地球温暖化
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日本では国立環境研究所などによる影響予測[59]が進められており、豪雨や猛暑の増加、農業用水の不足、植生の変化、干潟や砂浜の消滅、地下水位や海面上昇などによる被害の増大の予測が報告されている。

農業では米がとれなくなり、漁獲量ではアワビやサザエ、ベニザケが減少するなどの甚大な被害が予想される。寒害の減少、北日本における米の生産向上など一部では利益も予想されるが、被害が大幅に上回ると見られる[注釈 16]
気温への影響この惑星は現在、1951年?1980年よりも0.8?1.0℃暖かい。これは惑星全体の温度異常の平均値である。2005年から過去50年間の、世界の山岳氷河の平均の厚さの推移「地球温暖化の影響#気温への影響」を参照

人為的な温室効果ガスの排出傾向に応じて、さらに気温が上昇し、下記のような現象が進行することが懸念されている。

1990年から2100年までの間に平均気温が1.1?6.4°C上昇。これは過去1万年の気温の再現結果に照らしても異常。

北極域の平均気温は過去100年間で世界平均の上昇率のほとんど2倍の速さで上昇した。北極の年平均海氷面積は、10年当たり2.1%?3.3%(平均2.7%)縮小している。

陸域における最高最低気温の上昇、気温の日較差の縮小。

温暖化が環境中からの二酸化炭素やメタンなどの放出を促進し、さらに温暖化が加速する(正のフィードバック効果)。

サンゴ礁の白化(サンゴ礁の劣化)による、砂礫の供給能力の低下。サンゴ礁によってできている島の水没。

農作物収量の変化や熱中症の増加などの人間システムへの影響。

自然植生や野生生物の分布の変化などの自然システムへの影響。

気象現象への影響北大西洋における熱帯性低気圧の観測数。青:熱帯性低気圧、緑:ハリケーン、赤:大型のハリケーン。「地球温暖化の影響#気象現象への影響」を参照

気象現象への影響は一括して「異常気象の増加」、気候への影響は「気候の極端化」と表現されることがある。温暖化に伴って気圧配置が変わり、これまでとは異なる気象現象が発生したり、気象現象の現れ方が変わったりすると予想されている。たとえば下記のような変化が懸念されている。

偏西風の蛇行、異常気象の増加。日本周辺の気候にも大きな影響を与える可能性。

アメリカ南東部・東部の海水温上昇により、竜巻の発生域が南東部や東部に広がる。

暑い日・暑い夜が増加し、全体的に昇温傾向となる。高温や熱波・大雨の頻度の増加、干ばつ地域の増加、勢力の強い熱帯低気圧の増加、高潮の増加。

降水量に関しては異論もあるものの、たとえば下記のような影響が懸念されている。

大気中の水蒸気量の増加により、平均降水量が増加。

平均降水量の変動幅の増大、豪雨旱魃の増加。

熱帯雨林の乾燥化や崩壊。

海水面の上昇過去約120年間の海水面の推移(地質が安定している世界23地点の平均)「地球温暖化の影響#海水面の上昇(海面上昇)」を参照

気温の上昇によりグリーンランドや南極の氷床氷河の融解が加速されたり[注釈 17]、海水が温まって膨張すると海面上昇が発生する[60]。これに関しては下記のような予測や見積もりが為されている。

ここ1993-2003年の間に観測された海面上昇は、熱膨張による寄与がもっとも大きい(1.6±0.5mm/年)。ついで氷河と氷帽(0.77±0.22mm/年)、グリーンランド氷床(0.21±0.07mm/年)、南極氷床(0.21±0.35mm/年)とつづく。

日本沿岸では(3.3mm/年)の上昇率が観測されている[61]

第4次報告書(2007)では、最低18 - 59cmの上昇としているが、これは氷河の流出速度が加速する可能性が考慮されていない値である[62]。AR4以降の氷床等の融解速度の変化を考慮した報告では、今世紀中の海面上昇量が1?2mを超える可能性が指摘されている[63][注釈 18]

