時計が変更される期日は地域や年によって異なるため、地域間の時差も1年を通して変化する。たとえば、中央ヨーロッパ時間は、3月と10月・11月の数週間を除いて、通常、北アメリカ東部時間よりも6時間進んでいる。一方、イギリスとチリ本土は、北半球の夏には時差にして5時間の隔たりがあるが、南半球の夏には3時間、年に数週間は4時間の時差にまで縮まることになる。1996年以来、ヨーロッパのサマータイム(英語版)は3月の最終日曜日から10月の最終日曜日まで実施されているが、それ以前は欧州連合の域内で規則が統一されていなかった[53]。2007年以降、アメリカ合衆国とカナダの大部分では、3月の第2日曜日から11月の第1日曜日まで、一年のほぼ3分の2の期間[54]、サマータイムを実施している[55]。さらに、北半球と南半球では、春と秋が半年ずれているため、サマータイムの開始日と終了日がおおよそ逆になる。たとえば、チリ本土では10月の第2土曜日から3月の第2土曜日まで、現地時間の当日24:00に移行する手順でサマータイムを実施している[56]。アメリカ合衆国、オーストラリア、カナダ、メキシコ(過去にはブラジルなども)といった一部の国では、国内の地域ごとにサマータイム制を管轄しており、一部の地域でサマータイムが実施されていても、他の地域では実施されない場合もある[57][58]。
毎年毎年、時計の切り替えを行う期日は、政治的または社会的な理由により、変更されることもある。1966年に制定された統一時間法(英語版)により、アメリカ合衆国のサマータイム実施期間は6か月とすることが正式に決定された[59](それ以前は地域ごとに宣言されていた[60])。この実施期間は1986年には7か月に延長され[59]、2005年には8か月までの延長が決定した[61]。2005年の延長の背景には、ハロウィン(10月31日)をサマータイム期間内に含めることで利益を上げようとする製菓業界のロビー活動があったとされる[62]。最近の歴史を顧みると、オーストラリアの各州では、地域ごとに異なる現地時間に時計の時刻が変更されるだけでなく、時には異なる日に変更されることもあった[63]。たとえば、2008年には、サマータイムを採用しているほとんどの州では10月5日に時計を進めたが、西オーストラリア州では10月26日に時計を切り替えた[63]。 この節は検証可能な参考文献や出典が全く示されていないか、不十分です。出典を追加して記事の信頼性向上にご協力ください。(このテンプレートの使い方)
目的と効果
出典検索?: "夏時間"
以下のような効果が期待できると考えられている。 この節は検証可能な参考文献や出典が全く示されていないか、不十分です。出典を追加して記事の信頼性向上にご協力ください。(このテンプレートの使い方)
明るい時間を有効に使えるので照明の節約になる。
日の出とともに起きるのは、昼行性の生物には適した生活スタイルである。サマータイムを利用している地域は緯度の差が大きい。
交通事故や犯罪発生率の低下。
活動時間が増えることによる経済の活性化。
午後の日照時間が増えることによる余暇の充実。
夏時間導入に対する反対論
出典検索?: "夏時間"
夏時間の導入については反対論も存在する。夏時間に対する反対意見としては、以下のようなものが主張されている。
健康への悪影響(次項を参照)。
カレンダーと時計機能を利用する各種システム(OSやソフトウェア、家電製品の時計機能など)を更新しなければならないなど、移行コストがかかる。
時刻の切り替え時に一時的に交通事故が増加するという報告もある。カナダブリティッシュコロンビア州では夏時間導入直後の月曜日には、変更直前の月曜日より交通事故が平均で23 %増加するとして注意を呼びかけている[64]。
スイスや欧州連合(EU)では、省エネルギーの効果が乏しく、健康に悪影響があるという理由で、市民の8割が廃止を望んでおり、EUでは廃止の検討が進んでいる[65][66]。 夏時間は健康へ様々な影響を及ぼす。労働時間が一定している社会では、夏時間の導入により午後の明るい時間に戸外での運動が増える傾向にある[67]。また日光を浴びる時間が変わるので、居住地や生活時間によっては皮膚内のビタミンD生成を促す等のメリットがある。しかし、皮膚がんの恐れを増す場合もある[68]。夏時間は起床時間を早めるため鬱状態の改善につながるとの指摘もあるが[69]、その逆を指摘する者もある[70]。また夏時間への変更直後の2日間では虚血性発作の発生率が増加するが、1週間後には平常値に戻る[71]。 時計の時間を早めることは心臓発作のリスクを10%増加させ[72]、睡眠時間を減少させると同時に睡眠の効果を低下させる[73]。概日リズムの季節適応には深刻かつ数週間に及ぶ影響を与える[74]。2008年の研究によれば、夏時間への移行直後の数週間で男性の自殺率は増加するが、季節適応後にはこれらの関連性は大幅に減少する[75]。2008年のスウェーデンの研究によれば、夏時間の最初の3週間において心臓発作は顕著に増加し、夏時間終了後の3週間では顕著に減少する[76]。一般に夏時間終了時の夜は「1時間長く眠れる」といわれるが、2013年の論説によれば実際に人々が長く眠っているというエビデンスはほとんどない。また同じ文献によれば、夏時間開始時には睡眠時間を1時間奪われるため睡眠不足となり、その影響は少なくとも1週間持続する[77]。2015年には2人の心理学者が、睡眠への悪影響を理由の一つとして夏時間の中止を提言している[78]。 カザフスタン政府は2005年に夏時間を廃止する際、時刻変更に起因する健康への影響を理由として挙げている[79]。2011年3月には、ロシア大統領ドミートリー・メドヴェージェフが「時計の針を動かすことによるストレス」が、ロシアが夏時間を通年維持する理由であると述べ、政府関係者は自殺の年次的な増加について指摘している[80]。 夏時間で一般に予期されていなかった悪影響として、夜明け前に生じるラッシュアワーと自動車の排気ガスが日中よりも過酷な大気汚染を生じさせるという指摘がある[81]。 アメリカのワシントン大学とヴァージニア大学の研究者は2017年に、夏時間によって睡眠時間が減少した判事は判決の刑期が長くなる傾向を報告している[82]。
健康への影響