大怪獣決闘_ガメラ対バルゴン
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圭介は松下博士の助手カレンを伴って帰国し、兄が小野寺に殺されたと知って乱闘になり、彼を殴り倒す。その後、大阪府知事を交えた防衛隊の作戦本部では、天野教授によってバルゴンの弱点が水であることが判明。またカレンは部落から持ってきた、代々バルゴンを殺すのに村人が用いたという巨大なダイヤモンドの提供を申し出る。対策本部ではこのダイヤモンドの光を拡大し、ヘリコプターでバルゴンを琵琶湖へ誘導し、死滅させる作戦を決行するが、バルゴンはなぜかダイヤの光に目もくれず、京都へのさらなる東進を許してしまう。

作戦の失敗により、圭介とカレンは大阪府知事から責められるが、作戦室を訪れた佐藤船医の証言により、このバルゴンが赤外線によって急激に成長した突然変異種であることが判明する。赤外線によって成長したバルゴンは赤外線を好む性質となっていたのだ。そこで殺人光線発射機を改造して、ダイヤを組み込み、その光でバルゴンを琵琶湖へ誘導、沈める作戦が実行される。その計画が実行されるまでバルゴンを足止めするため、人工雨が降らされ、これにより水に弱いバルゴンは冷凍液を吹く力を失う。琵琶湖が両怪獣の決戦の場となった

計画が実行されると、強まったダイヤの光によってバルゴンの誘導は見事成功し、琵琶湖畔までたどり着く。しかし、これを聞きつけた小野寺が琵琶湖に現れダイヤを強奪し、ダイヤごとバルゴンに飲み込まれることで、作戦は失敗に終わってしまう。しかし、バルゴンの虹で破壊されたミサイル基地で、唯一溶けずに残されていた自動車のバックミラーから、殺人虹光線が鏡に反射することが判明。自衛隊は、その反射を利用した巨大反射装置による「バックミラー作戦」をさらに決行し、バルゴンに重傷を負わせることに成功する。が、学習したバルゴンが殺人虹光線を封印したことで、この作戦も手詰まりとなってしまう。

だがここに至ってバルゴンが撒き散らした冷凍液の影響が徐々に薄れ、氷が解けるとガメラも復活し、バルゴンの元へと飛来した。二大怪獣による琵琶湖を挟んだ「大怪獣決闘」が繰り広げられることになる。
解説バルゴンの舌によって根元から倒される神戸ポートタワー

大怪獣ガメラ』の半年後に公開された作品で、再び現れたガメラと新怪獣バルゴンとの闘争を描く、ガメラシリーズ初の総天然色による第2作。「古都対決」が打ち出され、日本の怪獣映画としては初めて、「大怪獣決闘」と副題がつけられた作品である。大映東京撮影所作品。

前年公開された『大怪獣ガメラ』が大ヒットとなったため、第2弾として急遽企画された作品だが、大映専務であった永田秀雅によると、大映本社は『大怪獣ガメラ』について、「東宝のゴジラの二番煎じで、よくこんなものをやれるな」と営業部でも危険性を感じていたという。ところが『大怪獣ガメラ』は予告編が劇場で流れてから前売りが急激に売れ、大ヒット。本社側もこれを受け、社長の永田雅一が直々に製作者名として自らの名をクレジットさせ、破格の予算を投入して製作に乗り出す意気込みとなった。

ゴールデンウィーク」興行作品として、大映京都撮影所との分担制作による『大魔神』との本作品の「特撮二本立て」興行は、円谷英二1人が全特撮作品を担当していた東宝にも実現できないものだった。永田社長もこの二本立て興行に並々ならぬ注力を見せ、3月末には新聞各紙にこの興行の一面広告を載せ、「日本映画は必ず復興する」と題した一文を寄せて意気込みを示している。

脚本担当の高橋二三によると、「8作も続くとは思わなかったが、『大怪獣ガメラ』のあと、これは次も来るなという感触があった」そうで、実際に本作品の製作が決定した時には「ほら見ろ、さあ何作でもいらっしゃい」と思ったという。小野寺が一郎に問い詰められて口を滑らせ、開き直って殺人を重ねるシーンがあるが、高橋はこのくだりを喜劇のセンスで描いたという。高橋は本作品について「メロドラマと怪獣特撮がひとつになった作品」と評している。

クレジットはされていないが、永田社長の実子で専務の秀雅がプロデューサーに就いている。永田は「子供を出すように」と現場に要望しているが、田中重雄監督側は劇中に一切子供の登場しない[注釈 2]作劇を通し、昭和ガメラシリーズで唯一ストーリーに子供がからまない、一般向けの内容の映画に仕立てている。

本作品は興行的に大ヒットとなったが、特撮に予算を使いすぎて赤字になった。また大ヒットにもかかわらず、特撮監督の湯浅憲明らは内容に不満が多かったという。その理由は作劇が「主軸観客層である子供向けでないこと」であり、劇場での子供たちの反応を基にしてのスタッフの反省会では、「バルゴンが出てくるまでが長すぎて子供の集中力が続かない」「大人向けのドラマは子供たちには退屈」などの意見が出された。こうして湯浅が全編監督となり、翌年制作された『大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス』(1967年)では、子供たちを飽きさせない演出が最重点に置かれ、子供が主役の湯浅の理想とする作劇が徹底されることとなった。
登場怪獣
ガメラ詳細は「ガメラ#昭和のガメラ」を参照