これにより、下記のような影響が出ることが懸念されている。

浸水被害の増加。オセアニアの島国ツバルヴェネツィアの歴史的建造物をはじめとし、東京、名古屋、大阪などを含む低い土地の水没、等々。

汽水域を必要とするノリカキアサリなどの沿岸漁業への深刻なダメージ。

防潮扉、堤防、排水ポンプなどの対策設備に対する出費の増加。

地下水位の上昇に伴う地下構造物の破壊の危険性、対策費用の増加。

地下水への塩分混入にともなう工業・農業・生活用水への影響。

海水温・海洋循環への影響「地球温暖化の影響#海水温・海洋循環への影響」を参照

地球規模の気温上昇に伴い、海水温も上昇する。これにより、下記のような影響が懸念されている。

生態系の変化。

水温の変動幅拡大に伴う異常水温現象の増加。太平洋熱帯域でのエルニーニョ現象の増強。

海流の大規模な変化、深層循環の停止。およびこれらに伴う気候の大幅な変化。

生態系・自然環境への影響「地球温暖化の影響#環境・生態系への影響」を参照

温暖化の影響は生態系にも大きな影響を与えることが懸念されている。

二酸化炭素の増加による生物の光合成の活発化。

生物の生息域の変化。

寒冷地に生息する動物(ホッキョクグマアザラシなど)をはじめとする、生物種の数割にわたっての絶滅。

サンゴの白化や北上(北半球)・南下(南半球)。

日本においては、ブナ林分布域の大幅減少や農業への深刻な影響。

社会への影響「地球温暖化の影響#社会への影響」を参照

人間の社会へも下記のように物的・人的・経済的に大きな影響と損害が出ることが懸念されている。

気象災害の増加(熱帯低気圧、嵐や集中豪雨)

気候の変化による健康への影響や生活の変化

健康への影響の例として熱中症がある。熱中症が起きるメカニズムは「外気温がある閾値を越えて著しく高くなると、中枢神経系の温熱中枢と、熱産生臓器や汗腺等の効果器による体温維持機能の低下により深部体温が上昇すること。」[64]となっている。このことから地球温暖化による気温の上昇はこういった熱中症患者を増加させてしまう。

低緯度の感染症マラリアなど)の拡大

雪解け水に依存する水資源の枯渇

農業、漁業などを通じた食料事情の悪化

地球温暖化は栄養不足を引き起こすという影響もある。これは、温暖化によって作物が上手く育たないことや、洪水などの災害の発生により食料不足になることから引き起こされると考えられている。他にも「最も強く影響を受けるのは乳幼児で、食べ物が入手しづらくなり栄養不良が拡大する」[65]と述べられている。特に発展途上国ではこの影響を受けやすい。

永久凍土の融解による建造物の破壊

日本でも60%の食糧を輸入しているため、国外での不作や不漁、価格変動の影響を受けやすく、食糧供給に問題が生じることが予想されている。

対策「地球温暖化への対策」を参照

地球温暖化への対策は、その方向性により、温暖化を抑制する「緩和」(mitigation)と、温暖化への「適応」の2つに大別できる[66]
緩和

地球温暖化の緩和策として様々な自主的な努力、および政策による対策が進められ[注釈 19]、幾つかはその有効性が認められている。現在のところ、その効果は温暖化を抑制するには全く足りず、現在も温室効果ガス(GHG)の排出量は増え続けている。しかし現在人類が持つ緩和策を組み合わせれば、「今後数十年間の間にGHG排出量の増加を抑制したり、現状以下の排出量にすることは経済的に可能である」とされる。

同時に、「今後20?30年間の緩和努力が大きな影響力を持つ」「気候変動に対する早期かつ強力な対策の利益は、そのコストを凌駕する」とも予測されており、現状よりも大規模かつ早急な緩和策の必要性が指摘されている(AR4 WG IIIスターン報告)。
適応
地球温暖化への対応の動き「地球温暖化への対応の動き」を参照

地球温暖化の影響は上記のように地理的にも分野的にも広い範囲におよぶため、それに対する対策もまた広い範囲におよぶ。根本的な対策として温暖化ガスの排出量の削減などの緩和策の開発・普及が進められているが、世界全体ではまだ排出量は増え続けており(AR4)、現状よりもさらに大規模な緩和を目指した努力が求められている。


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