大怪獣空中戦_ガメラ対ギャオス
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とはいえ、湯浅、永田の念願である「子供の味方」というガメラの性格はこの映画で決定づけられることとなった。

高橋によると東宝で「ゴジラシリーズ」を監督として支えた本多猪四郎が、公開当時本作品を観て感激し、「素晴らしい内容だった、ぜひ一度一緒に仕事がしたい」と絶賛する年賀状を送ってくれたという[注釈 11]。これには高橋らもゴジラに対する後発の負い目が吹き飛ぶ思いだったといい、「私がゴジラを意識してなくても、本多さんはガメラを意識してくれていた。嬉しかった」と語っている。

劇中の「科学センター」のビルは開業前のホテルニューオータニをモデルにしたが、永田はホテルの社長から直接電話で「永田君ひどいよ、うちはまだオープンもしてないのに、ガメラが壊しちゃったじゃないか」と怒られたという。ガメラ映画では外国輸出を意識して、日本の名所を舞台に採り入れているが、皇室の人からは笑いながら「まさか宮城は壊さないでしょうね」と聞かれたという。

前作『大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン』よりは予算が縮小されたとは言え、通常予算の3倍の「A級予算」を組んで作られた大映ガメラ映画は、本作品が最後である。この予算縮小のため、本作品からは湯浅が本編と特撮の両方を監督担当することとなり、この体制は以後のシリーズに続いていった。

この映画においては、二大怪獣の能力の違いがはっきりしており、それが印象的に描かれ、強い緊張感を見せた。つまり陸上戦と水中戦を得意とし、「空は飛べるものの飛ぶ以外のことは出来ない」というガメラに対して、空中戦を得意とし、「地上は不得手、水中には入れない」というギャオスという運動性能面の対比、また「硬い甲羅に覆われて接近戦に優れたガメラ」と、「防御力は弱いが何でも切れる遠距離武器を持つギャオス」という戦闘能力の対比が見所となっている。特に中盤の名古屋沖の戦いは絶品で、空中戦でたたき落とされたガメラに追いすがるギャオス、海上に落ちるや、接近するギャオスに噛みついて水中に引きずり込もうとするガメラに必死で逃れようとするギャオスのシーンを強く印象づけている。

本作品は、「社団法人・映画輸出振興協会」による輸出映画産業振興金融措置の融資を受けて、製作された映画である[1]
『ガメラ対ギャオス』と湯浅演出

前作『大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン』では特撮監督を務めた湯浅憲明は、予算の縮小された本作品では本編と特撮の監督を兼任している。「怪獣映画が大好き」という湯浅は、「出来れば全編怪獣だけが出てくる映画をやりたかった」と述べているほどで、本作品でも観客である子どもたちを飽きさせない、さまざまなアイディアを脚本の高橋二三とともに組み込み、サービス満点の「怪獣映画」に仕上げている。

湯浅によると、前作『対バルゴン』のあとスタッフで反省会があり、「怪獣が出てこないと観客の子供たちが画面に集中しない」との意見から、本作品では冒頭からスピーディーにギャオス出現につなぐ演出となっている。また、劇中で英一少年がガメラに乗る場面での、劇場での子供たちの歓声はすさまじいものだったそうで、以降の作品で、より子供の視点にあわせた作風となるきっかけとなった。ガメラが海底で傷から血を流すシーンと、囲炉裏端で英一が火傷しそうになるシーンがダブらされるが、これも湯浅によれば、英一とガメラの心のつながりを表現した演出だった。ギャオスが新聞記者を食べるショッキングなシーンがあるが、記者は英一を見捨てて逃げた「悪い人」として描かれており、ここはちゃんと因果応報を描くことで、子供が必要以上に怖がらないよう配慮しており、『対バルゴン』での描かれ方との違いだという。

