大西洋
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この理由としては、太平洋に比べ大西洋が狭く、堆積物の主な供給源である陸地からどこもあまり離れていないこと、太平洋に比べて注ぎ込む大河が多い上に、河川の流域面積も広く、河川が侵食して運搬してきた大量の土砂などが流れ込むことなどが挙げられる[4]。大西洋に流れ込む河川中でもっとも土砂の流入量が多いのはアマゾン川で、年に14億トン以上の土砂を大西洋に運び込む[5]

また、海底にはマンガン団塊のような自生金属鉱物も見られる。マンガン団塊は大西洋の深海部に広く分布するが、なかでも南大西洋に多い[6]
海水

大西洋の平均水温は4℃、平均塩分濃度は35.3‰。この水温と塩分濃度は、ともに他の大洋とほぼ同じである。なお、海水の塩分濃度は均一ではなく、熱帯降雨が多い赤道の北や、極地方、川の流入がある沿岸部で低く、降雨が少なく蒸発量が大きい北緯25度付近と赤道の南で高い。また、水温は極地方での-2℃から赤道の北の29℃まで変化する。なお、大西洋の南緯50度付近には、表面付近の海水温が急に2度?3度変化する潮境が存在し、ここは南極収束線と呼ばれる[7]。ちなみに、この南極収束線はインド洋や太平洋にも存在し、インド洋の場合も南緯50度付近だが、太平洋は南緯60度付近と位置が大きく異なっている[7]

また、属海である地中海は高温乾燥地域にあるため高温・高塩分であるが、ここからジブラルタル海峡を通って流れ出た水は比重が重いために沈み込みながら数千kmにわたって特徴を保ち続ける。
海流海水大循環

大西洋の表層に存在する主な海流は、北から、東グリーンランド海流(北部、寒流)、北大西洋海流(北部、暖流)、ラブラドル海流(北西部、寒流)、メキシコ湾流(西部、暖流)、カナリア海流(東部、寒流)、アンティル海流(西部、暖流)、北赤道海流(東部、暖流)、赤道を超えて、南赤道海流(西部、暖流)、ベンゲラ海流(東部、寒流)、ブラジル海流(西部、暖流)、フォークランド海流(南部、寒流)である。このうち、北大西洋においてはメキシコ湾から北アメリカ大陸東岸を通って西ヨーロッパへと流れるメキシコ湾流の西部、そこからアフリカ大陸西岸を南下するカナリア海流、アフリカ西岸から赤道の北を西へ流れカリブ海やメキシコ湾にまで流れる北赤道海流は、北大西洋亜熱帯循環と呼ばれる時計回りの環流をなしている。同じく南大西洋においても、アフリカ西岸からブラジル北東部にまで東に流れる南赤道海流、南アメリカ大陸東岸を南流するブラジル海流、南アメリカ大陸南部から南極環流の北縁を東に流れる南大西洋海流、そしてアフリカ大陸南端から北上するベンゲラ海流は、南大西洋亜熱帯循環と呼ばれる反時計回りの環流をなしており、大西洋には南北二つの環流が存在していることとなる[8]

大西洋の海流の中で最も強く流量があり、また重要な役割を果たしているのはメキシコ湾流である。メキシコ湾流は北アメリカ大陸東岸から西ヨーロッパ沿岸を通り北海から北極海方面へと抜けるが、この海流がもたらす熱量は膨大なものであり、この海流の影響によってイギリスやヨーロッパ大陸西岸は緯度に比べて温暖な気候となっている。この地域の、夏季はそれほど気温が上がらないものの冬季も気温がさほど下がらず温暖な気候は西岸海洋性気候としてケッペンの気候区分のひとつとされている。逆にメキシコ湾流はアフリカ北岸で南流して寒流となるカナリア海流は寒流であるため付近で上昇気流を発生させないため、沿岸はサハラ砂漠の一部となっている。また、ベンゲラ海流も同様であり、沿岸のナミビアの海岸は典型的な西岸砂漠となり、ナミブ砂漠を形成している。

また、現在の地球の海には地球全体を巡る海水大循環があるが、この大循環の起点は北大西洋にある。北大西洋の極海で冷やされた海水は北大西洋深層水として沈み込み、大西洋深層流として南下し、太平洋やインド洋で暖められて表層水となり、インド洋から流入して北上して戻ってくる[9]。これらの海流(循環)は、地球全体の気候に影響を与えるくらいに、多くのを輸送している。

