胴部は縦に長く、数多くの体節が並び、そのほぼすべてが同規的で、原則として1胴節に同型の歩脚型関節肢(脚)が1対ずつ出ている。形態や機能上の特化はほぼせず[9]、例外は繁殖用の生殖肢(gonopods)[10][11][12]・ムカデの顎肢(forcipules、maxillipeds)[13]と曳航肢(ultimate legs)[14][15]・コムカデの紡糸腺(spinnerets)[4]など僅かな例のみ挙げられる。ヤスデの場合、ほぼすべての胴節が2節ずつセットで重体節(diplosegment, diplosomite)に癒合するため、外見上では1胴節に2対の脚があるのように見える[16][12]。
いずれにせよ、この胴部は他の多くの節足動物に見られる顕著な機能的分化はない[9]。他の節足動物では胸部と腹部、あるいは前体と後体などを区別し、それぞれ異なった形態および付属肢を持つのが通例である。現生節足動物の中で多足類に似た例は、海底洞窟に産する甲殻類のムカデエビ類のみがある程度である[17]。この同規的な体節制は、節足動物の祖先形質に似ると考えられる[9]。
他の特徴については群によって異なる。例えば胴部の生殖口は尾端にあるもの(ムカデ)や腹面の前半部にあるもの(その他)[18]がある。胴部の尾端、例えば尾節(telson)の構造もそれぞれである[15][4][19][12]。
生態と発育ヤスデの1種 Nemasoma varicorne の増節変態
護卵中のムカデ
コムカデの1種Scutigerella immaculata の卵(左)、孵化直後の幼生(中)と成体(右)
現生のすべてが陸上生活で、真の水生種はない。小型のものは、土壌動物として生活するものが多い。多くのは腐植食性であるが、ムカデは肉食性である。
幼生には特別な成長段階はなく、明確な変態は見られないが、成長につれて体節と歩脚が増える、いわゆる増節変態(anamorphic development)の例が多い。変態過程に3対の歩脚をもつ初期段階がヤスデとエダヒゲムシに見られる。ムカデの整形類(オオムカデ目、ジムカデ目)は例外的に卵中にて変態が完了し、自由生活の段階においては増節変態はみられない[20]。
一部の群、例えば整形類のムカデからは卵や幼生を保護する行動が見られる[21]。
進化と化石記録Latzelia primordialis 、化石ゲジ類ムカデの1種
Pneumodesmus newmani
全長2m以上に及ぶアースロプレウラ Arthropleura armata の復元図
多足類の化石は希少で、その多くがヤスデとムカデであり、特にコムカデとエダヒゲムシは琥珀のみによって知られる[1]。多足類の共通祖先は、およそカンブリア紀中期で他の節足動物と分岐したと考えられる[1]。カンブリア紀からデボン紀にかけて生息したユーシカルシノイド類(Euthycarcinoidea)は、口器と複眼の細部構造の類似から基盤的な多足類とも考えられる[22]。
多足類は初期の陸上生活を行った動物として知られている化石記録を含む。これは Wilson & Anderson (2004) に記載された Pneumodesmus 属のヤスデである。原記載はこれをシルル紀中期後半の化石と考え、従って既知最古の陸生動物と見なされた[23]。しかし Suarez et al. (2017) の再検証により、これは直後のデボン紀前期のものと見直された[24]。ムカデの中ではゲジ類が既知最古の化石記録をもち、シルル紀後期まで遡る[25]。
大型節足動物が多く出現する石炭紀では、多足類からも巨大な化石種が現れた。化石ヤスデ類だと考えられるアースロプレウラ類の1属アースロプレウラ(Arthropleura)は、既知最大級の節足動物の1つとして知られ、全長およそ2メートル以上に達する[1][2]。 古典的な見解では、多足類は六脚類(広義の昆虫類)に対して側系統群を成すと考えられた[26]。これは本群における多くの六脚類らしき形質に因んでおり、例えば第2触角と大顎髭の欠如・気管と気門から構成される呼吸器・単枝型の脚・マルピーギ管の位置・ヤスデなどに見られり3対の脚をもつ幼生段階・コムカデに見られる下唇のように癒合した第2小顎などの類似点が挙げられる[27][28][29]。こうした多足類は、長い間に六脚類の近縁と考えられ、この2群は無角類
分類
系統関係
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多足亜門
汎甲殻類