天然ガス
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その後2022年4月、東京商品取引所においてLNGの先物の取引が開始された[9]

また、天然ガスの輸出国から輸入先へのパイプライン敷設ルートの選定や、供給量・価格のコンロールには、外交・地政学的な要因が絡むことも多い。「ロシア・ウクライナガス紛争」を参照
天然ガス

地下から産出する状態の「天然ガス」について以下に述べる。液化したものは後半部の「液化天然ガス」を参照のこと。
起源

天然ガスの起源は炭素の同位体比(13C/14C)、ヘリウムの同位体比(3He/4He)、窒素(N)・アルゴン(Ar)比[10]などを分析することで判別できると考えられており、成因は下記のように大別される[11][12]。なお、分類に関しては諸説あり、「生物起源ガス」と「非生物起源ガス」に分類する考え方[13]などもある。
有機成因

熱分解性ガス
堆積物中の有機物(原油、石炭、泥質堆積物中に含まれる有機溶媒に溶けない有機物)の熱分解を起源とする。別名:ウェットガス[11]エタンプロパンブタンペンタンを多く含有する。
バクテリアガス
石炭[14]、堆積物中の有機物の低温での生物分解による。名前とは裏腹に直接メタン生成を行うのはバクテリアではなく古細菌である[15]。別名:ドライガス[11]メタンを主成分とし、他の成分は少ない。有機物を分解するメタン菌によるCO2還元反応が起源である[15]
無機成因[16]
流紋岩等の火山岩体[17]や海底枕状溶岩中に存在し、マントル中の無機炭素を起源とする[18]
組成

天然ガスにはメタン・エタン・プロパン・ブタン、そしてペンタン以上の炭素化合物が含まれ(天然ガスコンデンセート)、産出する場所によってその割合は少しずつ異なる。

産地による成分の違いの例(単位は mol/100mol)産地メタンエタンプロパンブタンペンタン窒素
ケナイ(アラスカ)99.810.070.000.000.000.12
ルムート(ブルネイ)89.835.892.921.300.040.02
ダス(アブダビ)82.0715.861.860.130.000.05

天然ガスに含まれる主な不純物として、窒素二酸化炭素硫黄酸化物硫化水素水銀などを含む[19]。例外的に北アメリカ産・アルジェリア産の天然ガスには 1 - 7 mol/100molものヘリウムが含まれており、世界の数少ないヘリウムの供給源となっている[20]
特性

揮発性が高く、常温では急速に蒸発する性質を持つ。主成分のメタンエタンが空気よりも軽いため、大気中に拡散しやすい。この点では、常温で空気より重く低い場所に滞留しやすいプロパンブタンガスに比べれば、人が扱う上での危険性は低い。またプロパンと同様、メタンやエタンも無臭であり、不純物を取り除いた天然ガスもまた無臭である。しかし無臭のまま天然ガスを用いることはガス漏れの際に気が付かず爆発の直接的な原因となりうる[注 1]。このためコスト面の問題や燃焼生成物による影響を忌避するために着臭剤を添加しない工業用原料を除き、天然ガスを燃料用ガスとして一般に提供する場合は有機硫黄化合物をはじめとした悪臭成分を意図的に混入(付臭)させ、ガス漏れを人間の嗅覚により察知しやすくしている。
物性

天然ガスに含まれる主な物性を以下に示す[19]

名称メタンエタンプロパンブタン
(ノルマル/イソ)
分子式CH4C2H6C3H8C4H10
分子量16.0430.0744.0958.12
沸点(℃)-161.5-88.7-42.2-0.5/-11.7
臨界温度(℃)-82.632.296.7152/135
臨界圧力45.448.84237.5/36
比重 液体(沸点、1気圧)0.4250.5460.5800.605/0.590
比重 気体(0℃、1気圧)0.5541.0471.5222.006
燃焼範囲 上限
(空気中容積%)15.012.59.58.4
燃焼範囲 下限
(空気中容積%)5.53.02.21.8
気体/液体容積比
(0℃、1気圧)595432292277/231
毒性なしなしなしなし
腐蝕性なしなしなしなし

常圧下でのメタンの沸点は-161.5℃であり、LNGの沸点は-160℃程度になる。このため常圧下で液化するには極低温が必要になる。また、加圧して沸点を上昇させたとしても、臨界温度は-82.6℃であり、この温度以上ではいくら加圧しても液化はしない。液化ガス蒸気圧曲線