ところで、北大西洋の中央部にあるサルガッソ海には、目立った海流が無い。これは、南赤道海流・メキシコ湾流・北大西洋海流・カナリア海流によって構成される大循環の中心に位置し、これらの循環から取り残された位置に、このサルガッソ海が存在するからである。また、ちょうどこの場所は亜熱帯の無風帯に属するため風もほとんど吹かない。このため上記4海流から吹き寄せられた海藻類(いわゆる流れ藻)が多く、風がない上に海藻が船に絡みつくことから、航海に帆船を使用していた時代には難所として知られていた。なお、このサルガッソ海付近は、大西洋の中でも海水面が少し高くなっている場所であることでも知られている[10]
流入河川

大西洋には各大陸から多くの河川が流入する。流入河川のうち水量・長さとも最も大きいのは南アメリカ大陸から流れ込むアマゾン川である。アマゾン川のほかにも、南アメリカ大陸からはオリノコ川ラプラタ川サンフランシスコ川などの大河川が流れ込む。なかでもラプラタ川は南アメリカ大陸南部の大半を流域にもち、アマゾン川流域と南アメリカ大陸を二分する広大な流域面積を持つ。北アメリカ大陸でもっとも重要な流入河川はセントローレンス川である。河川自体の長さはそれほどでもないが、五大湖を水源に持ち広大な流域面積を持つ。それ以外にもハドソン川など多くの河川が流入するが、アパラチア山脈が大西洋岸からそれほど遠くないところを走っているため、大西洋に直接流入する河川はそれほど長くない。アフリカ大陸からの流入河川では、西アフリカニジェール川中部アフリカコンゴ川が特に大きい。そのほかにも、セネガル川オレンジ川など多数の河川が流入する。ヨーロッパ大陸からは、グアダルキビル川タホ川ドウロ川ジロンド川ロワール川などが流入する。
生物

大西洋は生物の種数が比較的少なく、様々な分類群において太平洋やインド洋に比べて数分の1程度の種数しか持たない。これは、大西洋が大陸移動によって作られた新しい海であること、他の海洋とは南北の極地でしか繋がっていないために生物の移動が困難であることなどによると考えられる。ちなみに、大西洋の魚類の総種数より、アマゾン川の淡水魚の種数の方が多いとも言われる[要出典]。

大西洋の各地には漁場が点在するが、とくに大西洋北部はメキシコ湾流が寒冷な地方にまで流れ込むために海水の攪拌がおき、世界屈指の好漁場となっている。メキシコ湾流とラブラドル海流が出会う北アメリカ・ニューファンドランド沖のグランドバンクや、北海やアイスランド沖などの大西洋北東部が特に好漁場となっている。北大西洋の生産性は全般的に高いが、サルガッソ海だけは貧栄養で漁獲量も非常に少ない。しかしこのサルガッソ海はウナギの産卵場所となっており、ヨーロッパウナギやアメリカウナギはここで産卵し生育したのち各大陸に向かう[11]

南大西洋はベンゲラ沖に湧昇域があり、アフリカ沿岸は豊かな漁場で南アメリカ沿岸も生産性は低くないが、大洋の中央部はメキシコ湾流のような豊かに栄養分を含む海流が存在しないため、生産性は非常に低い[12]
名称

英語のアトランティック・ オーシャン(Atlantic Ocean)はプラトンの『ティマイオス』や『クリティアス』に登場する伝説の大陸アトランティスに因む[13]

明代末の中国では1602年にイエズス会士マテオ・リッチが世界地図『坤輿万国全図』を作成した[13]。この地図は世界の地理名称をすべて漢語に翻訳したものでポルトガルの西海岸に「大西洋」という記述がある[13]

マテオ・リッチの世界地図『坤輿万国全図』は日本にも伝来し、1698年頃に書かれた渋川春海の『世界図』ではポルトガル沖に「大西洋」と記されている[13]。幕末、アトランティック・ オーシャンという呼び名が伝来し、永井則の『銅版万国方図』(1846年)や箕作阮甫の『新模欧邏巴図』(1851年)では「亜太臘海」、山路諧孝『重訂万国全図』(1855年)では「壓瀾的海」という漢字を当てた表記が使われたが名称として定着しなかった[13]
歴史
古代・中世

大西洋沿岸のほぼすべての地域には有史以前から人類が居住していた。紀元前6世紀ごろからは、カルタゴが大西洋のヨーロッパ沿岸を北上してイギリスコーンウォール地方との交易を行っていた。その後もヨーロッパ近海では沿岸交易が行われていた。1277年には、地中海ジェノヴァ共和国ガレー船フランドルブリュージュ外港のズウィン湾に到着し[14]、これによって大西洋を経由し北海・バルト海と地中海を直接結ぶ商業航路が開設され、ハンザ同盟が力を持っていた北海・バルト海航路と、ヴェネツィアジェノヴァが中心となる地中海航路が直接結びつくこととなった。


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