日本の外務省によれば、大統領が存在する国の政体(政治体制)につき、それぞれアメリカは大統領制・連邦制、フランス(フランス第五共和政)は共和制、ドイツ連邦共和国は連邦共和制、大韓民国は民主共和国、フィリピン共和国は立憲共和制などとしている[6]。
漢字文化圏では、「大統領」(大韓民国)や「主席」(中華人民共和国・ベトナム社会主義共和国・一時期の北朝鮮)や「総統」(中華民国)など独自の呼称を用いる国家もあるが、英語圏では現在は[注釈 1]いずれも「President」である[要出典]。なお共和制であっても、国家主席職を事実上廃止して以降の北朝鮮や、国家主席廃止時期の中華人民共和国、ソビエト連邦などでは、議会の常務委員会もしくは幹部会の委員長・議長を元首・元首格としている[要出典]。 権力分立の観点からは議会(立法府)と政府(行政府)の厳格な分立を組織原理としているものを大統領制、両権力の緩やかな分立もしくはある程度の融合を組織原理とするのが議院内閣制とされている。また、民主主義の観点からは立法府の行政府に対する信任の有無、もしくは行政府の立法府に対する責任の有無(大統領は国民から選出され、国民に対して直接責任を負う)が基準とされるが、両者の中間形態も存在する[7][8][9]。 アメリカ型の大統領制は徹底された三権分立の統治機構をとる。大統領は議会の選挙とは別に国民から直接的に選出され(アメリカの大統領選挙は選挙人団の制度を採用しており、制度上においては間接選挙であるが、実質的には直接選挙として機能しているとされる[10])、原則として大統領は任期を全うし(議院内閣制の国のような不信任の制度は無く、犯罪の嫌疑により弾劾が成立した時のみ職を失う)、さらに大統領には議会解散権や法案提出権が与えられていないこと、議員と政府の役職を兼務できないこと、政府職員は原則として議会に出席して発言できないことなどを特徴とする[10][11]。アメリカの場合、大統領が議会に出席するのは年頭教書演説と予算教書演説のときぐらいであるとされる[12]。 アメリカ型大統領制は、1819年の大コロンビア成立を皮切りに成立したラテンアメリカ諸国で数多く施行されている。 大統領制において議会側が大統領に対して用いる牽制・抑制手段には、条約批准権、国政調査権、高官人事任命の承認権、大統領に対する弾劾・罷免などがある。一方で大統領側が用いる対抗手段には、予算教書の提出あるいは勧告権、大統領令などの行政立法権、法案の拒否権や遅延権、非常事態宣言や戒厳令などの非常権限などがある。ただし、これらの抑制手段の有無と細部は各国で異なる[13]。 日本の地方自治体の統治機構とよく比較されるが、議会側の抑制手段が異なる点、アメリカの政治制度において大統領には議案提出権や議会解散権が認められていない点などで両者は異なる[14][15]。重要法案については大統領が主導的な役割を果たすようになっているものの、大統領が議会に直接議案を提出できるわけではなく、自党の有力議員に法案の提出を依頼する形がとられている[15][16]。また、予算案についてもアメリカの場合、大統領は予算教書演説のみで直接提出することはできず、法案と同じ形式で議員が提案した上で審議される[12]。 アメリカ型の大統領制はイギリス型の議院内閣制(ウェストミンスター・システム)と比較されることが多い。 統治機構の観点からは、イギリス型の議院内閣制(ウェストミンスター・システム)は立法権と行政権が政権与党によって結合され強力な内閣のもとに権力の集中を容認する制度(議会の多数を占める政党が行政権を担う)であるのに対し、アメリカ型大統領制は立法権と行政権を厳格に分離し権力の分散という点を強調し権力分立を指向する制度であるとされる[17][18]。一般の間では大統領制のほうが権力の統合の度合いが強い政治制度とみられてきたとの指摘がある[18][19]。アメリカで大統領の役割が拡大したのは20世紀以降になってからであることや、国内政治における大統領と国際政治における大統領は異なる存在であるが日本を含む外国から見ると強い影響力を行使しているように見える一因となっていることが指摘されている[20]。また、アメリカの政治制度の場合、軍事・外交面においては大統領は議会からの制約を比較的受けにくいと分析されている[21]。アメリカ型の大統領制は厳格な権力分立によって立法権と行政権を分散させているため、大統領の権力は制限される制度である[22]。それに対して、議院内閣制は、議会で多数を占める政党が立法権と行政権の両方を掌握するため、内閣・首相に権力が集中する制度とされる。したがって、議院内閣制には集権性がみられ、首相権力の強いものとなっている[23]。 立法と行政の関係について、大統領制の下では大統領と議会とは別々に選出されるため民意は二元的に代表されるのに対し(二元代表制)、議院内閣制では議会のみが選挙により選出されて内閣はそれを基盤として成立するため民意は一元的に代表される(一元代表制)[24]。この点から議院内閣制のほうが権限の委任関係は明白となるため、立法と行政との関係を円滑に処理するという点においては、より簡単な政治モデルであるとされる[25]。 大統領制に対しては、固定された任期が政治を硬直的なものにする、大統領の所属政党が議会で少数派の場合に政策決定に困難を生じ停滞的なものになってしまうなど消極的な見方がある一方で、大統領制の下では説明責任や政権の構成の予測可能性が明確になる、大統領と議会との間に適度な抑制と均衡を築くことができるといった見方もあり、学者間で議論が交わされてきた[26]。 大統領制の場合には大統領の所属政党と議会の多数派が違う政党になる状態(分割政府、divided government)を生じることもあり、その場合には大統領の望む法案の成立が思うように進まなくなる可能性がある。分割政府の状態は、大統領も議会も任期制のため容易には解消しない[27]。
類型
アメリカ型大統領制「アメリカ合衆国の政治」も参照
特徴
分析
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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