大友克洋
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それまでにも日本の漫画家が作品賞や特別賞を受賞したことはあったものの、大賞は大友が初めて[15]

2019年Anime Expo 2019にて新作映画『ORBITAL ERA』の制作、代表作『AKIRA』の再アニメ化が発表される[16]

2022年1月より、講談社からデビュー以来の単行本未収録作品を含む全作品を雑誌掲載時の状態のまま収録する大友克洋全集「OTOMO THE COMPLETE WORKS」の刊行が開始される[17]
作風と影響2016年アングレーム国際漫画祭にて
初期の作風

大友の初期の作品はアメリカン・ニューシネマの影響が強く、ロックジャズドラッグといった70年代の文化を背景とした日常風景を淡々と描くものが多かった[18]

コマ割りなどには敬愛する黒澤明サム・ペキンパーの影響が強い[19]

緻密に描き込まれているにもかかわらず、余白を大胆に取ることで白っぽい画面が作られており、リアルでありながら劇画のような泥臭さや過剰さのない乾いた画風が注目された[9]
「大友以前・大友以後」

大友は、戦後に漫画において描かれてきた物語を解体し語りなおす作家として登場した[20][21]。『ショート・ピース』刊行以後、日本の漫画全体の画風、手法が大きく変わったため、漫画の表現史を画するものとして「大友以前、大友以後」という言葉がしばしば用いられる[22]。この言葉を用いた一人である米澤嘉博は、手塚治虫によって体系化された、記号化された絵を用いて意味のあるコマの連続で物語を表現するという漫画の手法に対して、事態をリアルに一枚の風景として描き出し、自在に変化するカメラワークによる画面の連続で作品を構成する大友の手法[注 4]を、「非手塚的手法」と呼んだ[23]。なお手塚本人は、劇画ブーム終焉の要因を大友作品に帰するなど、大友を極めて高く評価していた[注 5]。大友の作品ではしばしばキャラクターのいない、風景だけが大写しにされたコマが続けて描かれるが、風景を物語の説明的な背景として使うのではなく「風景だけで何かを語らせる」というやり方は、それ以前の漫画にはない新しい手法であった[注 6]

ササキバラ・ゴウは、漫画の絵から説明的な意味・文脈を取り去り、人物も風景も同じ質感を持った単なる「もの」として写実的・立体的に描く大友の表現が、漫画の作品世界の中で均質な空間を表現することを可能にしたと指摘している[27]。このことは一面では、箱庭的な物語世界のなかにディテールを描き込むことへの欲求を作家に与え、70年代以降のSFブーム・アニメブームと連動して、作品に細かな世界設定を描きこむ傾向を育てた。このような傾向はのちに士郎正宗らによって徹底的に追究されていくことになる[27]。他面、人物の立体的な造形は80年代以降の士郎正宗や桂正和遊人などの描く美少女像を変化させ、「記号的な顔」と「写実的な肉体」を併せ持つ、日本の漫画表現独特の美少女キャラクターを生み出す一因ともなった[27]。上記に加え、老人を口元に皺を一本入れるというような記号的な方法でなく、骨格から皮膚のたるみまで老人として表現するような大友のデッサン力、建物を様々な角度から正確な遠近法で描き出す描写力、写真や映画などから影響を受けた光学的な表現方法[注 7]などは、以後の漫画界全体の画力を底上げすることになった[29]。この他にも、効果音を描き文字ではなくフキダシを使って描く方法や、超能力などの大きな力によって地面が割れたり、球状にへこんだりするといった表現方法など、大友が始めたことでスタンダードとなった手法は数多い[30]

大友は、それまでは平面的だったマンガやアニメの世界を、生身の骨格を持ったキャラクターたちや、構造を理解した上で描いた高層ビル群などの奥行きのある背景によって、リアルに立体化してみせた[31]。物事をテンプレに沿って描いたり漫画的表現をしたりすることを避け、物も人も現実に即した表現で描写[32]、キャラクターも全く美化せず、見たままのアジア人的な容姿(細い目、低い鼻、短い足、小さい乳房)で描いた[18][33][注 8]。そうすることにより、例え荒唐無稽なストーリーであっても本当にあるかもしれないと読者に思わせることが可能となっている[32]

このような大友のスタイルの斬新さは有名無名を問わず、多くの漫画家に多大な影響を与えた。『ショートピース』刊行前後よりその手法を模倣する漫画家が多数出現。その影響は浦沢直樹[34]守村大東本昌平などの当時の新人だけでなく、福山庸治谷口ジローといった既存の作家にも表れ、作風の変化をもたらした。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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