大友克洋
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アメリカ映画『クロニクル』(2012年)は監督のジョシュ・トランクが『AKIRA』の影響を口にし、カニエ・ウェストの「Stronger」のMVは映画『AKIRA』の世界観と映像をオマージュしたものになっている[36][37]。また日本の映画の音響面も大友作品以降、大きく進化することになった[31]

アニメーション監督としては安彦良和のファンで、『機動戦士ガンダム』ではなく、それ以降の『巨神ゴーグ』『ヴイナス戦記』などのアニメ作品が好き[4]。また、安彦とは以前は彼のスタジオによく遊びに行っていた仲でもある[4]
SFへの傾倒

デビュー以降、ATG映画のような若者の日常のバカバカしさを漫画にしていたが、1978年頃にメビウスやフランスのSF・ホラー漫画雑誌「メタル・ユルラン」の作家たちの存在を知ったことでバンド・デシネやヨーロッパのコミックに傾倒、いったんSFや西洋モノの作品に引き寄せられた[10][注 9]。そして、彼らの様にきちんと絵を描くならストーリーもしっかり作らないといけないと考えるようになり、ストーリー作りにも力を入れるようになった[10]。その後、軌道修正して自分なりの作風を確立する[10]

当時、日本の漫画業界は、劇画は『ゴルゴ13』のようなハードボイルド、一般漫画はスポーツ漫画と似たようなジャンルの作品ばかりだった。同じことをやりたくなかった大友は、若者のどうしようもなさを描くような漫画には飽きていたこともあり、子供のころから好きだったSFというジャンルを選んだという[4][10][注 10]

初めて描いたSF作品は、1979年発表の「Fire-Ball」[4]。それまでロングショットだけで作中人物を描いてきた大友が初めてアップを使った作品でもあり[注 11]、『童夢』『AKIRA』と続く80年代のSF作品への前触れとなった。1981年の「武器よさらば」は、SFというだけでなく、それまで実験的で渋めの作品が多かった大友がエンタメ志向でアクションを描いたことで驚かれた[38]
実写とアニメ制作

1980年代半ばからは漫画制作からアニメ映画や実写映画などの映像制作に活動の場を移していく。実写とアニメの制作については、分担作業である実写に対し、アニメは自分の頭の中でイメージが出来てしまう分、思い通りにならない現実とのギャップに悩まされるという[13]。また日本のアニメは、実写同様にスタッフの枠が細分化されているアメリカと違って監督の影響力が強く、作品のすべてにその色が出てくるので、どれくらい物事を勉強しているか、あるいは世界に目を向けているかが重要になってくると述べている[13]

アニメの場合、実写のフレームとレンズの選定に相当するレイアウトは、常に自分で決めるようにしている[39]
パロディと批評性

大友は写実的な作風を持つ一方で、作品において漫画作品を始めとする過去の他の作品のパロディ、引用も数多くなされている[23]

大友本人は、子供の頃に触れた好きな作品へのオマージュを作品にするというのが制作における基本だと語っている[4]。特に、手塚治虫石ノ森章太郎横山光輝という3人の漫画家を尊敬しており、自身の漫画でそれぞれオマージュを捧げている[4]。手塚へのオマージュは、『FIRE BALL』において、メインコンピューターがATOM(『鉄腕アトム』)と呼ばれているところ[4][注 12]。石ノ森については、超能力をテーマにした『童夢』において、主人公の名前エッちゃん(悦子)を、同じく超能力を持つ少女が主人公の『さるとびエッちゃん』から引用している[4][注 13]。横山は、代表作『AKIRA』の作品全体が横山のロボット漫画『鉄人28号』へのオマージュとなっている[4][注 14]。作品タイトルにもなっている登場人物アキラの「実験番号28」は『鉄人28号』にちなんでつけており、主役を含む主要キャラクターの名前も同作の登場人物から引用している[4]。また「戦時中に開発された究極の兵器が戦後の平和な時代に発見され、それを巡って物語が展開する」という物語の大筋も『鉄人28号』と同じであり[42]、そのことは大友自身が語っている[4]

1976年に掲載された短編『CHUCK CHECK CHICKEN』(漫画アクション増刊、1976年11月3日号)は当時大団円を迎えて日本中に大ブームを巻き起こした『子連れ狼』の全編パロディとなっており、駆け落ちした妻と間男を追って元香荻(こおぎ)藩粋応(すいおう)流の解釈人・拝三拝(拝一刀)が一子・団子郎(大五郎)と旅をする物語となっている[注 15]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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