ギャオスを始め、ガメラ映画の敵怪獣は身体にさまざまな武器を備えているが、これは米国のテレビ番組『スパイ大作戦』などからの影響だったといい、こうしたアイディアを凝らした怪獣同士の戦いに注力し、自衛隊の活躍場面などは意図的に短くしたという。また怪獣の描写にカットを多用し、こういったカット割りの多さが大映特撮の特徴と言われるゆえんであると述べている。

劇中ではギャオスの性質について、対策本部で科学者たちによる科学解説が入るが、湯浅は「怪獣が出現する時点で理屈ではない。怪獣映画に理屈を持ち込むべきでない」として、本来はこういったシーンは「大嫌いだ」と語っている。このため、青木博士は東宝映画の博士のように活躍しないのだという。ギャオスが脚を再生させるシーンが対策会議の前後に挿入されるが、これも湯浅によると「大嫌い」な会議のシーンで間延びさせないための工夫だという。

英一少年が大人たちの対策本部に割り込んでアイディアを連発するが、これも脚本家の高橋二三と「全部子供に考えさせることにしよう」と打ち合わせたもので、湯浅自身の「真実はすべて純粋な子供の目に映るものだ」という考えから、劇中の「大人たち」や青木博士には、あまり活躍の場を与えていない。これは全シリーズ共通のメッセージだそうで、湯浅は「夢というのは無茶苦茶の中にあると思う」と語っている。
登場怪獣
ガメラ詳細は「ガメラ#昭和のガメラ」を参照

造型はエキスプロダクション。前作『大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン』のぬいぐるみの、顔つきを修正したもの。鋭かった目つきが、子供の味方らしく優しいものにされている。

前作まで人が入ったままガメラに火を吹かせることがあったが、さすがに「危険過ぎる」との意見で、第1作で作られた上半身のみのぬいぐるみに炎を吐く仕掛けを仕込み、撮影に使われた。ラストシーンで富士山火口を登るモーター仕掛けで手足の動くミニチュアも、第1作で作られたものの流用である。このミニチュアはその後のシリーズすべてで使われている。

「英一少年がガメラの甲羅に乗る」という本作品のハイライトシーンのために、20メートル四方の巨大なガメラの甲羅が作られた。また本作品では機電を組み込んだ回転ジェット用の等身大ミニチュアが用意され、ギャオスとぶつかり合わせている。ジェット噴射は棒の先に火種をつけたもので着火していた。この火薬は1分半ほどしか燃焼時間が無く、高速度撮影でもたせているが、無駄のないよう着火のタイミングを合わせるのが大変だったという。火薬は一本3,000円(当時)したため、4本使う回転ジェットでは1カットに合計12,000円かかった。次作『ガメラ対宇宙怪獣バイラス』では脚だけ引っ込めて飛ぶミニチュアが使われたが、これは火薬の数を減らすための予算削減の工夫だった。
超音波怪獣 ギャオス詳細は「ギャオス#超音波怪獣 ギャオス」を参照

コウモリをモチーフにした飛行怪獣。劇中では英一少年の「鳴き声がギャオーって聞こえるから」との言から「ギャオス」と名付けられたが、この「ギャオーって鳴くからギャオス」という思いつきは、実際は大映専務の永田秀雅によるものだった。首の骨が音叉のように二股になっており、このため鳴き声が超音波振動を起こしレーザーメスとなるという設定。青木博士は過去にも現在にも類似した動物が存在しないため、ギャオスを「怪獣類」に属する生物と分類している。ポスターや各種宣材では「人喰いギャオス」とうたわれ、「人を食う」というキャラクターが強調された。

デザインは井上章、造型はエキスプロダクション八木正夫を中心に、白熊栄次らによって人の入るタイプのぬいぐるみが、羽根を拡げたタイプと畳んだタイプの二体造られた。当初は腹周りの段差が二段しかなかったが、「迫力に欠ける」との意見で撮入前に蛇腹状に修正された。鈴木昶によって目と耳に電飾が仕込まれ、体色塗装は村瀬継蔵が行っている。

飛行操演用には6、3尺、1尺サイズのミニチュアが使われた。


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