大怪獣空中戦_ガメラ対ギャオス
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一方、中央自動車道建設予定地である二子山そばの山村[注釈 4]では、金丸村長の旗振りのもと、用地賠償金の吊り上げを狙った「反対同盟」の激しい妨害が続いており、早期決着を迫る道路公団開発局[注釈 5]との間で、工事責任者の堤主任は頭を悩ませていた。金丸村長の孫・英一は二子山を遊び場にしていたが、怪光現象の取材にやってきた新聞記者(岡部カメラマン)に案内を頼まれて共に二子山に向かい、不気味な洞窟に入ったところで突然の地震に見舞われる。英一を見捨てて逃げ出した記者は、巨大な手に捕まれ、空中高く持ちあげられる。記者の眼前に迫る、超音波怪獣ギャオスの巨大な顔。記者はギャオスに食われてしまい、続いて英一が捕まえられる。二子山の怪光現象は、富士火山帯の異常活動によって目覚めた怪獣ギャオスの巣穴が放ったものだったのだ。

駆け付けた堤たち建設作業員の目の前で、今まさにギャオスに食われそうになる絶体絶命の英一。そこへ間一髪、ガメラが飛来。ギャオスは甲高く叫ぶとともに、その口から黄色い怪光線が放たれ、光線はガメラの腕を鋭く斬り裂く[注釈 6]。調査団のヘリを切断したのはこのギャオスの超音波メスであり、彼らはすべて人食い怪獣ギャオスに捕食されていたのだ。ガメラは英一を甲羅に乗せて脱出し、遊園地で降ろしたあと、海底深くに沈んで傷の治癒に努める。

英一の証言によって怪獣はギャオスと正式に名付けられ、その人肉を好む生態が明らかになり、ただちに防衛隊の空陸一体作戦による戦闘機攻撃が始まった。しかしギャオスの超音波メスの前に、たちまち全滅してしまう。「ギャオスはおやつ前には出てこない」との英一の言葉から、夜行性のギャオスの性質が明らかとなり、堤主任の提案で強力照明弾「AGIL」が使用され、ギャオス封じ込め作戦が採られる。工事現場では作業員の離脱が相次ぎ、堤と熊、八公の3人が残るのみとなった。一方、村でもギャオスのために家畜が全滅し[注釈 7]、深刻な被害が地元を襲う。ギャオスの超音波メスによって破壊される「名古屋城天守閣」

やがて空腹となったギャオスは「AGIL」照明弾を潜り抜け、夜間名古屋市上空へ侵入[注釈 8]名古屋城天守閣を超音波メスで破壊、新幹線の乗客を食らい、蹂躙の限りを尽くす。光に弱いギャオス対策のために、照明を全開にした中日球場が緊急避難所[注釈 9]となり、不安におののく大勢の人々。そのとき、ギャオスの前に傷の癒えたガメラが飛来。名古屋上空に、激しい大怪獣空中戦が展開される。ギャオスが腹から出す霧状の黄色い消火液によってジェット噴射を止められたガメラは伊勢湾に落ちるが、ギャオスの脚をくわえ、海に引きずり込もうとする。夜明けが近づき空が赤らみ始めると、ギャオスは頭を紫色に光らせ、にわかに苦しみ出す。ギャオスは苦し紛れに自らの足を超音波メスで切断し、二子山へと逃げ帰るのだった。新幹線がギャオスの超音波メスによって屋根を破壊される

翌朝、名古屋港に流れ着き対策本部に接収されたギャオスの片脚は、紫外線を浴びてみるみる縮んでいく。ギャオスは日光、紫外線を浴びると細胞が死滅する完全夜行性の動物だったのだ。そのころギャオスは巣穴で、失った片足首を一晩で再生させていた。「ガメラは回転しなかったから甲羅の上でも目が回らなかった」との英一の言葉から新作戦が決定。人工血液の噴霧でギャオスをおびき寄せ、ホテルの回転展望ラウンジで目を回させ、夜明けまで足止めさせる「回転作戦」が実行に移される。作戦は成功するかに見えたが、無理な電圧に回路がショート、夜明けまであと少しのところで失敗してしまう。

