管理通貨制度下にありながら十分な信用があり、額面価額通りの価値を広く認められ国際市場で、他国の通貨と容易に交換が可能な通貨のことをハード・カレンシー(英: hard currency)(英語版
)と呼ぶ。金本位制の時代に、いつでもハード(硬い金属の意、つまり「金」)な正貨と交換可能な通貨というのが語源である。ハードカレンシー以外の通貨はソフトカレンシー(英: soft currency)やローカルカレンシー(英: local currency)と呼ばれる。通貨が「ハードカレンシーであるための条件」として、以下の条件が挙げられる。
国際的に信用があること
発行国が多様な財を産出していること
国際的な銀行における取引が可能なこと
あらゆる場所での換金が可能なこと
明確な基準は存在しないため、どこまでをハードカレンシーに分類するかは、論者によって一定ではない。 国際為替市場で中心に扱われる通貨のことを基軸通貨(きじくつうか、英: key currency、キーカレンシー)と言う。 基軸通貨としての機能を果たすには以下の条件が必要とされている。 歴史的には、イギリス・ポンドやアメリカ・ドルが基軸通貨と呼ばれてきた。 イギリス・ポンドは19世紀半ば以降、国際金融センターとしてのイギリスの強力な立場を背景に基軸通貨としての役割を担っていたが、第一次世界大戦で欧州各国は経済が疲弊し、逆にアメリカは戦争特需で経済が急成長したため、(正式ではないが)基軸通貨が機能面でイギリス・ポンドからアメリカ・ドルへ移った。 ブレトン・ウッズ協定から第二次世界大戦後は、アメリカがIMF体制の下で各国中央銀行に対してアメリカ・ドルの金兌換を約束したこと、およびアメリカ合衆国の経済力を背景にアメリカ・ドルが名実共に基軸通貨となった。欧州単一通貨・ユーロが将来的にアメリカ・ドルと並ぶ基軸通貨に成長するとの見方もあるが、2009年現在では対外取引の80%以上がアメリカ・ドルで行われていることから、実質的な基軸通貨としての地位は揺らいでいない(ユーロは約10%)。 ただし、アメリカの景気対策による財政赤字の拡大に伴い、中華人民共和国は基軸通貨としてのドルの安全への懸念を指摘、代わってSDRの使用範囲を拡大し、基軸通貨として人民元の役割を担わせる提案を行ない、2016年からSDRの構成通貨に人民元が加わった[3][4]。 1SDRの価値は、2016年から2020年の期間では である。 基軸通貨の発行国は、必然的に経常収支は赤字になる(国際的な流動性を供給するためには、発行国は経常収支が赤字となって各国に通貨を供給する必要がある)。基軸通貨である限り経常収支の赤字額は発行国の利益になる(各国が基軸通貨資産を外貨準備として持つことにより、発行国はその代金としての海外資産を手にすることができる)。新興国の経済発展により基軸通貨の需要が増えた場合は、供給量が一定であれば基軸通貨の価値は上昇する。 近年、日米欧はデジタル人民元が中国国内での利用にとどまらず、貿易決済などを通じて世界的に普及し、存在感を高めることを警戒している。相対的に基軸通貨のドルの地位が低下すれば、アメリカが敵対国にドル取引を禁じるといった金融制裁の効力も弱まりかねない。
基軸通貨
軍事的に指導的立場にあること(戦争によって国家が消滅したり壊滅的な打撃を受けない)
発行国が多様な物産を産出していること(いつでも望む財と交換できること)
通貨価値が安定していること
高度に発達した為替市場と金融・資本市場を持つこと
対外取引が容易なこと
アメリカ・ドル 41.73%
ユーロ 30.93%
人民元 10.92%
日本円 8.33%
イギリス・ポンド 8.09%
脚注[脚注の使い方]
注釈^ 貿易や投資の経済活動等で実際に決済される通貨と、国際通貨基金(IMF)による特別引出権(SDR)の構成通貨は別であり、SDRは国家の外貨準備に対する手段である。詳細はSDRの項目を参照。
出典^ Turnover of OTC foreign exchange instruments, by currency 2019
^ 国際決済銀行の統計 2022年12月1日閲覧。
^ 中国人民銀行の周小川総裁の論文。『朝日新聞』2009年3月28日、東京版朝刊15面。
^ ⇒ドルを埋葬したい勢力 - 周小川論文の解説と論評( ⇒JBpress 2009年3月31日)
関連項目
通貨
金本位制
通貨同盟
特別引出権
外部リンク
国別通貨換算表 - 経済産業省
通貨流通高 - 日本銀行
通貨換算ナビ
国または地域と通貨コード
典拠管理データベース: 国立図書館
日本