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こういった経緯から、「食用塩公正取引協議会準備会」が発足し、公正競争規約作成への準備が進められ[16][17]、2008年(平成20年)4月18日に公正取引委員会において2年間の猶予期間を前提に

自然塩」「天然塩」およびそれに類する用語は使用できない。

海洋深層水使用」により品質が優れていることを表示するにはその合理的な根拠を示す必要がある。

ミネラル豊富を意味する表記は不当表示となる。(そもそもナトリウム自体がミネラルである)

といった内容を始めとした「食用塩の表示に関する公正競争規約」が認定され、2008年(平成20年)5月21日に食用塩公正取引協議会が正式発足、2010年(平成22年)4月21日から施行された。

表示が適正で、消費者をごまかすものではないことを示すものとして「しお公正マーク」[18] が、製品に表示される[19]。全製品に添付されるまで、2012年(平成24年)4月21日まで猶予期間があった。
栄養成分表示

食品のパッケージには栄養成分表示の欄に、含有塩分量の代わりにナトリウム量のみが記載されている場合がある。これは、高血圧の要因としては食塩量よりむしろナトリウム摂取量が重要視されているためである。

食塩相当量とは、このナトリウムがすべて食塩に由来すると想定した場合の、ナトリウム量に相当する食塩量である。食品に含まれるナトリウム量がわかっているとき、塩分相当量(グラム、g)は、ナトリウム量(g)の2.54倍で求められる[20]。ただし、食品にはアミノ酸重曹などの形でもナトリウムは含まれるため、塩分相当量は実際に食品に含まれている食塩量に比べて若干大きくなる。
賞味期限

塩は常温においてきわめて安定した物質であり、腐敗もしない。そのため、食品表示基準では賞味期限を設定することを免除されている[21]
生体内での作用

塩の主成分である塩化ナトリウムは水溶液中ではナトリウムイオン(Na+)(陽イオン)と塩化物イオン(Cl−)(陰イオン)に解離する(電解質)。細胞においては主に細胞内液へK+とHPO2?
4が、細胞外液へNa+とCl?が偏るように分布する。

ナトリウムイオンは

体液の量の調整及び浸透圧の調整

神経の興奮作用(イオンチャネルによって細胞外のナトリウムイオンと細胞内のカリウムイオンが交換され電気的変化が信号となる)

筋肉の収縮作用(イオンチャネルによりナトリウムイオンが筋細胞に取り込まれ活動電位を生じカルシウムイオンを放出させ筋肉を収縮させる)

酸塩基平衡を保つための緩衝作用

腸からのアミノ酸の吸収・グルコースの吸収(ナトリウム依存性グルコース共輸送体)


塩化物イオンは

体液の量の調整及び浸透圧の調整

胃酸の分泌(H+(水素イオン) + Cl−(塩化物イオン)の水溶液で塩酸となる)

酸塩基平衡を保つための緩衝作用

などの働きをし、どちらも必須ミネラルである。塩化ナトリウムが過度に不足した場合上記の作用が正常に働かなくなる症状が発生する。

脱水 ・消化液の不足からの食欲の減衰 ・脱力感 ・筋肉の痙攣 ・嗜眠、精神障害、脳機能障害、昏睡

健康への影響詳細は「塩と健康(英語版)」を参照「食塩中毒」および「高ナトリウム血症」も参照
1日の塩分摂取量目安と減塩啓蒙活動

2003年、世界保健機関(WHO)と国連食糧農業機関(FAO)による『食事、栄養と生活習慣病の予防[22]』(Diet, Nutrition and the Prevention of Chronic Diseases) では、1日当たりの塩分摂取量を5g以下(ナトリウム2g以下)にとどめるよう勧めている。

2005年(平成17年)版の『日本人の食事摂取基準』では、1日の塩分摂取量を男性成人で10g以下、女性成人で8g以下を推奨し、同時に高血圧を予防するために、過剰なナトリウムを排出する作用のあるカリウムの摂取基準も定めている。カリウムは野菜や果物に多く含まれる。日本の食生活指針と健康日本21(21世紀における国民健康づくり運動)では1日10g以下を目標としている[23]

