変形菌
[Wikipedia|▼Menu]
□記事を途中から表示しています
[最初から表示]

変形体の通った跡には、粘液質が残されることがある[6][7]。若い変形体は、同じ遺伝型の他の変形体と融合して成長することがある[6][7][11][20]。また変形体を分断しても、それぞれ独立した変形体となる[7][20]。変形体は、細菌酵母、微細藻、胞子、生きていない有機物片、さらに変形菌のアメーバ細胞や鞭毛細胞などを食作用によって取り込み、細胞内消化する[3][6][7][11]。また少なくとも一部の変形菌は、消化酵素を分泌してキノコなどを細胞外消化し、可溶性有機物を吸収することができる[3][6]モジホコリなどの変形体はオートミールを用いて培養できるが、この際に変形体はオートミールを細胞外消化していると考えられている[20]4c. モジホコリ(モジホコリ目)の変形体の運動4d. イタモジホコリ(モジホコリ目)の菌核

乾燥や高温、低温など不適条件になると、変形体は菌核 (sclerotium, pl. sclerotia) とよばれる構造に転換する[6][7][8][11][20](上図4d)。菌核は、厚い壁で囲まれた小さな(直径 10?25 μm)多核細胞 (spherule, macrocyst[注 5]) の集合体である[6][7]。菌核は耐久構造であり、長期間休眠することができる(ただし一般的に胞子ほど長期間ではない)[11]。環境が好転すると、菌核は発芽して融合し、再び変形体になる[6]
子実体

飢餓や乾燥、温度、光刺激などによって、変形体子実体形成を開始する[5][6][7][8]。子実体形成は不可逆的であり、形成途中から変形体に戻ることはない[6][7]。1個の変形体は、1個または多数の子実体を形成する[6]。変形体はふつう子実体形成時になって初めて人目に触れる場所に出現するが、大きな変形体として現れるもの(モジホコリ類など)や、変形体が分断化して現れるもの(アミホコリ類など)がいる[25]。子実体形成にかかる時間は短く、ふつう24時間以内に完了する[7][20](下図5a)。ススホコリ(モジホコリ目)の子実体形成5a1. 変形体5a2. 形成中の子実体5a3. 子実体(着合子嚢体)

子実体は、単独に生じるもの(孤生)や、複数がそれぞれかなり離れて形成されるもの(散生)、複数がまとまって生じるもの(群生)がある[26]。子実体が密生した小群に分かれて生じているものは、束生ともいう(ムラサキホコリ属など)[26](下図5b)。5b. サビムラサキホコリ(ムラサキホコリ目)の束生した子実体5c. トゲケホコリ(ケホコリ目)の子実体(無柄の単子嚢体)5d. ブレフェルトホコリ属(ムラサキホコリ目)の子実体(着合子嚢体)

変形菌の子実体 (fruiting body, fruit body, sporocarp) は、いずれも胞子胞子嚢(子嚢)の中に内生する。この特徴は、細胞性粘菌ツノホコリ類とは異なる。胞子を内生するため、変形菌の子実体は子嚢体 (myxogasterocarp) ともよばれる[7]。子実体はしばしば柄をもち、基質上に広がった変形体に由来する変形膜の上に形成される[6][7]。変形菌の子実体において、胞子以外(子嚢壁、柄、変形膜など)は基本的に非細胞性であり、細胞外物質でできている[3][5]。ふつう子実体は高さ 0.5?4 mm 程度であるが、高さ数 cm になるものもいる(ムラサキホコリ属など)。屈曲子嚢体や着合子嚢体(下記)はしばしば大型であり、幅 10 cm 以上になるものもいる[26]。一方、ハリホコリ属(ハリホコリ目)やニセハリホコリ属(ニセハリホコリ目)の中には、柄と数個の胞子のみからなる微小な子実体を形成する種も知られている[27][15]。このような種は、以前は原生粘菌に分類されていた。

変形菌の子実体(子嚢体)は、以下の4型に類別される[3][6][21]

単子嚢体(sporangiocarp, sporocarp, sporocyst)(上図5b, c, 下図5e)1個の胞子嚢(子嚢)からなる子実体。柄をもつもの(有柄)とこれを欠くもの(無柄)がある。変形菌の中で最も一般的な形であり、おそらく変形菌における祖先的状態である。複数の単子嚢体の柄が接着して共通の柄に複数の胞子嚢が付いているものもあり、このような構造は掌状子嚢体ともよばれる(下図5f)。

屈曲子嚢体(蟠曲子嚢体[11][26] plasmodiocarp)(下図5g)網状の変形体の太い脈が、そのまま胞子嚢になった細長く網状の子実体。一部が分かれて単子嚢体になることもある。柄はない。ヘビヌカホコリ(ケホコリ目)、クネリカタホコリ、ハイイロフクロホコリ(モジホコリ目)、ツナホコリ属(所属不明)などに見られる。

着合子嚢体(著合子嚢体[26]、塊状子嚢体[11] aethalium, pl. aethalia)(上図5a, d, 下図5h)変形体全体が分断せずにそのまま大きな塊状になった子実体。構成単位である胞子嚢が明瞭な場合から、全体が融合している場合まである。共通の皮層で覆われている。フンホコリ属(アミホコリ目)、ドロホコリ属(ドロホコリ目)、スミホコリ属(ムラサキホコリ目)、ススホコリ属(モジホコリ目)などに見られる。

偽着合子嚢体(擬着合子嚢体 pseudoaethalium, pl. pseudoaethalia)(下図5i)着合子嚢体に似ているが、多数の単子嚢体が密着して出来ており、個々の胞子嚢が外観から識別可能である子実体。クダホコリ属(ドロホコリ目)、ハシラホコリ属(ケホコリ目)、カタクミホコリ属(ムラサキホコリ目)、ミナカタホコリ属(所属不明)などに見られる。
5e. カタホコリ属(モジホコリ目)の柄をもつ単子嚢体5f. ブドウフウセンホコリ(モジホコリ目)の掌状子嚢体5g. ヘビヌカホコリ(ケホコリ目)の屈曲子嚢体5h. マンジュウドロホコリ(ドロホコリ目)の着合子嚢体5i. エツキクダホコリ(ドロホコリ目)の偽着合子嚢体

変形体から子実体が形成された際には、各子実体または複数の子実体の下に変形体の一部が残り、薄い膜状の構造となる。この構造は変形膜 (hypothallus, pl. hypothalli) とよばれる[3][6][21]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:204 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef