脊椎、脊髄の外傷の診療ではバイタルサインの確認、脊髄損傷の有無の確認、合併損傷の有無の確認という手順を踏む。脊髄損傷の有無は麻痺の高位や程度を評価することでわかる。これは上下肢の知覚検査と筋力検査で明らかになる。C5は肩の外転、肘屈曲でC6、C7は手関節の動き、C7、C8、T1は手指の動きで評価できる。具体的にはC6では手関節の背屈、C7では手関節の掌屈と手指の伸展、C8は手指の屈曲、T1は手指の内転、外転で評価できる。L3は膝伸展、L4は足関節の背屈、L5は趾伸展、S1は足の外反で評価する。深部腱反射では上腕二頭筋反射がC5、腕橈骨筋反射がC6、上腕三頭筋反射がC7である。膝蓋腱反射がL4、アキレス腱反射がS1となる。感覚ではC5で上腕外側、C6で前弯外側、母指、示指、C7が中指、C8が環指、小指、前腕内側。T4が乳首、T7が剣状突起、T10が臍部、T12が鼡径部である。L4が足の内側縁であり、L5が足背中央、S1が足の外側縁となる。合併損傷では頭部外傷、胸腹部外傷、骨盤外傷が重要である。 最も生命を脅かすのはABC(気道・呼吸・循環)の阻害である。詳細はJATECの項を参照されたい。時間的に見て早期に死亡原因となるのは出血であるが、これは単に失血のみならず、心タンポナーデを始めとした各種の内出血によるタンポナーデによるものもあれば、肝臓・脾臓・大動脈が損傷すれば胸腔・腹腔に大量に出血して死に至る。目に見える外出血の有無にとらわれては重傷度の判断はできない。 また、脊髄損傷は受傷直後は無症状である場合が少なくない。受傷後に傷病者自身や周囲の人間が不用意に動かすことによって脊椎損傷が脊髄損傷に発展する。この場合、呼吸麻痺や脊髄原性ショックによる心停止の危険があるのみならず、生存しても機能予後が大きく低下する。詳細はJPTECを参照のこと。 感染症は受傷の2?3日後から発現する。創傷面からの感染は勿論のこと、肺炎(人工呼吸器を使用している場合)や皮膚炎、さらに安静によって生じる褥瘡からの感染も無視できない。 コンパートメント症候群や挫滅症候群(クラッシュ症候群)は、その兆候に注意することである程度は救命できるが、「それが予測でき、かつ措置を講じた」としても救命できない例も多い。阪神・淡路大震災やJR福知山線脱線事故において、24時間以上を経てようやく救出されたにもかかわらず、救出後にクラッシュ症候群により死亡した例が典型的である。 東京医科歯科大の高山渉らの研究で[2]血液型O型では重症の外傷の場合に死亡率が高く32%となり、その他の血液型の11%より高かった[3]。 以下の方法は、致命的外傷ではない場合が前提であり、重症外傷は対象としていない。 出血があれば、水道水で洗浄し、清潔な布で直接圧迫する。四肢や指の根元を縛る方法は、適切に行わないと、動脈を駆血せず、静脈のみの駆血する事となり、鬱血し、出血が助長される。 開放創があれば、その汚染度・深さに応じて、洗浄や縫合をする。靭帯・骨・腱・筋肉・神経・血管の損傷があれば、損傷に応じて、処置をする。
重症外傷の予後
軽症?中等症外傷患者の診かた
病院前詳細は「止血」を参照
病院での診療
出典^ 当科の外傷治療について
^ けがで死亡「O型多い」 出血リスク大か
^ Takayama W, Endo A, Koguchi H, Sugimoto M, Murata K, Otomo Y (May 2018). “The impact of blood type O on mortality of severe trauma patients: a retrospective observational study”
参考文献
研修医当直御法度 ISBN 4895902668
CBR 手・足・腰診療スキルアップ ISBN 4902470063
問題解決型 救急初期診療 ISBN 426012255X
骨太! Dr.仲田のダイナミック整形外科(上巻)ISBN 4903331288
骨太! Dr.仲田のダイナミック整形外科(下巻)ISBN 4903331296
関連項目
救急処置
救急医療
外傷病院前救護ガイドライン
外傷初期診療ガイドライン
頭部外傷
下肢外傷
重体