地盤沈下(じばんちんか)とは、地盤(地表面)が収縮や陥没により相対的に沈む現象[1][2]。堆積盆地の沖積層[3]における地盤沈下は世界中のどこでも発生する[4]。地盤沈下の例
地盤沈下であっても主に水を含む帯水層の体積はそれほど変化しない。地下水の過剰な汲み上げによって帯水層(1)に接する粘土層のような強固な構造を持たない難透水層(2)の中の地下水が帯水層へ移動することで、難透水層の体積が減少し地面が沈下する。
A:沈下量 B:抜け上がり量
概要[ソースを編集]
地盤が沈む原因には自然現象によるものと人類の経済活動にもとづく人為的作業によるものがある[1][2]。建築物や農業に被害を受ける。地盤沈下は、海抜ゼロメートル地帯を発生させる広域の沈下現象と、土木工事等による局所的な沈下現象とがあり、一般的には広域の沈下現象を、公害の1つとしている。
人為作用による広域の地盤沈下は、工業用水[5]・農業用水[5]・消雪用水[5]・冷房用水等の地下水の過剰揚水(涵養量を超える汲み揚げ)、天然ガス[5]の汲み上げ、鉱山の坑道掘削などが主な原因となる。
地盤沈下と地下水状況把握に現在水準測量による地盤の収縮状況や地盤高の測定、国土交通省の設置する地下水観測所での地下水位観測が行われている。局所の地盤沈下は、局所的な揚水や、元々水田(軟弱地盤)だった地域に建築物が構築されたような場合の、地耐力を超えて荷重が載荷された場合に発生する。両者ともに沈下現象の発生メカニズムについては、圧密の項を参照。
自然現象による地盤沈下[ソースを編集]
自然現象による地盤沈下には乾燥による収縮、地下水変動、地下空洞の陥没などがある[1]。
地下空洞[ソースを編集]
石灰岩地帯では堆積岩の炭酸カルシウムが溶け出して大規模な地下空洞が形成され陥没することがある[1]。「シンクホール」を参照
地震による地盤沈下[ソースを編集]
断層活動である地震では地殻変動の結果として地表面に隆起や沈降の変異が現れる場合があり、また液状化現象による地盤沈下が生ずる場合もある。
東北日本[ソースを編集]
2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震により、陸前高田市の0.84mや牡鹿半島の1.2mを最大変動量として岩手県、宮城県や福島県の太平洋岸の多くの地点で地盤沈下が起こった[6][7]が、これは地殻変動による沈降を地盤沈下と呼んでいる[8]。一方、この地震では千葉県浦安市など東京湾沿岸で、液状化による地盤沈下が広範囲で発生した[9]。
西南日本[ソースを編集]
南海トラフ巨大地震はプレート境界の衝上断層による御前崎、潮岬、室戸岬等の隆起、高知平野などの沈降が特徴の一つである[10]。684年白鳳地震 - 『日本書紀』に土佐国で50余万頃の田畑が海に没したとある[11]。1099年康和地震(1096年永長地震との説もある[12][13]。) - 『広橋本兼仲卿記』の紙背文書に土佐国の作田千余町が皆海に没したとある[14]。1707年宝永地震 - 『谷陵記』に土佐湾西部沿岸各地で市井が海に没したとあり、2 - 2.5m程度の沈降が推定されている[15][16]。1854年安政南海地震 - 土佐湾西部や徳島県沿岸で1 - 1.5m程度の沈降が推定されている[17]。1946年昭和南海地震 - 土佐湾西部沿岸で1m前後の沈降が見られた[18][19]。
チリ[ソースを編集]
1960年チリ地震では、海岸よりやや内陸部で広範囲に沈降して沿岸の市街地が浸水し、沈降量は2.7mに及んだ[20][21]。