地球温暖化
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しかしこの寒冷化説は根拠に乏しく[48]、科学的に調べていく過程で、実は地球が温暖化していることが明らかとなっていった。

一般の間でも寒冷化説が広まっていたが、1988年アメリカ上院の公聴会におけるJ.ハンセンの「最近の異常気象、とりわけ暑い気象が地球温暖化と関係していることは99%の確率で正しい」という発言が、「地球温暖化による猛暑説」と報道され、これを契機として地球温暖化説が一般にも広まり始めた。国際政治の場においても、1992年6月の環境と開発に関する国際連合会議(地球サミット)にて気候変動枠組条約が採択され、定期的な会合(気候変動枠組条約締約国会議、COP)の開催が規定された。

研究が進むにつれ、地球は温暖化しつつあり、人類の排出した温室効果ガスがそれに重要な役割を果たしているということは、議論や研究が進む中で科学的な合意(コンセンサス)となっていった。このコンセンサスは2001年のIPCC第3次評価報告書(TAR)、2006年のスターン報告、2007年のIPCC第4次評価報告書(AR4)などによって集約された。

温暖化の主因と見られる[注釈 11]人為的な温室効果ガスの排出量を削減するため、京都議定書が1997年に議決され2005年に発効し、議定書の目標達成を目処に削減が行われてきた。欧州では順調に削減が進み、目標達成の目処が立っている。

しかし主要排出国の米国が参加しておらず、また先進国のカナダが目標達成をあきらめたり、福島第一原子力発電所事故後に石炭ガス火力発電比率を高めた日本が削減義務達成に失敗しそうな情勢になっている。

二酸化炭素排出量の多い中国やインドなど途上国の排出量を抑制する道程も定まっていない。その一方で、温暖化の被害を最小にするには、京都議定書より一桁多い温室効果ガスの排出量削減率が必要とされる。2007年のハイリゲンダムサミットにおいては「温室効果ガスを2050年までに半減する」という目標が掲げられた。

しかし具体的な各国の削減方法や負担割合については調整がつかず、2007年12月の温暖化防止バリ会議(COP13)においても、さらには最近の2019年マドリードでのCOP25においても各国の数値目標を定めるには至らなかった。
近年の気温変化樹木の年輪、サンゴ、氷床コアの間接的データを使用した、過去2,000年間の全球表面温度の再構築(青色)[49] と直接観測されたデータ(赤色)[1]。「過去の気温変化」を参照

現在、地球表面の大気や海洋の平均温度は、1896年から1900年の頃(5年平均値)に比べ、0.75°C(±0.18°C)暖かくなっており、1979年以降の観測では下部対流圏温度で10年につき0.12から0.22°Cの割合で上昇し続けている。

1850年以前、過去1000年から2000年前の間、地表の気温は中世の温暖期小氷期のような変動を繰り返しながら比較的安定した状態が続いていた。しかしボーリングに得られた過去の各種堆積物や、樹木の年輪、氷床、貝殻などの自然界のプロキシを用いて復元された過去1300年間の気温変化より、近年の温暖化が過去1300年間に例のない上昇を示していることが明らかとなった(AR4[注釈 12]

気温の測定手段としては、過去の気温については上記のように自然界のプロキシを用いて復元される一方、計測機器を使用した地球規模での気温の直接観測が1860年頃から始まっている。特に最近の過去50年は最も詳細なデータが得られており、1979年からは対流圏温度の衛星による観測が始まっている。AR4の「世界平均気温」については、都市のヒートアイランド現象の影響が最小限となるよう観測地点を選び、地表平均気温の値を算出している。

測定精度に関してはなお一部で議論もある[注釈 13]が、そのような誤差要因を考慮しても近年の温暖化は異常であり、気候システムの温度上昇は疑いようがないと評価されている[注釈 14]

2019年2月6日、世界気象機関WMO)は、2015年から4年間の世界の気温が観測史上最高だったことを確認した。また、2018年の世界の平均気温が産業革命前比で1度上昇し、過去4番目に高かったと発表した。2015年から4年連続で異例の高温が続き、上昇傾向が続き地球温暖化が進行している証拠だとしている。

