天璋院
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将軍輿入れと継嗣問題

家定との縁組について、将軍継嗣問題一橋派であった斉彬が天璋院を徳川家へ輿入れさせて発言力を高め、慶喜の次期将軍を実現させようと考えたとする見方がこれまでは一般的であった。しかし、大奥より島津家に対する縁組みの持ちかけは家定が将軍となる以前からあり、芳即正の研究以降「島津家からの輿入れ構想そのものと将軍継嗣問題は無関係である」とするのが定説となっている。『旧事諮問録』では将軍継嗣について「まず十人まで紀州の方を望みました。それは、天璋院様が紀州を好いとしておられましたからでございます」とある。[6]

大奥が島津家に縁組みを持ちかけた理由として、家定自身が虚弱で子女は一人もいなかったこと、家定の正室が次々と早死したため大奥の主が不在であったことから、島津家出身の御台所(広大院)を迎えた先々代将軍・徳川家斉が長寿で子沢山だったことにあやかろうとしたものと言われる。また、島津家側の理由としては、広大院没後の家格の低下や琉球との密貿易問題などを将軍家との姻戚関係を復活させることで解消しようとしたと考えられる[7]

斉彬が天璋院を養女にしたのも、健康体であった天璋院を家定へ輿入れさせることを想定してのことである(篤子の名も広大院にあやかった)。しかし、薩摩藩主の実子であった広大院と比較して天璋院自身は島津家分家の出身であり、一橋派大名からも「御台所としては身分があまりにも低すぎる」という懸念の声があったと言う[注釈 4]。そのため、斉彬は天璋院を養女とした際に幕府へは実子として届出をしている。「島津氏#系譜」および「玉里島津家#系図」も参照
逸話

明治維新後、生活に窮した状況に陥っても薩摩藩からの金銭援助を断り、あくまでも徳川の人間として生きたと言われる。

篤姫は嘉永7年(1854年)11月、島津重豪の十男で八戸藩主となっていた南部信順の強い勧めにより、斉彬とともに大石寺(現在の日蓮正宗総本山静岡県富士宮市)に帰依し、同塔中遠信坊の再々興に貢献した。家定の死後の万延元年(1860年)には51日間[注釈 5] にわたって、大石寺第51代法主日英に1日3回4時間の唱題祈念を願われている[9]。ただし、墓所となっている寛永寺は天台宗の寺院である。

平成20年(2008年)、東京学芸大学の教授により篤姫の駕籠が発見された。場所はアメリカのスミソニアン博物館。その駕籠には、篤姫だけが使用したという「双葉葵唐草」の模様と篤姫の実家である近衛家の家紋「近衛牡丹」紋および「三つ葉葵」紋がちりばめられている。

明治維新後は、自分の所持金を切り詰めてでも元大奥関係者の就職・縁組に奔走していた。そのため、死後に確認された所持金は3円(現在の6万円ほど)しかなかったという。

明治維新後も、東京を離れることはほとんどなく、明治10年に箱根塔ノ沢で病気療養中の和宮を見舞うため箱根を訪れたのが生涯唯一の旅行となった。ただし箱根に到着したのは和宮が薨去した後になったため、天璋院は和宮を弔い、和歌を贈っている。

趣味

愛犬家であり、結婚前には
を多数飼っていたが、夫・家定が犬嫌いだったため大奥入り後は猫(名はサト姫)を飼っていた。その猫の餌代は年間25両(現代の価値でおよそ250万円)で、専用のアワビの貝殻型の食器を使用、篤姫と一緒に御膳で食事をとっていた。首輪は紅絹紐、鈴は銀製で、毎月新しい物に交換、竹籠に縮緬の布団で寝ていたのみならず、世話係は3人もおり、その一人が大奥を統轄していた御年寄・瀧山の姪にあたり、後に大奥の内情を三田村鳶魚に語った御中臈・ませである[10][11]

日本人として初めてミシンを扱った人物と言われている。因みにミシンを贈ったのはペリー提督だという説が一般的である。

血筋「島津氏#系譜」および「玉里島津家#系図」も参照

徳川家康の血を引いている。徳川家康―督姫―茶々姫(京極高広室)―養仙院(松平定頼室)―真修院(島津綱久室)―島津綱貴島津吉貴島津吉貴?島津継豊?島津重年?島津重豪?島津斉宣?島津忠剛―天璋院

天璋院についての研究書

芳即正:「天璋院入輿は本来継嗣問題と無関係」(日本歴史551号、1994年

芳即正編:『天璋院篤姫のすべて』(新人物往来社2007年ISBN 9784404034915

畑尚子:『幕末の大奥 天璋院と薩摩藩』(岩波書店、2007年)ISBN 9784004311096

寺尾美保:『天璋院篤姫』(高城書房、2007年)ISBN 9784887771048

鹿児島純心女子大学国際文化研究センター 編:『新薩摩学6 天璋院篤姫』(南方新社、2008年 ISBN 978-4-86124-142-0

関連作品
小説


続 徳川の夫人たち (
吉屋信子1967年 朝日文庫刊)

天璋院篤姫宮尾登美子1984年 講談社のち講談社文庫刊)


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