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欧米・西アジアにおける定義

西アジアから西ヨーロッパ、北アメリカにかけての広い地域では、夏とは夏至から秋分までの1年の1/4の期間を指すのが伝統的な定義である。これはメソポタミア文明において成立した西洋占星術の伝統を受け継ぐもので、西欧占星術においては、太陽春分点を通過する(太陽黄経0度)時期をの始まりとし、これを新年として祝っていた(正確には太陽太陰暦により、春分に近い新月の日を新年とした。ユダヤ暦を参照)。この考え方によれば、夏とは、太陽が黄経90度から180度に至るまでの期間、すなわち巨蟹宮から処女宮を通過する期間となる。近代の天文学における「北半球の夏」の正式な定義も、やはりこれに従っている。

なお、ケルト人など西ヨーロッパの他の民族は、別の暦を持っていたらしいことが知られている。
中国における定義

これに対して、中華文明においては、夏 (xia) とは立夏から立秋までの1年の .mw-parser-output .frac{white-space:nowrap}.mw-parser-output .frac .num,.mw-parser-output .frac .den{font-size:80%;line-height:0;vertical-align:super}.mw-parser-output .frac .den{vertical-align:sub}.mw-parser-output .sr-only{border:0;clip:rect(0,0,0,0);height:1px;margin:-1px;overflow:hidden;padding:0;position:absolute;width:1px}1⁄4 の期間として一貫して定義されてきた。これは、中国の暦法においては、太陽の南中高度が最も低くなる冬至を、「冬」の中央であると定義して、十二支最初の月の基準点(朔旦冬至)としたことに由来する。この考え方によれば、夏とは、夏至を「夏」の中央とする1年の 1⁄4 の期間ということになる。なお、中国式の太陽太陰暦(いわゆる旧暦)においては、立夏から立秋の期間に最も近い3か月または4か月(閏月の場合)の間、すなわち4月から6月までの間が夏となる。

しかし、太陽エネルギーを最大に受ける時期は夏至であっても、地球が暖まるまでには時間がかかるので、この定義によれば、「夏」が気温の最も高い時期とずれる問題が生じる。しかし、黄河文明発祥の地である華北地方は暖まりやすく冷めやすい大陸性気候であって、立秋よりやや前に気温のピークが来て(小暑大暑立秋には気温の低下を実感できるため、中国北部においては、辛うじて語義の矛盾は免れている[4]
気候と自然夏のラベンダー畑(富田ファーム)夏を代表する風物のひとつアサガオ海野宿

(北半球の)夏には、太陽エネルギーの放射が北半球に偏るため、ハドレー循環フェレル循環を中心とする大気循環も全体として大きく北側に移動することになる。中緯度地帯においては、亜熱帯高気圧が北上することになるが、そのもたらす気候は、大陸西岸と大陸東岸で対照的な様相を示す。大陸西岸では、亜熱帯の砂漠地帯を形成する亜熱帯高気圧がそのまま北上して、地中海性気候の地域に高温と乾燥をもたらす。都市によっては、亜熱帯高気圧が西岸海洋性気候の地域まで北上することがあり、西ヨーロッパなどに猛暑と旱魃をもたらす。他方、大陸東岸では、夏期のモンスーンが北上して、熱帯地方の海上から大量の湿気を運び、温暖冬季少雨気候温暖湿潤気候の地域に高温多湿と多雨をもたらすのが一般的である。日本の多くの地域では、8月を中心に、亜熱帯高気圧の一つである太平洋高気圧に広く覆われてしまい、高温多湿ながら晴天が持続することが通常である。日本における稲作は、この太平洋高気圧による高温と晴天の到来を前提として成立しているため、太平洋高気圧が十分に北上しない場合には、東日本太平洋側を中心に稲作が大打撃をうける(冷夏)。また、南アメリカを除く大陸東岸においては、晩夏を中心に、亜熱帯高気圧の縁に沿って移動する台風ハリケーンサイクロンに襲われることがある。

