天秤の原理を使った道具や理論において、天秤の均衡を保つ横棒は、棒、竿、横棒、天秤棒などと呼ばれる。ここでは「天秤棒」の用例がある項目をいくつか挙げておく。 また、ドイツはバーデン=ヴュルテンベルク州の都市ヘムスバッハは、ヨーロッパにおける天秤棒の一種である「肩軛(肩くびき、かたくびき)」を古くからの町の伝統的象徴としてきたことから、現在の市の紋章にも肩軛が描かれている。 てこの原理を利用した単純機械である天秤押しの部品としての天秤棒[16]は、天秤部分、すなわち、両端近くに力点・作用点・支点を持つ丸太棒であり、棒、竿、丸太棒、天秤棒などと呼ばれる。天秤押しは、漬物の重しの加重に用いられる。その方法とは、壁に固定された横棒の真下に漬物樽を設置して、押し蓋の上に太短い丸太を置き、長さ4 - 5m程度の天秤棒の一端を丸太の上に掛かるように差し込んで、長く伸びた一方の端に石などでできた1個15kg程度の重しを複数個か、あるいは、決まった重さの1個をぶら下げる(一例として総重量300kg[16])というものである。これによって、重しのある位置が力点、樽上の蓋と天秤棒との接点が作用点、横棒と天秤棒との接点が支点となって、重しの重量のおよそ8 - 10倍の加圧が可能となり、樽内には300 - 500kg程度の圧力が掛かるという[16]。京都のすぐき漬(スグキナ[酸茎菜]の漬物)の生産業者が江戸時代から伝統的に使ってきたと考えられる[* 2]天秤押しであるが、場所もとらず使い勝手もよい油圧式機械に取って代わられて[17]姿を見ることは少なくなり、現在(2010年代)でも変わらず使っているのは一部の生産者だけになっている。それでも、毎年11月中旬頃から始まるすぐき漬の天秤押しは、スグキナの発祥地である上賀茂神社の境内でも行われ、季節の風物詩となっている。
天秤の棒
アルキメデスの原理
キャヴェンディッシュの実験
天秤押し
備考
ベトナム :細長いS字に似た国土の形状を、同国では米籠を吊るす天秤棒に譬える。天秤棒の両端には大規模なデルタが広がっていて人口の7割が集中しているが、南北に分かれるこの地域バランスも天秤棒に譬えられる理由の一つである。北部には同国第2の都市である首都ハノイが、南部には同国最大の都市であるホーチミン市がある。
水屋の富 :古典落語の演目の一つで、天秤棒を担いで売り歩く水売り
若尾逸平 :日本の実業家で、青年期は天秤棒を担いで甲斐国 - 江戸間を往き来する行商人であった。
ギャラリー
天秤棒を担いで野菜を運ぶ女性たち
中国江蘇省南京市。
天秤棒を担いで野菜を運ぶ人
中国文化圏では今でも日常的に見られる。
中国広東省の昔の雲呑の棒手振り用具と天秤棒
江戸時代の二八蕎麦の屋台。中央に人が入り、天秤をかついで移動する。
天秤ばかりの棒(天秤棒)と分銅を調整してバナナの重さを量る果物売り/中国海南省。
ドイツの都市ヘムスバッハの紋章
ベトナムの国土は、米籠を吊るす天秤棒に譬えられる。