日本では、関東地方だけでも埋蔵量は4千億立方メートル以上あると推定され、埼玉・東京・神奈川・茨城・千葉の一都四県にまたがる地域で南関東ガス田を形成している。しかし、東京の直下にあるため多くの地域で採掘は厳しく規制されており、房総半島でわずかに採掘されているのみである。東京都や千葉県では、南関東ガス田から自然放出される天然ガスによる事故がたびたび起きている[27]。
日本の東部南海トラフにはメタンハイドレートが約40兆立方フィートあると推定されている[22]。深海底に存在するメタンハイドレートは、採掘技術が確立されていないため、2008年現時点では未利用資源に留まっている。このため、今日の日本では原油同様に可採埋蔵量としてはごく限られているのが実情である。 各国で天然ガス資源の使用や開発をめぐる紛争がある。 液化天然ガス(えきかてんねんガス、LNG(Liquefied Natural Gas)[28][注 3])は、気体である天然ガスを-162℃以下に冷却して液体にしたものである。体積は気体の約1⁄600となるため、輸送・貯蔵を目的として液化される[20]。 天然ガスは主成分であるメタンの他にもエタン、プロパン、ブタンなどのガスが含まれているが、LNGへの液化の過程でこれらのガスも同時に液化されるため、LNGも元となる天然ガスの産地によってこれら炭化水素の構成比に違いがある。LNGの液化の初期段階過程では、水和物を作ってパイプを閉塞させる炭酸ガスや、プラントを腐蝕する硫黄酸化物などの不純物が除去されるため、LNGは人体にとって無害となる[20]。 液化には「C3-MCR」「TEALARC」「PRICO」「CASCADE」の4つの方式が存在する。CASCADE では冷媒にメタン、エチレン、プロパンの純成分を個別に3段階で使用しており、他の3方式は窒素、メタン、エタン、プロパンを混合して使用している。液化プラントで使用されているのは C3-MCR 方式が多い[29]。 一般的なガス田の液化施設は、多くの生産地に近接した場所に設置されるが、海上ガス田の場合には浮体構造の洋上液化設備(FLNG)や積み出し用保管設備等が設置される場合がある。2013年に進水したロイヤル・ダッチ・シェルの船型構造物(自力航行装備を持たない)は、排水トン数は60万トン以上と世界最大級の空母6隻分に相当する巨大なものとなった[30]。 天然ガスの大量輸送方法は二つある。一つがパイプラインによる気体つまりCNGでの輸送で、1930年代頃にアメリカで始まった。現在ではロシア連邦や北アフリカからヨーロッパ諸国へのLNG輸出のほか、中央アジア、中東、中華人民共和国などで使用されている。詳細は「天然ガスパイプライン」を参照 もう一つがLNGタンカーによるLNG輸送で、中東、オーストラリア、東南アジア、アフリカ、ロシア、米州等の産地からアジア、欧州等の需要国への海上輸送に多用されている。日本の場合、タンカーで搬入されたLNGは、港湾部を起点とするパイプラインで火力発電所や都市ガス事業者に送られる。「Category:日本の天然ガスパイプライン」を参照 世界初のLNG船舶による国際輸送は、1959年1月25日米国ルイジアナ州から英国キャンヴェイ・アイランド向けのMethane Pioneerによるものだった。この船は元々海軍用の船舶を改造したもので、2000トンのLNGを輸送した[31]。LNG船の海難事故は極めて少なく、大規模なガス爆発やガス漏洩を含む環境破壊事故は一度も発生していない。また、メタンハイドレートにして輸送する方法が開発中である。実現した場合はLNGに比べ温度が高くても体積を減らすことができ、輸送効率の向上が見込める。更に、原産地でGTL法によってメタノール等の液体に変換して輸送する方法も実用化段階にある。 パイプラインや都市ガス配管が直結していない需要者に対しては、天然ガスをタンクローリーや鉄道コンテナに積み替えて運ぶ[32]。鉄道によるLNG輸送は、日本の石油資源開発株式会社が2000年に新潟県で始めたのが世界初とされており、海外へのノウハウ販売を計画している[33]。 LNGを利用するためには、上流のガス井に始まり、パイプライン、液化プラント、LNGタンカー、受け入れ基地、再ガス化設備、下流での輸送網に至るまで、「LNGヴァリュー・チェーン」と呼ばれる一連の設備が必要である。 LNG受入れ基地は、LNG船舶を受け入れる桟橋が必要であることと、海水によってLNGを暖めることで、再ガス化プロセスつまり気体に戻す作業を行う場合が多いことから、そのほとんどが海に面している。世界初のLNG受入れ基地は英国キャンヴィー・アイランドにおけるもので、アメリカ合衆国やアルジェリアからのLNGを輸入する拠点だった[31]。2013年にシンガポールのジュロン島で稼動したLNG受入れ基地は、受入れ設備と再輸出設備を兼ね備えた世界初のターミナルである[34]。 冷熱 日本国内では都市ガス用と火力発電用の比率は約35:65である。
紛争
インドネシア: アチェ(アチェ独立運動)
イエメン、エリトリア: ハニーシュ群島紛争
ボリビア国内: ボリビアガス紛争
日本、中華人民共和国: 東シナ海ガス田問題
ロシア、ウクライナ: ロシア・ウクライナガス紛争
東南アジア、中華人民共和国: 南シナ海ガス田問題
液化天然ガス
液化
輸送モス方式のLNGタンクを持つLNGタンカー
設備
LNG受入れ基地・再ガス化設備(ターミナル)
用途
原料 - 都市ガス、化学工業
燃料 - 火力発電所
都市ガス
日本での天然ガス利用は、関東では東京ガスが東京電力と共同で、横浜市磯子区根岸に日本初のLNG基地を建設したことから始まった。1969年(昭和44年)11月にアラスカから初めてのLNGタンカーが入港し、1970年(昭和45年)より東京電力南横浜火力発電所へ燃料として供給するとともに、東京ガスは1972年(昭和47年)から1988年(昭和63年)までの16年間で石油系ガス(6B)からの転換を完了した。関西では、大阪ガスが1969年(昭和44年)に導入を決定し、1975年(昭和50年)から1990年(平成2年)までの16年間で石炭改質系からの転換を完了した。