大本事件
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9月16日に審理開始、10月5日の第一審判決では、王仁三郎は不敬罪と新聞紙法違反で懲役5年、浅野は不敬罪で懲役10か月、吉田祐定(機関誌発行兼編集人)に禁固3か月・罰金150円の有罪判決が下った[36]。審理は事実上2日間という異例の短さであり大本側は即日控訴、検察側も浅野の量刑を不服として控訴した[37]

10月14日、王仁三郎夫妻は教主輔・教主の地位を退き、長女出口直日が三代教主に就任、「皇道大本」も「大本」の旧称に戻った[38][39]。本宮山神殿の破壊は京都大丸組が750円で落札する[40]。教団内部で王仁三郎派、浅野派、福島派の対立が深まる中、王仁三郎は国家権力との対立を回避すべく10月18日から新教典『霊界物語』の口述筆記に着手する[41]10月20日、軍に護衛される中で本宮山神殿の取り壊しが始まった[42]1924年(大正13年)2月、出口王仁三郎は責付出獄中に植芝盛平をはじめ日本人6人とともにモンゴル地方へ行き、盧占魁(ろせんかい・馬賊の頭領)とともに活動する[43]。同年6月パインタラにて張作霖により危機もあったが、7月25日に帰国、11月1日に保釈された[44]
幕切れ

大阪控訴院第二審は第一審を支持、裁判は大審院まで争われたものの、「前審に重大な欠陥あり」として大審院が前判決を破棄し、控訴院へ差し戻した[45]。再審理中の1926年(大正15年)12月25日大正天皇崩御し、1927年(昭和2年)5月17日に免訴となる[46]。だが当局は大本に対する警戒を緩めず、次の機会を伺っていた[47]。一方、王仁三郎は第一審判決直後の10月18日から大長編『霊界物語』の口述を始めている[48]。なお(直)が残した教典『大本神諭』や教団内の派閥争いを自らの権威で克服しようとする意図と解釈する研究者もいる[49]。また神諭は社会改革と終末思想の色彩が濃いため、当局の追及をかわすためにも教義と神話の発展と重層化を試みたという指摘もある[50]。第一次大本事件と『霊界物語』の教義化を契機に多くの教団幹部・信者が大本を去って行き、その後浅野和三郎心霊科学研究会を、谷口雅春生長の家を興した[51]。この第一次大本事件は、王仁三郎と対立する浅野達を大本から排除すると同時に、大本の名前を全国に宣伝するための方策だったという解釈もある[52]宗教学者姉崎正治は大本に批判的であったが、第一次大本事件について「大本教を『取締』るのは政府の考慮に任せるとしても、政府が眞に根本的治療を望む誠意ならば、先ず自らの責任を感じ、自ら治療してかかるべきである。」「然し其と共に今の日本社会に大本教同様の気風あるを、同時に痛感する。重ねて政府当局者に云ひたい。外面から加へる厭迫迫害は無効である。社会思想の病體を取除く第一歩、又根本要義は、社会人心の窮屈を除くにある。」と論じて、政府の検閲や言論統制といった姿勢が変わらぬ限り、第二・第三の大本教が出現すると指摘した[53]
第二次大本事件
背景

第一次大本事件が一応の収束を見せるのと前後して、王仁三郎はエスペラントの導入・ラマ教道院(世界紅卍字会)バハイ教等世界各国の宗教提携など様々な活動を展開する[54]。同時に国内における政治活動を活発化させ、昭和恐慌による不況にあえぐ国民の関心を集めた[55]1932年(昭和7年)11月、大本は再び「皇道大本」と復名し第一次大本事件で頓挫した「大正維新」を「昭和維新」として実行しようとしていた[56]。王仁三郎は頭山満内田良平右翼人士との交流を行い、1934年(昭和9年)7月22日に昭和神聖会を結成する[57]。東京九段会館で行われた発会式には陸海軍将校が多数出席し、後藤文夫内務大臣、秋田清衆議院議長が祝辞を述べるなど、政治・軍事への影響力を示した[58]。昭和神聖会の政策請願に署名した人数は800万人にのぼる[59]。神聖会はワシントン海軍軍縮条約の早期撤廃、皇族内閣の実現、天皇機関説への激しい批判、東北地方の困窮に対する援助など、数々の愛国的主張を行っている[60]1935年(昭和10年)の時点で、大本は支部1990、信者100万 - 300万人(特高警察資料、大本教40万・人類愛善会25万人)、3割は大学卒業者という高学歴で、政治家・軍人を含む確固たる宗教勢力に成長している[61]

精神科医宮本忠雄は王仁三郎に「手を広げすぎて失敗する」というパターンがあり、「大本の体質は王仁三郎の体質から来ており、彼の人柄をそのまま肥大させたものが教団の性格」[62]「現実から身を引き離すのが不得手な王仁三郎であってみれば、現実との接触は必然的に権力への癒着をもたらした」[63] と指摘する。


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