大怪獣空中戦_ガメラ対ギャオス
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ところが、本作品の初号プリントが現像所から上がってきて試写が行われた際に、夜空をバックにギャオスが足首をガメラに食いつかれてもがくシーン[注釈 12]で、背景が朝焼けのカットが1カット紛れ込んでいた。予算の関係もあり、編集用のラッシュフィルムは白黒で現像していたため、背景の色の違いに気づかずにそのまま編集されてしまったのである。このため、夜空がバックのカットを焼き増ししてつなぎ、つじつまを合わせたものの、編集点でコマ飛びを起こし、ギャオスが同じ動きを繰り返す不自然なものとなっている。

題名に「大怪獣空中戦」とうたわれているだけあって湯浅監督はガメラとギャオスの空中戦描写に力を入れたという。両怪獣の空中戦は、主に移動背景を使って行われた。調布の大映東京撮影所の横には京王線が通っている関係で、京王電鉄から線路のレールを借りてきて撮影所内に敷き、トロッコに6間(約10メートル)の長いホリゾント板を載せて滑らせ、両怪獣のミニチュアの操演と絡ませて、スピーディーな空中カットを実現させている。新聞記者がギャオスにつかまれて持ち上げられるカットもこの手法。ガメラとギャオスの飛行ミニチュアは、遠景では5尺、演技の入るシーンでは6尺のミニチュアを使い、ほとんどのシーンは3尺のミニチュアで撮影された。

ギャオスからの避難場所として中日球場が登場するが、実際はこのロケは当時大映系列の東京オリオンズ本拠地の東京スタジアムで撮影されたもので、それを実際の中日球場の映像(広告看板や得点掲示板など)と合成されて作られた。外野席で上空を見上げる避難民のロングショットは作画。内野グラウンドの避難民のアップショットは大映撮影所内の空き地である。ギャオスがのぞく新幹線線路の土手は多摩川土手で撮影した。「土手つなぎ」という手法を使い、土手のラインを境に合成マスクを切っている。

宇宙科学センターのそばの遊園地の観覧車は、二子玉川園でロケした。英一少年が甲羅伝いに観覧車に乗り移るシーンは衣装部の小柄なスタッフが吹き替えた。カーブした道路を進み、橋を渡ってセンターにパトカーやジープが向かうミニチュア特撮は湯浅も自信のカットで、これは地面にレールを埋め、その上をミニチュアの車両を走らせたもの。

シリーズで初めて、ガメラが足だけのジェット噴射で飛行する場面が登場する。回数は一度だけで、飛行というよりギャオスに対する飛び掛りのような形であったが、以降のシリーズでは回転ジェットに並ぶ飛行スタイルとして定着していくことになる。
キャスト

本作品は名古屋近辺を舞台とするが、撮影は調布の大映東京撮影所近辺で行われ、名古屋弁を話す登場人物は1人もいない。劇中で怪獣「ギャオス」の名付け親となる「英一少年」役の阿部尚之は、オーディションで選んだ劇団いろはの子役。よく肥えており、同じく太めだった湯浅によると周りから「監督の息子だろう」「身内を主役にした」などと言われたそうである。劇中で英一が描くガメラの絵は、実際にこの子役が描いたもの。

主演俳優は前作に引き続いて本郷功次郎だが、湯浅監督は「怪獣映画での立ち役は怪獣、ガメラが立ち役であって、本郷功次郎さんはどんなに二枚目でも“もたれ役”なんですね。怪獣を目立たせる役目なんだ。ですからあまり印象に残る演技は出来ない。螢雪太郎さんとか、上田吉二郎さんの方が目立つんですよ」と語っている。

「金丸村長」役の上田吉二郎は「怪獣を喰ってやろう」との意気込みだったそうで、湯浅は「一世一代の名演技」と評している。湯浅は大映怪獣映画の特徴として怪獣の顔のアップを積極的に採り入れたと語っているが、上田はアップでガメラと対抗しようとしていたといい、湯浅がNGを出すときにわざと「今の演技、ちょっとガメラに負けてますよ」と言うと「そりゃいかん、もういっぺんやりましょう」と乗りに乗って演技をしてくれたという。

海に浮かんだギャオスの足を検分する巡査役の飛田喜佐夫は、湯浅が子役所属していた児童劇団「カモシカ座」のベテラン俳優。アナウンサー役の森矢雄二は大映技術部長の息子だった俳優で、冒頭のナレーションも担当している。ガメラシリーズでは、アナウンサーはすべて森矢が持ち役として担当している。

堤志郎(道路建設技師):本郷功次郎

金丸すみ子(村長の孫娘):笠原玲子

マイトの熊(労務者):丸井太郎

青木博士:北原義郎

自衛隊中央部司令官:夏木章

金丸辰衛門(村長):上田吉二郎

東洋医学研究所員・山田:村上不二夫

牧場主:北城寿太郎

中日新報記者(後部座席):仲村隆

八公(労務者):螢雪太郎

金丸英一(すみ子の弟):阿部尚之(劇団いろは)

県警本部長:大山健二

道路公団開発局長:伊東光一

岡部カメラマン:三夏伸

アナウンサー:森矢雄二

地震研究所所長:丸山修

記者:津田駿

巡査:飛田喜佐夫

道路公団地方課長:遠藤哲平

ホテル・ハイランド支配人:ジョー・オハラ

営林署の技師:原田該

村人:伊達正、中田勉、槙俊夫

中日新報運転手:高見貫

中日新報カメラマン:志保京助

村人:杉森麟

記者:武江義雄

労務者:九段吾郎

変電所技師:森田健二

牧童:河島尚真

船員:中原健

工員:喜多大八

記者:大庭健二

労務者:後藤武彦

自衛隊副官:井上大吾

新幹線の客:隅田一男、高田宗彦

村人:米沢冨士雄

船員:山根圭一郎

車掌:荒木康夫

記者:南堂正樹

労務者:藤井竜史

遊園地の係員:岡郁二

工員:花布洋

労務者:前田五郎

金丸家の婆や:竹里光子

地震研究所所員:天地仁美

新幹線の客:一条淳子

村人:岡田陽子

ガメラ・村人:荒垣輝雄[注釈 13]

道路公団開発局員:西尋子(ノンクレジット)

スタッフ

監督:
湯浅憲明(本編・特撮とも)

製作:永田秀雅

企画:仲野和正

脚本:高橋二三

音楽:山内正

撮影:上原明

録音:奥村幸雄

照明:久保江平八

美術:井上章

編集:中静達治

スチール:椎名勇、塩見俊彦

助監督:小林正夫

製作主任:川村清

《特殊技術》


撮影:藤井和文

合成:金子友三

照明:熊木直生

美術:矢野友久

操演:金子芳夫

助監督:阿部志馬

音響効果:小倉信義


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