大学院
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博士課程では、必須クラスを履修した後、研究論文を執筆する前に適性試験(Qualifying Examination[41]。専攻分野の知識や技能を十分に有しているかを試す試験で、ほとんどの場合筆記試験である。この試験は日本では「大学院入学試験」にほぼ相当する)を受ける。合格した者だけが、博士号候補生(Ph.D candidate)として博士課程に残ることを許される。適性試験に落ちると博士課程に籍を置けなくなるが、再受験を許されることも多い。なお、この試験は「いつまでに合格しなければならない」という規定があることが多く、その場合は期限までに合格できなくても退学になってしまう。また、例えば学部卒から博士課程に入学した学生は入学後2年以内に、修士卒から入学した学生は1年以内に合格しなければならない、というように細かい規定を定めている場合もある。

適性試験の試験内容は、専門科目の試験(一般に複数の科目に分かれており、2つ以上を要求される場合もある)と、大学や分野によってはさらに外国語やプログラミング言語の試験が課されるところもある。以前は日本語も外国語として多くの大学で採用されていたが、現在ではほとんどの大学で廃止され、フランス語[42]ドイツ語ロシア語などが主流である。

外国語の試験方法は、その言語で書かれた自分の専門分野の専門書の文章を英訳する、などの方法で行われることが多いが、中には口頭による会話試験を課す大学もある。現在では、これらの外国語試験は廃止する大学が増えてきている。英語が既に学術界においての共用語としての地位を確立しており(これには冷戦の終結なども関係している)、さらに、一般的には専門科目についての学術的な成功にこれら外国語の能力はあまり影響が無い上に、専門分野において類希な才能や業績のある人でも、外国語の試験をパスできずに博士号を取得できなかったという例もあったためである。

適性試験に合格すれば学位取得のための研究を開始することを認められる。研究成果がうまく実れば、それを学会で発表し、査読付き学術雑誌に論文を投稿・掲載し、十分に研究の経験を積んだと判断されれば、学位論文としてそれらをまとめ、いよいよ博士号取得のための最後の口頭試験である「最終防衛試験(Final Defence Examination、Final Oral、Thesis Defence、など。専門の教授陣からの鋭い質問や指摘から“防御”することからこのように呼ばれる。日本での「学位論文口頭発表会」にほぼ相当する)」を受けることができる。再受験が許されることも多いものの、この試験に落ちても退学になってしまう(最終防衛試験を受けずに博士号の授与が認められる場合もある。ただし、その場合は普通、受験すれば確実に合格であると見込まれている実力・業績のある場合に限られる)。しかし、この口頭試験は大学や分野によっては、大学院での研究業績や苦労を称える儀式の場という位置付けのところもある(この場合、査読に耐え得る一定のレベル以上の研究成果を出せるかどうかが鍵となる)。また、家族や友人を招待して自分の研究成果を説明するセクションが設けられている場合もあり、その場合はそのセクションの後に、大学の教授陣を含む専門家向けの発表・口答試験を行うことになる。

試験が終われば受験者は部屋からの退室を命じられ、試験官達がすぐその場で合格か不合格かを合議する。結果が決まれば受験者は再び入室するように言われ、そこで試験の結果を伝えられる。合格すれば晴れて博士を名乗ることを許され卒業となり、合格した場合に備えて祝賀パーティーが準備されていることもある。なお、この口頭試験は大学や分野によっては、独特の雰囲気や伝統がある。

アメリカ合衆国も学位の認定は緩くなっており、かつてなら「DM」 (Doctor of Music)[43]だったのが、「Ph.D」に格上げされるなど、意識に変化がみられる。



脚注[脚注の使い方]
注釈^ 医学を履修する博士課程、歯学を履修する博士課程、薬学を履修する博士課程(当該課程に係る研究科の基礎となる学部の修業年限が6年であるものに限る)または獣医学を履修する博士課程への入学については18年。
^ その修了者が当該外国において、16年の課程を修了したとされるものに限る。
^ その教育研究活動等の総合的な状況について、当該外国の政府または関係機関の認証を受けた者による評価を受けた者、またはこれに準ずる者として文部科学大臣が別に指定する者に限る。
^ 医学を履修する博士課程、歯学を履修する博士課程、薬学を履修する博士課程または獣医学を履修する博士課程への入学については5年。
^ 当該外国の学校が行う通信教育における授業科目を我が国において履修することにより、当該課程を修了することおよび当該外国の学校教育制度において位置づけられた教育施設であって、前号の指定を受けたものにおいて課程を修了することを含む。
^ 修業年限が4年以上であること、その他の大臣が定める基準を満たす者に限る。
^ 医学を履修する博士課程、歯学を履修する博士課程、薬学を履修する博士課程、または獣医学を履修する博士課程への入学については24歳。
^ 学則等では主に「博士前期課程」「博士後期課程」などと呼称。
^ 学則等では主に「一貫制博士課程」などと呼称。
^ 学則等では主に「後期3年博士課程」などと呼称。
^ 学則等では主に「4年制博士課程」などと呼称。
^ 専ら法曹の養成を行う課程。
^ 専ら小学校等教員の養成を行う課程。

出典^ “3 大学院の目的・役割”. 文部科学省中央教育審議会 (2005年6月13日). 2022年9月5日閲覧。
^ “アーカイブされたコピー”. 2012年8月5日時点の ⇒オリジナルよりアーカイブ。2011年9月23日閲覧。
^http://wordnetweb.princeton.edu/perl/webwn?s=graduate%20school
^ OECD 2014, pp. 22?23.
^ “ ⇒RU11とは”. 学術研究懇談会. 2016年11月21日閲覧。
^ (年齢,従業上の地位・雇用形態,所得,男女,教育別有業者数)
^ a b 『大学・高等教育の経営戦略』(日本教育経営学会) 69頁
^ 『現代大学の変革と政策: 歴史的・比較的考察』(喜多村和之 著) 87頁
^ 学校教育法(昭和二十二年三月二十九日法律第二十六号)文部科学省(2018年10月25日閲覧)。
^ a b 中央教育審議会 > 新時代の大学院教育?国際的に魅力ある大学院教育の構築に向けて?中間報告 > 新時代の大学院教育?国際的に魅力ある大学院教育の構築に向けて?附属資料 > 3.大学院の目的・役割文部科学省(2018年10月25日閲覧)。


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