一方村ではギャオス出現による高速道路ルート変更決定のために、村人たちと金丸村長の仲違いが始まった[注釈 10]。激しく責め寄る村人を泣いて追い返す英一に、金丸は欲に駆られた自らの浅ましさを恥じ、英一の言に従って持ち山に火を放ってガメラを呼び寄せることを決意する。激しい山林火災に急行し、胸から黄色い消火液を噴霧するギャオス。そのとき英一たちの目の前に、ガメラがやってくる。英一の声援を背に、ガメラとギャオスの二大怪獣の最後の戦いが始まった。ガメラは切断光線に苦慮しつつも一瞬の隙にギャオスを急襲、背後から首に噛みつく。やがて夜明けを迎え、弱々しくも抵抗するギャオスをガメラは腹で抱え込むように飛び立ち、富士山火口に引きずり込む。火口から放たれた一筋の光はギャオスの断末魔だった。

人々に笑顔が戻り、堤と村長、村人たちもそれぞれ和解する。そして英一は火口から飛び去っていくガメラをいつまでも見送るのだった。
解説

本作品の制作当時、東宝は「世界四大モンスター」のうち、「フランケンシュタイン」、「キングコング」の二大キャラクターを自社の特撮作品の題材として映画化していた。湯浅憲明ら大映のスタッフはこれに対抗して、世界市場に通用する「世界モンスター第2位」の「ドラキュラ伯爵」を題材に選び、その怪獣翻案として、『大怪獣空中戦 ガメラ対バンパイヤー』との企画を立てた。この吸血怪獣「バンパイヤー」が光を嫌う夜行性の吸血コウモリの怪獣「ギャオス」となり、本作品『大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス』として完成した。

1作目でガメラが灯台を襲った際に、子供を手のひらに乗せて助けたシーンが、観客である子供たちに大反響を呼んだことから、大映本社や本式担当となったプロデューサーの永田秀雅の意向で、本作品からこのシリーズは子供を対象にした娯楽映画へと路線変更された。ただし、現場スタッフは急激な変更は採らず、山奥を開発する企業と土地の値上げを狙って開発を反対する山奥の村の人々のエゴが描かれる点において、前作のドラマ志向を引き継いだ作劇が行われていて、脚本担当の高橋二三も、「『ガメラ対ギャオス』までは子供向けではなかった」と語っている。とはいえ、湯浅、永田の念願である「子供の味方」というガメラの性格はこの映画で決定づけられることとなった。

高橋によると東宝で「ゴジラシリーズ」を監督として支えた本多猪四郎が、公開当時本作品を観て感激し、「素晴らしい内容だった、ぜひ一度一緒に仕事がしたい」と絶賛する年賀状を送ってくれたという[注釈 11]。これには高橋らもゴジラに対する後発の負い目が吹き飛ぶ思いだったといい、「私がゴジラを意識してなくても、本多さんはガメラを意識してくれていた。嬉しかった」と語っている。

劇中の「科学センター」のビルは開業前のホテルニューオータニをモデルにしたが、永田はホテルの社長から直接電話で「永田君ひどいよ、うちはまだオープンもしてないのに、ガメラが壊しちゃったじゃないか」と怒られたという。ガメラ映画では外国輸出を意識して、日本の名所を舞台に採り入れているが、皇室の人からは笑いながら「まさか宮城は壊さないでしょうね」と聞かれたという。

前作『大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン』よりは予算が縮小されたとは言え、通常予算の3倍の「A級予算」を組んで作られた大映ガメラ映画は、本作品が最後である。この予算縮小のため、本作品からは湯浅が本編と特撮の両方を監督担当することとなり、この体制は以後のシリーズに続いていった。

この映画においては、二大怪獣の能力の違いがはっきりしており、それが印象的に描かれ、強い緊張感を見せた。つまり陸上戦と水中戦を得意とし、「空は飛べるものの飛ぶ以外のことは出来ない」というガメラに対して、空中戦を得意とし、「地上は不得手、水中には入れない」というギャオスという運動性能面の対比、また「硬い甲羅に覆われて接近戦に優れたガメラ」と、「防御力は弱いが何でも切れる遠距離武器を持つギャオス」という戦闘能力の対比が見所となっている。


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