2013年時点の日本高血圧学会のガイドラインでは1日6g未満を推奨している[24]。同学会の減塩委員会[25] は2012年に日本で初めて開かれた[26]「減塩サミット」を共催し、翌年からは毎年主催となって減塩の啓蒙をはかっている。

こうした減塩の推奨は医学関連の学会厚生労働省だけでなく、都道府県など地方自治体、食品業界にも広がっている。長野県は1960年代から県民に減塩を呼び掛けたことが一因となって平均寿命が延びたと評価されている。これを参考に青森県は“脱・短命県”を目指して、塩分を減らして出汁で味をつける食生活のプロジェクトを進めている[27]。また減塩をうたった味噌醤油が開発・販売されたり、食メーカーが塩を減らして酢を活用することをアピールしたりしている。
減塩の取り組みと研究

また慶応義塾大学三木則尚らの研究チームは、の裏に貼ると塩味を感じ、実際の塩分使用量を減らせるチップを開発した[28]

イギリスでは2005年からの3年間で塩分摂取量の10%削減に成功し、脳卒中などの患者が減って医療費も2,100億円浮いたとの報告もあるという[26]。WASH(World Action on Salt and Health)という団体は食品の食塩量調査や、マスメディアでの減塩活動の推進を実施した[29]

ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに載せられた論文によると3.7年の調査の結果、1日7.6g - 15.2gの食塩相当の起床時の尿に基づく推定ナトリウム排出量に比べて、17.8gを超えた場合で主要な心血管疾患のリスクが15%増加、7.6g未満の場合でも27%増加と、グラフにしたときにJの字型にリスクが増えることが示されている(Jカーブ効果)。論文では高血圧の対象者のスコアを修正し、心血管疾患・糖尿病・癌の病歴のある人・喫煙者に加えて、調査開始2年以内の発症者を除いても考察は変わらないが、それでも逆因果関係の存在を否定出来ないとしている[30][31]

微弱な電気を流すスプーンや器などで塩味を強める仕組みや[32]塩化カリウムなどの塩化ナトリウム以外の塩味を感じる調味料の使用などが行われる[33]。中国では塩が貴重であった地域において、トウガラシと醸造酢を塩の代わりとし[34]、研究でも酸味やカプサイシンによる辛味で塩味を増強し減塩効果となることが確認された[35]。また、研究ではバジルによって塩味が増強されることが判明している[36]

減塩の最も簡単な方法は、外食よりも家庭で調理し、スパイスを使い、塩を使わないことである[37]

WHOによる『減塩に関するファクトシート』で、よくある誤解が解説されている[38][39]
過剰摂取

地球上の多くの生物は適量のナトリウムがないと生命を維持することができず、その供給源である塩は生命にとって欠かせないものである。特に陸生動物にとっては塩分の補給は重要であり、塩分を含む土壌や岩石からでも摂取する必要があった。

人類は発汗能力を発達させた代償に他の動物以上に多くの塩分を必要としており、塩味に対する嗜好も強い。狩猟採集時代は動物の血肉に含まれる塩分に頼っていたが、農耕が始まり穀物や野菜中心の食生活になると(野菜に含まれるカリウムによるナトリウム排出作用もあって)海水や湧水からの製塩岩塩採掘により塩の採取を行う様になった。しかし調味料として食物に塩をふんだんに利用するようになる[40] と、塩分の取り過ぎが高血圧(食塩感受性高血圧要参照)や腎臓病心臓病脳卒中などの遠因となった。そのメカニズムは完全に解明されてはいないが、一般には血中のナトリウムイオン濃度を一定範囲に保つため水分を取るようになり、血液を含む体液の量が増え血圧が高まるとともに、これを体外に排出する機能を司る腎臓に負担がかかるためとされている[41][42]

塩蔵された食品は胃癌のリスクが高まるとされる[43]。例えば、2007年11月1日世界がん研究基金アメリカがん研究協会によって7000以上の研究から分析したがん予防の報告書[44] では、中国広東式の塩蔵の魚は鼻咽頭癌のリスクを上げると報告している。


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