士官
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また日本陸軍では明治時代から大正時代を経て1937年昭和12年)2月14日まで将校のうち尉官に相当するものを士官、佐官に相当するものを上長官と呼称していた[2][3](日本海軍では1919年大正8年)9月22日、勅令第427号により士官・上長官の区分を廃止[4]

本項では「commissioned officer」の日本語訳としての広義の「士官」制度について記述する。
概要キティホーク (空母)の士官用食堂(ジャンパーを着ているのは訪問中のアレックス・トレベック

軍隊の士官は、当初は建国に参加した豪族と戦士の家柄に連なる貴族など支配階級に近い階層の出身者が任命されており、役職ではなく身分のような扱いであった。しかし近代以降は軍隊の専門化が進み、士官養成学校で教育を受けた貴族が任用されるようになった。一般的に士官は基本的な軍事教練を受けた後に指揮官としての教育を受け、さらに専門となる兵科について学ぶ。もっとも、兵卒から下士官への昇任は通常のことであるが、下士官から士官への昇任は限定される国が多く、そのため本来的身分は下士官に属しながらも、特に辞令を受けて士官と同様の待遇を受ける准士官制度が発達した。

先住民族の子孫やその他の平民にも士官への道が開かれるようになって以降も、ノブレス・オブリージュの考えから貴族の男子は士官学校へ進むことが半ば義務となっていた。現代でも貴族制が残る国では、貴族の男子は士官学校へ進む例が多い。士官は元首を代理する者とされ、陸軍では小隊長又は中隊長以上の部隊の指揮官は士官を以て充てることが通常である。また、海軍にあっては、対外的に国家を代表する軍艦(軍艦搭載艇などの短艇を含む)は絶対に士官の指揮下になければならず、このことは国連海洋法条約第29条に現れている(軍艦参照)。また航空機のパイロットは高度な権限を有することから士官に限られる国が多い。

士官の地位や出身階層における性格の残滓は、「捕虜の待遇に関する1949年8月12日ジュネーヴ条約」第49条などに見られる。同条においては、第1項及び第2項で捕虜の労働者としての使用を認めている。ところが、第3項但書においては、「将校又はこれに相当する地位の者……に対しては、いかなる場合にも、労働を強制してはならない」と規定して、本人の志願がない限り士官に労働させる事を禁じている。イギリスなど一部の国では軍法として「将校及び紳士に相応しくない行為」という士官の振る舞いについての罰則が存在するが、これは士官(貴族)に品格が求められていた時代の名残である。

士官の階級制度は国や時代によって異なる。なお、士官の階級を上から「将官」「佐官」「尉官」の3つの区分に分け、それぞれの区分の中に上から「大・中・少」「1等・2等・3等」といった順序を示す語を付して階級名とするのは日本独自の方法である。士官の階級については「軍隊の階級#士官・将校」を参照

士官の任用・教育については、中等教育修了者を大学相当の教養教育及び軍事専門教育を行う士官学校において教育し卒業した20歳前後の者を少尉として任用する国が多い。士官学校を経ない者を士官として任用する制度を有する国もあるが、原則として高等教育修了が要件とされることが多い。かつては自衛隊の幹部候補生採用試験も大学卒業が受験資格とされていた。その他一般大学在学中の学生に士官としての教育を行う制度もある(ROTC)。先進国軍隊では高学歴化に伴いこのような士官の採用区分の多様化が進んでおり、アメリカ軍の士官は士官学校卒業者より一般大学出身者が多くなるに至っている。国民皆兵制度を維持している国では、徴集兵の中から選抜して士官候補者とする国もある。また、医師パイロット弁護士など養成に時間のかかる職種は士官待遇、高度な技術者は士官に近い待遇の特技兵や技術将校として採用する枠を別途用意している国が多い。アーサー・C・クラークは第二次世界大戦時に動員された当初伍長だったが、レーダー技術者として評価され復員時には技術将校(大尉)となっていた。

下士官以下とは福利厚生面で待遇が異なり、一定規模の基地や駐屯地には幹部専用の食堂や士官室(Wardroom)が設けられていることが多い。小型艦艇や潜水艦は狭いため食堂は共通であることが多いが、空母などは余裕があるため地上基地と遜色ない士官室が用意され、食堂で提供されるメニューも異なる。ただし自衛隊では隊員の食事は階級にかかわらず同一である。陸上・航空自衛隊では幹部用(幹部食堂)と曹士用(隊員食堂)は大部屋をパーティションで区切り、椅子やテーブルを木製にしただけの駐屯地・基地が多い。海上自衛隊では、陸上部隊・航空基地等は陸上・航空自衛隊と同一であるが、艦艇においては配食の際、士官室を食堂として使用し喫食する。


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