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髄鞘をもつ末梢ニューロンの模式図。軸索にシュワン細胞が幾重にも巻き付くことによって髄鞘が形成されている。
樹状突起細胞体軸索核ランヴィエ絞輪軸索末端シュワン細胞ミエリン鞘
多発性硬化症(たはつせいこうかしょう、英: multiple sclerosis; MS)は、中枢性脱髄疾患の一つで、神経のミエリン鞘が破壊され脳、脊髄、視神経などに病変が起こり、多様な神経症状が再発と寛解を繰り返す疾患。日本では特定疾患に認定されている指定難病である。
病名は、神経を包む組織(ミエリン鞘)が破壊されて生じる硬化が多数の領域で発生することに由来している[1]。 地域にての発生差があり、北米、北欧、オーストラリア南部では人口10万人当たり30?80人ほど罹患しているが、アジアやアフリカでは人口10万人当たり4人以下で、罹患率に大きな差があることが特徴である。南米、南欧、オーストラリア北部はその中間である。全体としては高緯度のほうが罹患率は高く、日本国内でも北海道と九州では北海道のほうが高い。2017年に行われた全国臨床疫学調査では、患者数は全国で18,000人、有病率は14.3人/10万人と推計された。2023年時点では患者数は2万人を超えていると推測される[2]。 発症年齢においても罹患のピークは30歳頃であり、約80%が50歳までに発症する。また、女性に発症が多い。 さまざまな説が唱えられているが未だ原因は不明である。このうち遺伝、自己免疫、ウイルス(特にエプスタイン・バール・ウイルス(EBウイルス)などの感染の可能性が高いと考えられている。
疫学
原因
遺伝
@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}アジア・アフリカ系と欧米系で罹患率が大きく異なることから遺伝的要因が示唆されている。罹患率の高い地域に住む先住民の罹患率が高いわけではないということは遺伝説を支持する要因だが、罹患率の少ないとされる日本人やアフリカ原住民でも、有病率の高い地域に移住した場合、その発病頻度が高くなることが知られている。家族内での発症は決して高いわけではなく、複数の遺伝子が発症に関わると思われている[要出典]。
感染
再発と寛解を繰り返すという病態からウイルス感染が疑われている。しかし、今まで報告されたウイルスは数多くあるものの、どれも特異的な関連ははっきり示されてはいない(最近では以下に述べるEBウイルスとの特異的な関連が示唆されている)。2016年に順天堂大学らの研究者が「ヨーネ菌(MAP; Mycobacterium aviumsubsp. aratuberculosis) の関与が示唆される」とする研究成果を発表している[3]。多発性硬化症との関連が最もよく報告されているウイルスは、人間の9割が感染しているヘルペスウイルスの一種 エプスタイン・バール・ウイルス(EBウイルス)である。血清中のEBウイルス抗体価と多発性硬化症の発生リスクが強い相関を持つとする報告が多くある[4][5][6][7][8][9][10][11][12][13][14][15][16][17][18][19][20][21][22][23][24][25][26][27][28][29][30][31][32]。