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なお、2017年(平成29年)の日本での塩の消費の約74%は工業用原料としての用途である[12]
中国大陸における塩の専売

中国大陸では、前漢時代より塩の専売が行われており、2000年にわたる皇帝支配の財政的基盤となった。『塩鉄論』のように、塩の専売制度を巡る議論は前漢から行われている。一方で、王朝による高額な専売塩より安く塩を密売して、巨額の利益を上げる者(塩賊)もおり、その中でもを崩壊させる黄巣の乱を起こした黄巣は有名である。

中国国有企業の中の中央企業の一つに中国塩業集団(中国語版)が置かれ、現在でも専売を行っている。詳細は「中国塩政史」を参照
朝鮮半島における塩の専売

朝鮮半島では、高麗時代において忠宣王の治世中から権塩法が施行し、塩の専売を行った。高麗時代においては塩との交換できる物品は布に限定された。

塩の専売は李氏朝鮮においても継続され、州や郡ごとに塩場が置かれ、塩との交換品目を布の他に米、雑穀が追加された。一方で民間が生産した塩に税をかける形で私塩も容認された。1445年に私塩場を全廃し販売だけでなく、塩の生産も全て官営とする義塩法を施行するが批判が多く、1446年に廃止した。以降は私塩を認めたものの官衙の徹底した管理に置かれた。このために基本的に官製塩が主流となった。
塩の規格
コーデックス規格

国際食品規格委員会(コーデックス委員会)とは消費者の健康の保護、食品の公正な貿易の確保等を目的として、1962年にFAOおよびWHOにより設置された機関であり、世界的に通用する唯一の食品規格であるコーデックス規格(国際食品規格)の作成を行っている。食用塩についてもコーデックス規格を1985年より以下の通り定めている。日本も同委員会には1966年(昭和41年)より参加している。

成分

NaCl純度(乾物基準、添加物除く)=97%以上


副成分

カルシウムカリウムマグネシウムナトリウムの硫酸塩、炭酸塩、臭化物塩、カルシウム・カリウム・マグネシウムの塩化物=3%未満(NaCl純度からの逆算)


混入(有害)元素

As(ヒ素)=0.5mg/kg以下

Cu()=2mg

Pb()=2mg/kg以下

Cd(カドミウム)=0.5mg/kg以下

Hg(水銀)=0.1mg/kg以下


ヨウ素添加

ナトリウムまたはカリウムのヨウ化物塩またはヨウ素酸塩

米国等では添加が義務づけられている。ヨウ素の項目を参照。



固結防止剤

カルシウムまたはマグネシウムの炭酸塩、酸化マグネシウム、リン酸三カルシウム、二酸化ケイ素、カルシウムまたはマグネシウムのアルミノケイ酸塩=2%

ミリスチン酸パルミチン酸ステアリン酸のカルシウム、カリウムまたはナトリウム塩=2%

カルシウム、カリウムまたはナトリウムのフェロシアン化物塩=10mg/kg(フェロシアン化物イオンとして)


乳化剤

ポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸=10mg/kg

ポリジメチルシロキサン=10mg/kg以下


天日塩の規格

欧州連合では上記のコーデックス基準が適用されているが、フランスにおいては国内の天日塩生産者組合の活動により天日塩の塩化ナトリウム含有率を94%以上と定義する条例が2007年4月24日に成立している。

また、朝鮮半島においては、1900年代初頭から天日塩を新安郡の島々で作って来たが、現在、法的に禁止状態になっている。韓国の生産者協会のロビー活動により、この塩を認知する新しい法律が2007年9月に成立する見通しとなっていた。ただしコーデックス規格に示されている有害といわれる元素の基準については触れられていない。
日本における規格と表示

日本では食塩、並塩、精製塩などを総称して「食塩類」とする[13]。塩事業センター及び日本塩工業会等の品質規格で「食塩」は塩化ナトリウム含有量が99%以上のもの、「並塩」は95%以上のものとされている[13]。また「精製塩」は塩事業センターの品質規格で塩化ナトリウム含有量99.5%以上のものをいう[13]

