1999年(平成11年)の改正法施行により労働基準法における女性労働者の保護規定が廃止されたことに伴い、育児介護休業法に育児・介護を行う労働者への配慮規定の制度が追加された。
事業主は、小学校就学の始期に達するまでの子を養育、又は要介護状態にある対象家族(配偶者、父母、子、配偶者の父母、祖父母・兄弟姉妹・孫)を介護する労働者であって以下のいずれにも該当しないものが請求したときは、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、午後10時から午前5時までの間において労働させてはならない。この請求は開始・終了予定日を明らかにして開始予定日の1月前までにしなければならない(育児介護休業法第19条、第20条、同施行規則第61条)。事業主は、深夜業をしない旨の請求をし、又は深夜業をしなかったことを理由として、当該労働者に解雇その他不利益な取扱いをしてはならない(施行規則第20条の2)。請求の回数に上限はない。 船員(船員法第1条に規定する船員)には労働基準法上の深夜業の規定は適用されないが(労働基準法第116条)、別途船員法によって夜間労働の規定が置かれている。 船舶所有者は、18歳未満の船員を午後8時から翌日の午前5時までの間において作業に従事させてはならない。ただし、国土交通省令の定める場合において午前0時から午前5時までの間を含む連続した9時間の休息をさせるときは、この限りでない。この規定は、第68条1項1号の作業(人命、船舶若しくは積荷の安全を図るため又は人命若しくは他の船舶を救助するため緊急を要する作業)に従事させる場合には、これを適用しない(船員法第86条1項、2項)。 船舶所有者は、妊産婦の船員を午後8時から翌日の午前5時までの間において作業に従事させてはならない。ただし、国土交通省令で定める場合において、これと異なる時刻の間において午前0時前後にわたり連続して9時間休息させるときは、この限りでない。この規定は、出産後8週間を経過した妊産婦の船員がこの時刻の間において作業に従事すること又はこの規定による休息時間を短縮することを申し出た場合において、その者の母性保護上支障がないと医師が認めたときは、これを適用しない(船員法第88条の4第1項、2項)。第88条の4の規定は、第68条1項1号の作業に従事させる場合には、これを適用しない(船員法第88条の5)。
日々雇用される者
当該事業主に引き続き雇用された期間が1年に満たない労働者
1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
所定労働時間の全部が深夜にある労働者
当該請求に係る深夜において、常態として当該子を保育又は当該対象家族を介護することができる同居の家族等がいる場合の当該労働者
「常態として当該子を保育又は当該対象家族を介護することができる同居の家族等」とは、16歳以上であって以下のいずれにも該当する者とする(施行規則第60条)。
深夜に就業していないこと(深夜の就業日数が1月について3日以下の者を含む)
負傷、疾病又は心身の障害により請求に係る子又は家族を保育・介護することが困難でないこと
6週間(多胎妊娠の場合にあっては14週間)以内に出産する予定であるか又は産後8週間を経過しない者でないこと
船員法による規定
第86条、第88条の4の「国土交通省令の定める場合」は、船舶が高緯度の海域にあって昼間が著しく長い場合及び所轄地方運輸局長の許可を受けて、海員を旅客の接待、物品の販売等軽易な労働に専ら従事させる場合をいう(船員法施行規則第58条1項)。船舶所有者は、この許可を受けようとするときは、船舶ごとに左の事項を記載した申請書2通を提出しなければならない(船員法施行規則第58条2項)。
船舶所有者の氏名又は名称及びその住所又は主たる事務所の所在地
船舶の種類、名称、総トン数、用途(業種)及び航路(従業制限)
職務の名称及び内容
労働の開始及び終了の時刻
許可を受けようとする期間
脚注[脚注の使い方]^ もっとも、労働基準法施行以来、厚生労働大臣(施行当初は労働大臣)が「午後11時から午前6時まで」を認めた実例はない。
^ a b 「新基本法コメンタール第2版 労働基準法・労働契約法」日本評論社、p.218
^ 労働基準監督年報
^ 現在、「演劇の事業に使用される児童」については、当分の間「午後9時から午前6時」が認められている(平成16年11月22日基発1122001号)。
^ 平成11年改正直前の第64条の3第1項但書及び女子労働基準規則で定められていた、女子の深夜業禁止の適用除外者は以下の通り。また非常事由による時間外労働・休日労働が深夜に及んだ場合も適用除外とされていた。
農林・畜産・水産、保健衛生、接客・娯楽、電話交換の業務
女子の健康及び福祉に有害でない業務で命令で定めるもの
指揮命令者、専門業務従事者(労基法制定当初は女子は管理監督者であっても深夜業は認められていなかった)
業務の必要上深夜業が必要として命令で定める業務(勤務時間が一日6時間以内)
タクシー・ハイヤーの運転手(本人の申出と所轄労働基準監督署長の承認が必要)
改正前の女子則第4条で「女子の健康及び福祉に有害でない業務」として女性の深夜業務が認められていた例として、航空機の客室乗務員(昭和27年9月20日基発675号)、女子寄宿舎の女子管理人(昭和27年9月20日基発675号)、映画の撮影の業務(昭和61年3月20日基発151号)、放送番組の制作の業務(昭和61年3月20日基発151号)、警察の業務(昭和61年3月20日基発151号)、旅行業法による旅程管理業務、郵便業務、成田空港における航空管制の業務、消防の業務等。
改正前の女子則第3条で「専門業務従事者」として女性の深夜業務が認められていたのは、公認会計士、医師、歯科医師、獣医師、弁護士、一級建築士、薬剤師、不動産鑑定士、弁理士、社会保険労務士、新商品・新技術の開発の業務、情報処理システムの分析・設計の業務、新聞・出版の取材編集業務、放送番組の取材編集の業務、デザインの考案の業務、放送番組・映画等のプロデューサー・ディレクターの業務。