前作に続き、本作品に合わせてエキスプロダクションが新規製作した。鋭い目つきが特徴。昭和シリーズのガメラは基本的に四足歩行するが、これは湯浅憲明の「動物的にリアルに見せたい」との意向によるもので、最初は必ずはわせ、戦いに移行してから初めて二足になるよう演出したという。

手足を引っ込めての回転ジェットの飛行シーンは、前作ではアニメーションで描かれたが、本作品から「迫力が違う」との湯浅の意向で、火薬を仕込んだミニチュアを使うものとなった。棒の先に火種を付け、4つの噴射口に同時に点火したが、タイミングが合わなかったうえ、撮影中に消えてしまうことも多く、苦労が絶えなかった。このジェット噴射の火炎の色は、口から吐く火炎放射の赤色との区別から、青い色にされている。

1サイズと3尺サイズの回転ジェット用ミニチュアが作られたが、湯浅は迫力にこだわり、なるべく3尺ミニチュアを使ったという。ミニチュアは3点でピアノ線とつながれ、放射状に組んだ3本の支柱で吊るされており、支柱の中心の回転軸でミニチュアを回転させる仕掛けだった。この回転ジェットの撮影では、操演用のピアノ線が切れてしまうことが多く、見学に来ていた子供たちに笑われたこともあったという。
冷凍怪獣 バルゴン

諸元バルゴン
別名冷凍怪獣
体長80 
m[1]
体重70 t[1]

ニューギニアの孤島にある魔境「虹の谷」で「千年に一度誕生する」と言い伝えられている、伝説の怪獣[1]。鼻先から前方へ伸びる大きな角を持ち、ワニオオトカゲを合わせたような外見の四足歩行生物である。

虹の谷に隠されていたオパールに似た卵から孵化したが、本来は10年近い年月を経て成長するところを、卵の状態で医療用の赤外線を浴びたため、孵化後わずか数時間で異常成長した変異個体である[1]ダイヤモンドの放つ光に引き寄せられる習性があるため、ニューギニアの部族に伝わるバルゴン誘導のための特別なダイヤが防衛隊の誘導作戦に使われるものの、こういった事情で、赤外線を当てて増幅されたダイヤの光でなければ認識できなくなっている。

カメレオンのような長い舌を持ち、人間に巻きつけて捕捉したり[1]、建造物を破壊することもできる。舌の破壊力はファイティング原田の20万倍。先端からは零下100度(零下240度とも)の霧状の冷凍液を噴射し、この冷凍液で大阪城および市街地とガメラを凍結させる[1]。噴射直後にはバルゴンの歩き回った周辺が凍結することがあり、料亭旅館やその周辺を通過していく数秒間で凍結させるシーンも描かれた。自身に危険が迫ると、その殺気を遠くからでも敏感に感じ取れるほど、優れた動物的本能や感覚を持つ。バルゴンの冷凍液により、ガメラとともに大阪城も凍ってしまう

背筋に並ぶ光り輝く7つのプリズムからは「悪魔の虹」と恐れられる色の殺人光線を放つ[1]。この光線はあらゆる物質を破壊できるが、鏡の光を反射する性質で無効化される。体組織は水に弱く[1]、長い間水中に留まると細胞が溶け出してしまうと同時に、舌先からの冷凍液が噴射できなくなる。「バックミラー作戦」で体表を負傷した際には相当なダメージを受けはするものの、命を落とすには至らない。このあと、動物本来の本能にしたがい、断末魔まで虹光線は出していない。

ガメラを大阪城ごと凍結させて1度は勝利するも、琵琶湖での戦いでは人間たちの奮闘によって得意の冷凍液や殺人虹光線などが使用できなくなったことが災いし、噛み付きや舌による直接攻撃などで応戦する。次第に劣勢となり、最後はガメラに湖内へ引きずり込まれたために皮膚が溶解し、そのまま絶命する。

大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス』、『ガメラ対宇宙怪獣バイラス』(海外版)、『ガメラ対大魔獣ジャイガー』、『宇宙怪獣ガメラ』には、ライブフィルムで登場。『宇宙怪獣ガメラ』での登場シーンは、編集の都合で大阪から琵琶湖へ直行するようになっている。

平成ガメラシリーズ2作目の敵怪獣候補には当初、本作品より大型の個体として登場が予定されていた[2]大怪獣激闘 ガメラ対バルゴン COMIC_VERSION#登場怪獣も参照。
バルゴンの美術・造形

ぬいぐるみ高山良策によって造型され、エキスプロダクションが細部の仕上げを行った。バルゴンのまぶたは横方向に開くが、これは当時の撮影所所長をモデルにしたものだった。湯浅によると、この所長は実際にそういうイメージの顔をしていたそうである。また、バルゴンの頭が大きいのは人間体型を可能な限り隠すためで、撮影では足元を写さないよう気をつけたという。湯浅は、「バルゴンは見栄えよりも動きを優先させて作った」とコメントしている。

高山良策の怪獣造形は「動きやすさ」を重視して作られ、非常に軽いぶん傷みやすかった。撮影でも痛みが激しく、連日補修が欠かせなかったという。ラストの琵琶湖に沈むシーンではぬいぐるみがなかなか沈まず、ハサミで腹を切り裂いて水を入れ、最後はほぼ頭だけの状態にしてようやく目的を達した。


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