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一例として、『沙石集』には、熊野阿闍梨地頭の娘に一目惚れして、会いに行こうとしたが、船上で寝た際、その後の13年間を夢の中で見てしまい、我に返って、修行に戻った話がある。

東洋で古来からの夢占いの解説書として用いられてきたものに真書、偽書などの諸説はあるものの、『周公解夢全書』や『神霊感応夢判断秘蔵書』(伝、安倍晴明著)などがあり、日本での夢占いの分野における参考書的存在や底本として用いられる場合がある。
夢に関する科学

夢をみるプロセスに関しては様々な科学者が提唱を行っており、オーストリア精神科医ジークムント・フロイトは夢は無意識の願望が現れたものと考えた[3]。また、DNA(デオキシリボ核酸)の二重らせん構造の発見で知られるイギリス科学者フランシス・ハリー・コンプトン・クリックは夢は脳にとって不要な記憶を消去している過程であると考えた[3]。1953年には急速眼球運動(rapid eye movement、REM)を伴う睡眠フェーズであるレム睡眠が発見され、夢は本格的な科学研究の対象として扱われるようになった[3]。しかし、レム睡眠の発見後もフロイトやクリックなどの仮説の科学的立証はできておらず、夢には未だに謎が多い[3]

一方で主にノンレム睡眠中に生じやすい脳波のデルタ波がノンレム睡眠とレム睡眠の切り替えに作用しており、学習や記憶形成に関与していることが明らかになっている[3]

夢の内容を直接読み出す研究も行われている[7][8]
分析
ヒトの場合、視覚の夢96%、聴覚の夢25%、動く夢19%、味覚の夢2%、触覚に関する夢1%、嗅覚の夢0%という結果になった[9]。別の調査では、視覚85%、聴覚69%、触覚11%、嗅覚7%であった[10]。このように圧倒的に視覚的な夢が多いのは、ヒトが視覚に頼る生活をしているためである。そのため、先天性全盲者は視覚ではなく視覚以外の感覚を感じる夢を見る[11]。嗅覚が発達している大脳皮質を持つ動物の場合は嗅覚の夢を見ている可能性がある[9]
心理学における夢の理解

深層心理学においては、無意識の働きを意識的に把握するための夢分析という研究分野がある。

夢分析の古典としてはジークムント・フロイトの研究、あるいはカール・ユングの研究が広く知られている。そこでは夢の中の事物は、何かを象徴するものとして位置づけられている。これらは神経症の治療という臨床的立場から発展しており、夢分析は心理的側面からの神経症の治療を目的とした精神分析のための手法の一つである[12]

フロイトは『夢判断』で、人が体験する夢を manifest dream(顕在夢)と呼び、それは無意識的に抑圧された幼児期由来の願望と、この願望と結びついた昼間の体験の残滓からなる夢のlatent thought(潜在思考)が、検閲を受けつつdream work(夢の仕事)によって加工され歪曲されて現れたものだ、とした[13][14]

ただし、フロイトによる夢分析に限ると、性的な事象に紐付けられた説明があまりに多く、そのまま現代人や日本人に適用するのは無理がある、とする説も多い(例えば、男性器を、果実女性器を、動物が性欲性行為を象徴するなどとされたりした。これには、当時の禁欲的な世相が反映されているとする説や、フロイト自身が抑圧された性的願望を抱いていたために偏った解釈をしているとみる説が多い)。

フロイト学派のエーリヒ・フロムは、象徴というのは人類がかつて使っていた言語だが現代人はそれを忘れてしまっているのであって、夢というのはその象徴という言語で語られる無意識の経験であるとし[4]、象徴の解釈によりその真の意味を理解することが可能だとする[4][15]

カール・ユングは、夢は、意識的な洞察よりもすぐれた智慧をあらわす能力があるとし[4]、夢は基本的に宗教的な現象だとした[4]


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