天然ガス
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2016年末の世界の天然ガスの確認可採埋蔵量は約187兆立方メートルといわれており、地域別には中東が一番多く、ヨーロッパ及び旧ソ連、アジア太平洋地域などがそれに続く[26]。なお東京ガスは輸入する天然ガスの大半をマレーシアオーストラリアから輸入している。今後採鉱が盛んになることで、確認可採埋蔵量の増加が期待されている。BP統計2016年版では確認可採埋蔵量は約190兆立方メートルという報告がなされた(可採年数は53年)。

日本では、関東地方だけでも埋蔵量は4千億立方メートル以上あると推定され、埼玉東京神奈川茨城千葉の一都四県にまたがる地域で南関東ガス田を形成している。しかし、東京の直下にあるため多くの地域で採掘は厳しく規制されており、房総半島でわずかに採掘されているのみである。東京都や千葉県では、南関東ガス田から自然放出される天然ガスによる事故がたびたび起きている[27]

日本の東部南海トラフにはメタンハイドレートが約40兆立方フィートあると推定されている[22]。深海底に存在するメタンハイドレートは、採掘技術が確立されていないため、2008年現時点では未利用資源に留まっている。このため、今日の日本では原油同様に可採埋蔵量としてはごく限られているのが実情である。
紛争

各国で天然ガス資源の使用や開発をめぐる紛争がある。

インドネシアアチェアチェ独立運動

イエメンエリトリアハニーシュ群島紛争

ボリビア国内: ボリビアガス紛争

日本中華人民共和国東シナ海ガス田問題

ロシアウクライナロシア・ウクライナガス紛争

東南アジア中華人民共和国南シナ海ガス田問題

液化天然ガス

液化天然ガス(えきかてんねんガス、LNG(Liquefied Natural Gas)[28][注 3])は、気体である天然ガスを-162℃以下に冷却して液体にしたものである。体積は気体の約1⁄600となるため、輸送・貯蔵を目的として液化される[20]
液化

天然ガスは主成分であるメタンの他にもエタン、プロパン、ブタンなどのガスが含まれているが、LNGへの液化の過程でこれらのガスも同時に液化されるため、LNGも元となる天然ガスの産地によってこれら炭化水素の構成比に違いがある。LNGの液化の初期段階過程では、水和物を作ってパイプを閉塞させる炭酸ガスや、プラントを腐蝕する硫黄酸化物などの不純物が除去されるため、LNGは人体にとって無害となる[20]

液化には「C3-MCR」「TEALARC」「PRICO」「CASCADE」の4つの方式が存在する。CASCADE では冷媒にメタン、エチレン、プロパンの純成分を個別に3段階で使用しており、他の3方式は窒素、メタン、エタン、プロパンを混合して使用している。液化プラントで使用されているのは C3-MCR 方式が多い[29]

一般的なガス田の液化施設は、多くの生産地に近接した場所に設置されるが、海上ガス田の場合には浮体構造の洋上液化設備(FLNG)や積み出し用保管設備等が設置される場合がある。2013年に進水したロイヤル・ダッチ・シェルの船型構造物(自力航行装備を持たない)は、排水トン数は60万トン以上と世界最大級の空母6隻分に相当する巨大なものとなった[30]
輸送モス方式のLNGタンクを持つLNGタンカー

天然ガスの大量輸送方法は二つある。一つがパイプラインによる気体つまりCNGでの輸送で、1930年代頃にアメリカで始まった。現在ではロシア連邦北アフリカからヨーロッパ諸国へのLNG輸出のほか、中央アジア中東中華人民共和国などで使用されている。詳細は「天然ガスパイプライン」を参照

もう一つがLNGタンカーによるLNG輸送で、中東、オーストラリア東南アジア、アフリカ、ロシア、米州等の産地からアジア、欧州等の需要国への海上輸送に多用されている。日本の場合、タンカーで搬入されたLNGは、港湾部を起点とするパイプラインで火力発電所や都市ガス事業者に送られる。「Category:日本の天然ガスパイプライン」を参照

世界初のLNG船舶による国際輸送は、1959年1月25日米国ルイジアナ州から英国キャンヴェイ・アイランド向けのMethane Pioneerによるものだった。この船は元々海軍用の船舶を改造したもので、2000トンのLNGを輸送した[31]。LNG船の海難事故は極めて少なく、大規模なガス爆発やガス漏洩を含む環境破壊事故は一度も発生していない。また、メタンハイドレートにして輸送する方法が開発中である。実現した場合はLNGに比べ温度が高くても体積を減らすことができ、輸送効率の向上が見込める。更に、原産地でGTL法によってメタノール等の液体に変換して輸送する方法も実用化段階にある。

パイプラインや都市ガス配管が直結していない需要者に対しては、天然ガスをタンクローリー鉄道コンテナに積み替えて運ぶ[32]。鉄道によるLNG輸送は、日本の石油資源開発株式会社が2000年に新潟県で始めたのが世界初とされており、海外へのノウハウ販売を計画している[33]
設備

LNGを利用するためには、上流のガス井に始まり、パイプライン、液化プラント、LNGタンカー、受け入れ基地、再ガス化設備、下流での輸送網に至るまで、「LNGヴァリュー・チェーン」と呼ばれる一連の設備が必要である。
LNG受入れ基地・再ガス化設備(ターミナル)

LNG受入れ基地は、LNG船舶を受け入れる桟橋が必要であることと、海水によってLNGを暖めることで、再ガス化プロセスつまり気体に戻す作業を行う場合が多いことから、そのほとんどが海に面している。世界初のLNG受入れ基地は英国キャンヴィー・アイランドにおけるもので、アメリカ合衆国アルジェリアからのLNGを輸入する拠点だった[31]2013年シンガポールジュロン島で稼動したLNG受入れ基地は、受入れ設備と再輸出設備を兼ね備えた世界初のターミナルである[34]

冷熱利用は再ガス化の際の気化熱を冷熱源とする施設を設置し、冷熱エネルギーの利用効率を高めることである。東京ガス根岸工場では、冷熱発電マグロの冷凍倉庫、空気分離装置、液化炭酸ガスの製造設備が隣接しており、熱交換の効率化に活用している。阪神港泉北コンビナートでは、キンレイ(かつては大阪ガス傘下)の冷凍うどん製造工場や業務用冷凍庫などの他に、大阪府立臨海スポーツセンターのスケートリンクなどが存在する。こうした冷熱利用により、LNG事業者は再ガス化にかけるコスト、関連事業者は製造コストの削減が可能になっており、結果として電力使用を抑え省エネに繋げている。
用途

原料 -
都市ガス、化学工業

燃料 - 火力発電所

日本国内では都市ガス用と火力発電用の比率は約35:65である。
都市ガス
日本での天然ガス利用は、関東では東京ガス東京電力と共同で、横浜市磯子区根岸に日本初のLNG基地を建設したことから始まった。1969年(昭和44年)11月にアラスカから初めてのLNGタンカーが入港し、1970年(昭和45年)より東京電力南横浜火力発電所へ燃料として供給するとともに、東京ガスは1972年(昭和47年)から1988年(昭和63年)までの16年間で石油系ガス(6B)からの転換を完了した。関西では、大阪ガス1969年(昭和44年)に導入を決定し、1975年(昭和50年)から1990年(平成2年)までの16年間で石炭改質系からの転換を完了した。


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