WMOによると、2016年の平均気温の上昇幅は1.2度で観測史上最高を記録した。WMOのペッテリ・ターラス(Petteri Taalas)事務局長は、単年の記録の上位20位が過去22年間に集中しており、「長期的な気温の傾向は単年の順位よりもはるかに重要であり、長期傾向は上昇を示している」とした上で、「過去4年間の気温上昇は陸上と海面の双方で異常な水準にある」と述べた。ハリケーンや干ばつ、洪水といった異常気象の要因にもなったと指摘している[50][51]
原因各要因別の放射強制力の評価結果。正の値が大きいほど、地球温暖化を促進する効果が高いことを示す。最右端の人為的要因の合計に比べ、太陽放射の変化によるものは10分の1以下である。「地球温暖化の原因」を参照

地球温暖化は、人間の産業活動に伴って排出された温室効果ガスが主因となって引き起こされているとする説が主流である。『気候変動に関する政府間パネル』(IPCC)によって発行されたIPCC第4次評価報告書によって、人為的な温室効果ガスが温暖化の原因である確率は「90%を超える」とされる。

IPCC第4次評価報告書(AR4)は現在世界で最も多くの学術的知見を集約しかつ世界的に認められた報告書であり、原因に関する議論が行われる場合も、これが主軸となっている。

原因の解析には地球規模で長大な時間軸に及ぶシミュレーションが必要であり、膨大な計算量が必要である。計算に当たっては、直接観測の結果に加え、過去数万年の気候の推定結果なども考慮して、様々な気候モデルを用いて解析が行われる。解析の結果、地球温暖化の影響要因としては、環境中での寿命が長い二酸化炭素メタンなどの温室効果ガスの影響量が最も重要であるとされる。この他、エアロゾル、土地利用の変化など様々な要因が影響するとされる。こうした解析においては、科学的理解度が低い部分や不確実性が残る部分もあり、それが批判や懐疑論の対象になる場合もある[注釈 15]

実際のところ、数億年前まで遡って考えると、二酸化炭素濃度は現在より圧倒的に高い。しかしこのような不確実性を考慮しても、温暖化のリスクが大きいことが指摘されている。

人為的な温室効果ガス(GHG)源として、主要なものの一つとして食料システムが指摘されている。GHGの総排出量の約21?37%が食料システムに起因していると推定される。この推定値には、農場内での農作物や家畜の活動からの排出量が9?14%、森林破壊や泥炭地の劣化を含む土地利用や土地利用の変化から排出量が5?14%、サプライチェーン活動によるものが5?10%となっている[52]。これらの食料システムのうち、畜産に関する排出量はCO2換算で7.1 Gtで総排出量の14.5%に相当するとされる[53]。またメタンはCO2の28倍[54]の温室効果と言われるが、人為的メタン排出量のうち、44%が畜産由来のものとなっている[55]

また、食料ロスと廃棄物からの排出量も多く、GHG総量の8?10%とされ、生産される食料の25?30%が廃棄されているとされる[52]
IPCCによる評価結果化石燃料消費量と温室効果ガスの増加率世界の人為的CO2総排出量の推移。人為起源の二酸化炭素排出量は急増している。「IPCC第4次評価報告書」を参照

IPCC第一作業部会(WG I)による報告書 ⇒"The Physical Science Basis"(自然科学的根拠、AR4 WG I)が発行された。

この報告書は気候システムおよび気候変化について評価を行っている。多くの観測事実とシミュレーション結果に基づき、人間による化石燃料の使用が地球温暖化の主因と考えられており、自然要因だけでは説明がつかないことを指摘している。

二酸化炭素の増加は、主に人間による化石燃料の使用が原因であると指摘している。

二酸化炭素は、人為起源の温室効果ガスの中で、最も影響が大きい。この他、メタン一酸化二窒素、ハロカーボン類なども影響したと考えられている。

1750年以降の人間による活動が、地球温暖化の効果(正の放射強制力)をもたらしている。

20世紀半ばから見られている平均気温の上昇は、人為的な温室効果ガスの増加によるものである可能性がかなり高いと言われている。

それぞれの原因が気候に与える影響に関しては、科学的な理解水準が異なる。温室効果ガスに対する科学的理解度は比較的高いが、や太陽放射変化などの気候因子は理解水準がまだ比較的低い。専門家の間で意見が分かれる事柄もあり、報告書にも「意見の一致度」として評価結果が記載されている。


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