地球温暖化
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地球温暖化は有史以前からあった[12]が、20世紀半ば以降の変化はかつてないほどの速度と規模で推移している[13]

2021年のIPCC第6次評価報告書では、気候変動が人間によって引き起こされていることは「疑う余地がなく明確である(unequivocal)」と述べられている[14]

また、IPCC第6次評価報告書によると、人為的な温室効果ガス(GHG)排出量は、2010年以降、全ての主要な部門では世界的に増加している。排出量のうち、都市域に原因特定しうる割合が増加している。GDPのエネルギー原単位とエネルギーの炭素原単位の改善による化石燃料と工業プロセスからのCO2排出量の削減は、産業、エネルギー供給、運輸、農業、及び建物における世界全体の活動レベルの上昇による排出量の増加を下回っている[15]

人間による影響が20世紀半ば以降に観測された温暖化の支配的な原因であった可能性が極めて高く、20世紀半ば以降の「人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない」[16]。人間の影響で最も大きいのは、二酸化炭素、メタン亜酸化窒素などの温室効果ガスの排出である。化石燃料の燃焼がこれらのガスの主な発生源であり、農業からの排出や森林破壊も重要な役割を果たしている[17]。これらの知見は、主要な先進国国立科学アカデミーで認められており、国内外の科学機関からも異論のないものである[18][19]

また、大気汚染物質には温室効果を持つものがあり、主に大気中寿命が短い物質のSLCPs(Short-Lived Climate Pollutants、短寿命気候汚染物質)が中心であり、ブラックカーボン(BC、すす、黒色炭素エアロゾル)、対流圏オゾン、メタン、一部の代替フロン類などがある[20]。一方で有機炭素(OC、Organic Carbon、すす)や、無機塩エアロゾルの硫酸塩エアロゾルなどの大気汚染物質には太陽光を遮り、寒冷化を促進させる効果がある[21]

地球温暖化の影響としては、海抜が低い陸地の浸水や海没などを発生させる海面上昇、降水量の局地的な変化、熱波や大規模な自然災害などの異常気象の頻発、砂漠化の進行などが挙げられる[22]北極圏では地表温度の上昇が最も大きく、これが氷河永久凍土海氷の融解に寄与している。また、氷河の融解が促進されると、海の水位が上昇し[16][23]、低い場所にあるキリバスやツバルといった小さな島国は沈んでしまう。ただし、現在ツバルで起きている浸水被害と地球温暖化の因果関係の立証は困難である[24][23]。全体的に気温の上昇は雨や雪をもたらすが、一部の地域では干ばつ山火事が増加している(気候変動)[25]。気候変動は作物の収穫量を減少させ、食糧安全保障に悪影響を及ぼす恐れがあり、海面上昇は沿岸のインフラ洪水をもたらし、多くの沿岸都市の放棄を余儀なくされる可能性がある[26]。海水面上昇による水没の危険は海岸地域から徐々に進行し、温暖化を放置した場合、数百年以上かけて東京湾伊勢湾大阪湾海抜ゼロメートル地帯にまで及ぶ[27]。環境への影響には、生態系の変化に伴う多くの種の絶滅や移転が含まれており、最も直接的にはサンゴ礁、山地、北極圏での影響である[28]。積雪量の減少、水蒸気の増加、永久凍土の融解などの影響の中には、地球温暖化の速度をさらに高めるフィードバック効果を引き起こすものもある[29]

二酸化炭素濃度の上昇による海洋酸性化は、温度によるものではないにもかかわらず、これらの影響と同様に分類されている。

地球温暖化に対処するための緩和努力には、低炭素エネルギー技術の開発と展開、化石燃料の排出量を削減する政策、森林再生、森林保全、さらには潜在的な気候工学技術の開発が含まれる。また、社会や政府は、海岸線の保護の改善、より良い災害管理、より耐性のある作物の開発など、現在および将来の地球温暖化の影響に適応するための取り組みも行っている。

この状況下で日本は、地球温暖化対策計画という2030年度において、温室効果ガス46%削減(2013年度比)を目指すことと、さらに50%の高みに向けて挑戦を続けることを表明した。また、2050年までのカーボンニュートラルの実現を法律に明記することで、政策の継続性・予見性を高め、脱炭素に向けた取組・投資やイノベーションを加速させるとともに、地域の再生可能エネルギーを活用した脱炭素化の取組や企業の脱炭素経営の促進を図る「地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案」を閣議決定した。

各国は、1994年に発効しほぼ全世界が加盟している国連気候変動枠組条約 (UNFCCC) の傘下で、気候変動対策に協力している。この条約の最終目標は、「気候システムへの危険な人為的干渉を防ぐ」ことである[30]。UNFCCCの締約国は、排出量の大幅な削減が必要[31]であり、2016年のパリ協定では地球温暖化を2℃ (3.6 °F) 以下に抑えることに合意[32]しているが、地球の平均地表温度はすでにこの閾値の約半分まで上昇している[33]。現在の政策や公約では、今世紀末までの地球温暖化は、気候が排出に対してどれだけ敏感かにもよるが、2℃強から4℃に達すると予想されている[34]。IPCCは、不可逆的な影響を回避するためには、地球温暖化を産業革命以前のレベルと比較して1.5℃以下に抑える必要があると強調している[35]。現在のGHG排出量が年間42ギガトン (Gt) であるとすると、1.5℃以下に維持するためのカーボン・バジェット(炭素収支)は2028年までに枯渇することになる[36]
用語

1980年代以前は、温室効果ガスの増加による温暖化効果が、大気汚染に含まれる空気中の微粒子による冷却効果よりも強いかどうかが不明であったため、科学者たちは、気候に対する人為的な影響を指すために、不注意による気候変動という用語を使用していた[37]

1980年代には、地球温暖化と気候変動という用語がより一般的になった。この2つの用語は互換的に使われることもあるが[37]、科学的には、地球温暖化は地表の温暖化の増加のみを指し、気候変動は地球の気候システムの変化の総体を表す[37]。地球温暖化(Global Warming)は1975年には使われていたが[38]、NASAの気候科学者であるジェームズ・ハンセンが1988年の米国上院での証言で使用した後、より一般的な用語となった[39]

様々な科学者、政治家、メディアは現在、気候変動について話すために気候危機や気候緊急事態という言葉を使い、異常気象による気候変動の代わりに地球温暖化という言葉を使う[40]
現在の状況世界の年平均気温偏差の経年変化(1891?2020年)[41]

地球表面の大気海洋の平均温度は「地球の平均気温」または「地上平均気温」と呼ばれ、地球全体の気候の変化を表す指標として用いられており、19世紀から始まった科学的な気温の観測をもとに統計が取られている。地球の平均気温は1906年から2005年の100年間で0.74(誤差は±0.18°C)上昇しており、長期的に上昇傾向にある事は「疑う余地が無い」と評価されている[42][43]。上昇のペースは20世紀後半以降、加速する傾向が観測されている[42]。これに起因すると見られる、海水面(海面水位)の上昇や気象の変化が観測され、生態系人類の活動への悪影響が懸念されている[42]


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