このように、大陸東岸の夏は高温多雨の時期であり、動植物の活動が最も盛んな時期となる。東アジア北アメリカ東部を原産とする植物は、夏を生育の中心時期とするものが大変に多い。他方、大陸西岸においては、夏は高温であるが乾燥に襲われる時期でもあり、特に小さな植物にとっては生育の難しい時期でもある。地中海沿岸や西アジアアフリカ南端部のケープタウン周辺を原産とする草本を中心に、夏を休眠時期とする植物も多い。

農業従事者以外(もしくは主にその人々で構成される社会=主に都市社会)にとっては夏は別の意味を持つ。主に休息の時期(その暑熱な気候の回避または逆に享受)であるが、それ以外の意味を夏に持たせる例も多い。詳細は「人の生活との関わり」で後述。

夏にとれるものはを参照。
日長との関係

夏は日長が長くなる時期でもある。南中高度も高くなるから、日照も強くなり、気温が高くなるのもそのためである。極地方では白夜が見られる。
人の生活との関わり夏の海収穫された夏野菜

中高緯度の多くの国にとって、夏は最も活動的な時期である。

農業面でも重要な季節である。温帯では「実りの季節」とは夏を終えた秋を指すことが通例である。ただし、大陸東岸においては穀物・果実を含めたほとんどすべての作物の「収穫の時期」となるが、大陸西岸では秋とはもっぱら果物の収穫時期であり(フランス革命暦「葡萄月」)、夏の初めが麦類の収穫を祝い感謝する時期である(キリスト教ユダヤ教の「ペンテコステ」)
日本

一般には、他の季節に比べて人々が行動的になり、戸外活動などを積極的に行う時期であるが、真夏の過酷な暑さを避け屋内に籠もる人々もいる。全般的には、夏の初期を中心に消費活動も盛んになるとされるが、晩夏の時期は消費が鈍る時期であるとされる。

屋外活動・旅行などは、梅雨の時期には、その悪天候から著しく制約されるものの、九州以北で梅雨が明け、学校が夏休みに入る7月下旬から活発になり、一般のサラリーマンの多くが休暇を取る時期である8月中旬(東京以外の大半の地域で月遅れお盆の時期となる)を中心にピークを迎える。8月中旬を中心として、交通機関も激しく混雑する。

衣類のファッションについても、高温のため不可避的に肌の露出が増えることから、婦人服を中心に世間から注目されることが多く、その露出・開放感ゆえのアピール力から、後世に記憶が残るファッションが生まれることもある。

しかし、休暇を勉強に費やす必要がある受験生など、その熱気から距離を置かざるを得ない人もいる。日本企業の夏期休暇は西ヨーロッパ諸国より短い上に、関東地方から西では、夏期休暇にはまだ遠い7月半ば過ぎには梅雨が明け、酷暑の時期が到来してしまうことから、社会人にとっては「暑い中で仕事をしなければならない時期である」というイメージもまた強い。平成後期頃からクールビズなど勤務中の涼しい服装が奨励されており、徐々に国内に浸透しつつあるものの、未だそれとは無縁で真夏の戸外でもスーツネクタイ着用を余儀なくされる人も少なからずいる。

短い夏期休暇の時期を、子どもの世話に追われる父母もまた多い。高温と日照に恵まれる夏は、作物の生長と同時に雑草の繁茂が著しく、除草技術や除草手段が未発達であった時代の稲作農家にとっては炎天下での除草作業に追われる厳しい季節であった。
農業・伝統行事

農業においては、農閑期と農繁期の両方の側面を持つ季節である。稲作では梅雨期の苗の成長から盛夏期の稲の開花に至るまで重要で、冷害・干害に警戒を怠れないが、「田植え」と「稲刈り」の間の期間にも位置する。イネの光合成が最も盛んな時期でもある。この時期次第で収穫が決まるとも言える。害虫に対しては虫送りの行事を行う地域があり、これを七夕の行事として行っている場合も多い。水不足も危険であるため、雨乞いの儀式は、七夕やお盆の行事として行われた。

夏野菜の収穫期である。農業主体の地域の夏の行事の時期や内容は、この農作業のサイクルに影響を受けたところが大きい。
夏の行事夏の風物 打ち上げ花火積丹半島

天神祭祇園祭など各地の祭礼

七夕

お盆

海開き海水浴スイカ割り

夏休み


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