塩の製造販売の自由化以降、銘柄数が増えた家庭用塩[注釈 1] について、消費者からは「家庭用塩の表示がわかりにくい」との情報が寄せられていた。2004年(平成16年)7月21日、公正取引委員会は、日本で採取された塩であると誤認される表示を行い輸入塩を販売しているとして塩の販売業者9社に、景品表示法第4条(優良誤認)の規定に違反するおそれがあるものとし警告を行ったと発表し[14]、同年9月、東京都は塩業界による表示の自主ルールを策定することを提案した[15]。これを受けて以下のような提案がされた。

自然」、「天然」の表示は、使用しない。

「ミネラルたっぷり」など、ミネラルの効用・優位性を示す表示は、使用しない。

「最高」「究極」など、最上級を示す表示は、根拠となる客観的な事実がある場合を除いて、使用しない。

無添加」の表示は、優良性の根拠となる客観的な事実がなければ、使用しない。

食塩の製造方法について、「原料」や「製造過程」の表示枠を独自に設け、消費者にわかりやすく表示する。

JAS法に基づく必要表示事項の表示(枠内表示)について、「名称」「原材料名」の記載を標準化し、消費者にわかりやすく表示する。

こういった経緯から、「食用塩公正取引協議会準備会」が発足し、公正競争規約作成への準備が進められ[16][17]、2008年(平成20年)4月18日に公正取引委員会において2年間の猶予期間を前提に

自然塩」「天然塩」およびそれに類する用語は使用できない。

海洋深層水使用」により品質が優れていることを表示するにはその合理的な根拠を示す必要がある。

ミネラル豊富を意味する表記は不当表示となる。(そもそもナトリウム自体がミネラルである)

といった内容を始めとした「食用塩の表示に関する公正競争規約」が認定され、2008年(平成20年)5月21日に食用塩公正取引協議会が正式発足、2010年(平成22年)4月21日から施行された。

表示が適正で、消費者をごまかすものではないことを示すものとして「しお公正マーク」[18] が、製品に表示される[19]。全製品に添付されるまで、2012年(平成24年)4月21日まで猶予期間があった。
栄養成分表示

食品のパッケージには栄養成分表示の欄に、含有塩分量の代わりにナトリウム量のみが記載されている場合がある。これは、高血圧の要因としては食塩量よりむしろナトリウム摂取量が重要視されているためである。

食塩相当量とは、このナトリウムがすべて食塩に由来すると想定した場合の、ナトリウム量に相当する食塩量である。食品に含まれるナトリウム量がわかっているとき、塩分相当量(グラム、g)は、ナトリウム量(g)の2.54倍で求められる[20]。ただし、食品にはアミノ酸重曹などの形でもナトリウムは含まれるため、塩分相当量は実際に食品に含まれている食塩量に比べて若干大きくなる。
賞味期限

塩は常温においてきわめて安定した物質であり、腐敗もしない。そのため、食品表示基準では賞味期限を設定することを免除されている[21]
生体内での作用

塩の主成分である塩化ナトリウムは水溶液中ではナトリウムイオン(Na+)(陽イオン)と塩化物イオン(Cl−)(陰イオン)に解離する(電解質)。細胞においては主に細胞内液へK+とHPO2?
4が、細胞外液へNa+とCl?が偏るように分布する。

ナトリウムイオンは

体液の量の調整及び浸透圧の調整

神経の興奮作用(イオンチャネルによって細胞外のナトリウムイオンと細胞内のカリウムイオンが交換され電気的変化が信号となる)

筋肉の収縮作用(イオンチャネルによりナトリウムイオンが筋細胞に取り込まれ活動電位を生じカルシウムイオンを放出させ筋肉を収縮させる)

酸塩基平衡を保つための緩衝作用

腸からのアミノ酸の吸収・グルコースの吸収(ナトリウム依存性グルコース共輸送体)


塩化物イオンは

体液の量の調整及び浸透圧の調整

胃酸の分泌(H+(水素イオン) + Cl−(塩化物イオン)の水溶液で塩酸となる)

酸塩基平衡を保つための緩衝作用

などの働きをし、どちらも必須ミネラルである。塩化ナトリウムが過度に不足した場合上記の作用が正常に働かなくなる症状が発生する。

脱水 ・消化液の不足からの食欲の減衰 ・脱力感 ・筋肉の痙攣 ・嗜眠、精神障害、脳機能障害、昏睡

健康への影響詳細は「塩と健康(英語版)」を参照「食塩中毒」および「高ナトリウム血症」も参照


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