メタンの液体での比重は0.43であり、LNGになると他の成分の割合に応じて0.43 - 0.48になる。原油の比重約0.85と比べても液体メタンはかなり軽いため、運搬時には重量に比べて大きな体積を必要とする。

気体のメタンは空気と比べて約55%の比重でありかなり軽いが、気体でも低温の状態では-113℃で空気と同じ重さとなり、それ以下の温度では空気より重くなる。

事故などにより極低温状態のメタンが漏れて-161.5℃以上で気体になると空気の1.4倍程度の重さとなりまず地上に漂うことになる。このガスと周囲の空気との境界で空中の水分を凍らせ白い雲を作る。これが蒸気雲(ベイパークラウド)と呼ばれ、透明なガスが間接的に人の目に触れることになる。この状態においては、爆発的な燃焼や凍傷、窒息の危険がある。しばらくは地上に留まった低温メタンガスも、温度が-131℃を超えると空気よりも軽くなり、空中へと上昇・拡散していく。

5%-15%の燃焼範囲は、他の可燃性ガスと比べれば比較的狭いため、爆発の危険性は低いと言える。気体のメタンが液体になると体積は約.mw-parser-output .frac{white-space:nowrap}.mw-parser-output .frac .num,.mw-parser-output .frac .den{font-size:80%;line-height:0;vertical-align:super}.mw-parser-output .frac .den{vertical-align:sub}.mw-parser-output .sr-only{border:0;clip:rect(0,0,0,0);height:1px;margin:-1px;overflow:hidden;padding:0;position:absolute;width:1px}1⁄600になるため、運搬には適している。

燃焼による発熱量は13,300kcal/kgで、炭化水素中では最大である。これは5,000-7,000の石炭や9,250の石油よりも大きい。メタンもLNGも共に人体への毒性はない[19]
分類

天然ガスの名称は、産出場所および精製方法によって変わる。

天然ガスの分類産出場所産出場所に対する呼称詳細説明
油田地帯「油田ガス」・「石油系天然ガス」・「湿性ガス」10-15m3のガスから1リットル程度のガソリンが採取できるため「湿性ガス」とも呼ばれ、幅広い組成を持つこのガスは中東などでは従来はすぐにガスフレアによって廃棄されていたものだが、現在はこれも液化によって回収されている。この湿性ガスはメタン成分が多ければ液化されて油田由来のLNGとなり、少ない時はLPGの原料となる石油ガスであり液化されてLPGとなる。このような天然ガス鉱床は油溶解性ガス鉱床と呼ばれる[21]
炭田地帯「炭田ガス」・「炭層ガス」
遊離型ガス鉱床「水溶性ガス」
ガス田「乾性ガス」メタンが85%-95%と主体を占めその他のエタン、プロパン、ブタンなどは比較的少ない。ガス田ガスは液化されてガス田由来のLNGとなる。このような天然ガス鉱床は遊離性ガス鉱床と呼ばれる[21]メタンハイドレート参照。
原油の精製プラントから生まれるガス「炭田ガス」・「炭層ガス」・「精製ガス」液化されてLPGとなる[19]

環境への影響「化石燃料#化石燃料の使用が引き起こす公害・環境問題」も参照

燃焼したときの二酸化炭素排出量は、カロリー当りで石油より少ない。ただし、主成分であるメタンの地球温暖化係数は「21」と大きいため、大気への放出は避ける必要がある。

ただしメタンは大気中の寿命が約12年(時定数)で排出量の63.2%は分解され、分解量を超過する分が濃度上昇に反映される。このため、排出削減をすれば大気濃度がすぐに減少する[22]
採ガス井

天然ガスを採掘するガス用の井戸を「採ガス井」と呼び、液体の原油を生産する「油井」「油生産井」「採油井」と区別される。採ガス井は一般に原油用の井戸に比べてクリスマスツリーなど、使用される機器類の耐圧が高く設計されているために、大きくなる傾向がある。これは、天然ガスの存在する地層が油田に比べて深く、また、液体と気体では地下の高圧力環境から地上にまで持ち上げられた時の圧力が大きく異なるためでもある[21]
生産工程
分離工程1
採ガス井で地表へと取り出されたものにはガス・油・水などが混ざっているため、まず、ガス原油セパレータに送られて、ガス、原油が分離される。ガス原油セパレータは単純に重さの違いによって分けるものである。
分離工程2
ガス原油セパレータで分離されなかった油分は、コンデンセート
[23][24]・セパレータで分離される。コンデンセートはLPGや石油化学の原料として扱われる。残った水は環境汚染物質を除いた後に多くが地下へ圧入される。


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