変形菌
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アメーバ細胞は、二分裂によって増殖する[3][6][8][11]。この二分裂において、核分裂は開放型(核膜が消失する)であり、極には中心体が存在する[6]染色体は小さく、確認が難しい[3]。核ゲノム塩基配列はモジホコリ(モジホコリ目)の無菌株においておおよそ解読されているが、繰り返し配列が多く、解析を困難にしている[3]リボソームRNA遺伝子は染色体上には存在せず、プラスミド上に多コピーが存在する[3]。生活環を通じて、変形菌のミトコンドリアは管状クリステをもつ[15]

不適な環境下では、アメーバ細胞はガラクトサミンを含む細胞壁を形成し、ミクロシスト (microcyst) とよばれる耐久細胞になる[6][16]。好適な環境になると、ミクロシストは発芽してアメーバ細胞または鞭毛細胞を生じる[6]

変形菌の中には、単核のアメーバ鞭毛細胞である時期のみをもち、少なくとも培養下では変形体子実体を形成しないものも知られている。このような生物は、Hyperamoeba に分類されていた[4][17]分子系統学的研究からは、Hyperamoeba とされる生物が多系統群であり、モジホコリ属やカタホコリ属、ムラサキホコリ属などさまざまな系統の変形菌を含んでいることが示されている(2020年現在では Hyperamoeba は、モジホコリ属のシノニムとされている)[18]。このことは、変形体・子実体形成能の二次的欠失が、変形菌の中で独立に何度も起こったことを示唆している[4][19]
変形体

アメーバ細胞または鞭毛細胞は配偶子としても機能し、対応する交配型の細胞が合体して複相の接合子となる[5][6][7][8][11]。多くの変形菌では、交配型は多型の1遺伝子座で決定されているが、複数の遺伝子座からなる交配型をもつものもいる(モジホコリなど)[6][11][16]。合体する配偶子の間に形態・大きさの差異はなく、同形配偶子である[7]

接合子はアメーバ細胞となり、細胞質分裂を伴わない核分裂を繰り返し、多核の原形質塊である変形体 (plasmodium[注 4], pl. plasmodia) になる[5][6][7][8](下図4a, b)。ただし上記のように、アメーバ細胞が合体を経ずに直接、変形体に発達することもある[9]。変形体は細胞壁をもたないが、しばしばガラクタンを含む粘液鞘 (slime sheath) で覆われている[6][7][8]。変形体中では、多数のがほぼ同調して核分裂する[6]。結果として、変形体は億単位の核をもつこともある[5]。この核分裂は閉鎖型(核膜が維持される)であり、極には中心体が存在しない[6]。変形体はふつう目立つ原形質流動を示し、しばしば規則的な流動方向の逆転が見られる[6][7][20]。このような原形質流動は、アクチン-ミオシンカルシウムイオンが関与している。.mw-parser-output .tmulti .thumbinner{display:flex;flex-direction:column}.mw-parser-output .tmulti .trow{display:flex;flex-direction:row;clear:left;flex-wrap:wrap;width:100%;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .tmulti .tsingle{margin:1px;float:left}.mw-parser-output .tmulti .theader{clear:both;font-weight:bold;text-align:center;align-self:center;background-color:transparent;width:100%}.mw-parser-output .tmulti .thumbcaption{background-color:transparent}.mw-parser-output .tmulti .text-align-left{text-align:left}.mw-parser-output .tmulti .text-align-right{text-align:right}.mw-parser-output .tmulti .text-align-center{text-align:center}@media all and (max-width:720px){.mw-parser-output .tmulti .thumbinner{width:100%!important;box-sizing:border-box;max-width:none!important;align-items:center}.mw-parser-output .tmulti .trow{justify-content:center}.mw-parser-output .tmulti .tsingle{float:none!important;max-width:100%!important;box-sizing:border-box;align-items:center}.mw-parser-output .tmulti .trow>.thumbcaption{text-align:center}}4a. 変形体4b. 変形体

変形菌に見られる変形体は、以下の3型に類別される[3][4][6][11][21]。ただし、中間的なものも見られる[6][7][21]。可視変形体以外は、野外で確認するのは難しい[3]

原変形体(プロトプラスモディウム[22]; protoplasmodium, pl. protoplasmodia)成長しても微小であり、の数も少ない。網状構造や規則的な原形質流動は見られない。ふつう1個の子実体を形成する。コホコリ属(コホコリ目)、ハリホコリ属(ハリホコリ目)、クビナガホコリ属(クビナガホコリ目)などに見られる[23]

透明変形体(アファノプラスモディウム[22]; aphanoplasmodium, pl. aphanoplasmodia)成長すると、細い原形質糸からなる粗い網状構造となる。原形質は均質で規則的で速い原形質流動を示す。薄く、色は透明、子実体形成直前に着色する。粘液鞘を欠く。ふつう分割して子実体になる。ムラサキホコリ属やカミノケホコリ属(ムラサキホコリ目)などに見られる[24]

可視変形体(ファネロプラスモディウム[22]; phaneroplasmodium, pl. phaneroplasmodia)(図4a-c)成長すると、網状で縁辺が扇形の構造となる。大型であり、幅が 1 m 以上になるものもいる。原形質は顆粒状で規則的で速い原形質流動を示し、秒速 1 mm 以上に達することがある[3]。色はふつう白色から黄色、ときにオレンジ色、褐色、赤色、灰色、緑色、青色など。色は環境条件で変わることもある[20]


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