地球温暖化
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測定精度に関してはなお一部で議論もある[注釈 13]が、そのような誤差要因を考慮しても近年の温暖化は異常であり、気候システムの温度上昇は疑いようがないと評価されている[注釈 14]

2019年2月6日、世界気象機関WMO)は、2015年から4年間の世界の気温が観測史上最高だったことを確認した。また、2018年の世界の平均気温が産業革命前比で1度上昇し、過去4番目に高かったと発表した。2015年から4年連続で異例の高温が続き、上昇傾向が続き地球温暖化が進行している証拠だとしている。

WMOによると、2016年の平均気温の上昇幅は1.2度で観測史上最高を記録した。WMOのペッテリ・ターラス(Petteri Taalas)事務局長は、単年の記録の上位20位が過去22年間に集中しており、「長期的な気温の傾向は単年の順位よりもはるかに重要であり、長期傾向は上昇を示している」とした上で、「過去4年間の気温上昇は陸上と海面の双方で異常な水準にある」と述べた。ハリケーンや干ばつ、洪水といった異常気象の要因にもなったと指摘している[50][51]
原因各要因別の放射強制力の評価結果。正の値が大きいほど、地球温暖化を促進する効果が高いことを示す。最右端の人為的要因の合計に比べ、太陽放射の変化によるものは10分の1以下である。「地球温暖化の原因」を参照

地球温暖化は、人間の産業活動に伴って排出された温室効果ガスが主因となって引き起こされているとする説が主流である。『気候変動に関する政府間パネル』(IPCC)によって発行されたIPCC第4次評価報告書によって、人為的な温室効果ガスが温暖化の原因である確率は「90%を超える」とされる。

IPCC第4次評価報告書(AR4)は現在世界で最も多くの学術的知見を集約しかつ世界的に認められた報告書であり、原因に関する議論が行われる場合も、これが主軸となっている。

原因の解析には地球規模で長大な時間軸に及ぶシミュレーションが必要であり、膨大な計算量が必要である。計算に当たっては、直接観測の結果に加え、過去数万年の気候の推定結果なども考慮して、様々な気候モデルを用いて解析が行われる。解析の結果、地球温暖化の影響要因としては、環境中での寿命が長い二酸化炭素メタンなどの温室効果ガスの影響量が最も重要であるとされる。この他、エアロゾル、土地利用の変化など様々な要因が影響するとされる。こうした解析においては、科学的理解度が低い部分や不確実性が残る部分もあり、それが批判や懐疑論の対象になる場合もある[注釈 15]

実際のところ、数億年前まで遡って考えると、二酸化炭素濃度は現在より圧倒的に高い。しかしこのような不確実性を考慮しても、温暖化のリスクが大きいことが指摘されている。

人為的な温室効果ガス(GHG)源として、主要なものの一つとして食料システムが指摘されている。GHGの総排出量の約21?37%が食料システムに起因していると推定される。この推定値には、農場内での農作物や家畜の活動からの排出量が9?14%、森林破壊や泥炭地の劣化を含む土地利用や土地利用の変化から排出量が5?14%、サプライチェーン活動によるものが5?10%となっている[52]。これらの食料システムのうち、畜産に関する排出量はCO2換算で7.1 Gtで総排出量の14.5%に相当するとされる[53]。またメタンはCO2の28倍[54]の温室効果と言われるが、人為的メタン排出量のうち、44%が畜産由来のものとなっている[55]

また、食料ロスと廃棄物からの排出量も多く、GHG総量の8?10%とされ、生産される食料の25?30%が廃棄されているとされる[52]
IPCCによる評価結果化石燃料消費量と温室効果ガスの増加率世界の人為的CO2総排出量の推移。人為起源の二酸化炭素排出量は急増している。「IPCC第4次評価報告書」を参照

IPCC第一作業部会(WG I)による報告書 ⇒"The Physical Science Basis"(自然科学的根拠、AR4 WG I)が発行された。

この報告書は気候システムおよび気候変化について評価を行っている。多くの観測事実とシミュレーション結果に基づき、人間による化石燃料の使用が地球温暖化の主因と考えられており、自然要因だけでは説明がつかないことを指摘している。

二酸化炭素の増加は、主に人間による化石燃料の使用が原因であると指摘している。

二酸化炭素は、人為起源の温室効果ガスの中で、最も影響が大きい。この他、メタン一酸化二窒素、ハロカーボン類なども影響したと考えられている。

1750年以降の人間による活動が、地球温暖化の効果(正の放射強制力)をもたらしている。

20世紀半ばから見られている平均気温の上昇は、人為的な温室効果ガスの増加によるものである可能性がかなり高いと言われている。

それぞれの原因が気候に与える影響に関しては、科学的な理解水準が異なる。温室効果ガスに対する科学的理解度は比較的高いが、や太陽放射変化などの気候因子は理解水準がまだ比較的低い。専門家の間で意見が分かれる事柄もあり、報告書にも「意見の一致度」として評価結果が記載されている。

IPCC第6次評価報告書を参照

IPCC第6次評価報告書(IPCCだいろくじひょうかほうこくしょ、英: IPCC Sixth Assessment Report、略称: AR6)は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2021年から2023年にかけて公表した気候変動に関する評価報告書である。第6次評価報告書は、自然科学的根拠(WG1)、影響・適応・脆弱性(WG2)、気候変動の緩和(WG3)に関する3つの作業部会による報告書と、それらの知見を統合した統合報告書から構成される。また、特別報告書として、1.5℃特別報告書、土地関係特別報告書、海洋・雪氷圏特別報告書、温室効果ガスインベントリに関する2019年方法論報告書がある。
第1作業部会(WG1)- 自然科学的根拠

第1作業部会(WG1)は、「気候変動 - 自然科学的根拠」をテーマとして扱う。この報告書は、2021年8月9日に公表された。この報告書では、以下のような主な知見が示された。

人為的な温室効果ガス排出が地球温暖化の主要な原因であることは、今や「不可逆的な証拠」である。

2019年の地球の平均表面気温は、1850-1900年の平均に比べて約1.1℃高く、過去100万年間で最も高い水準に達している。

2010年代の大気中の二酸化炭素濃度は、少なくとも200万年間で最も高く、メタン濃度は少なくとも80万年間で最も高い。

今世紀末までに1.5℃の温暖化を限定するためには、2020年から2050年までに人為的な二酸化炭素排出を実質ゼロにする必要がある。

1.5℃の温暖化を超えると、極端な気象現象や海面上昇などの影響が顕著に増加する。

今後数十年間は、どのような排出シナリオでも温暖化が続くことがほぼ確実である。ただし、排出削減の速度や規模によって、温暖化の程度や影響は大きく異なる。

第2作業部会(WG2)- 影響・適応・脆弱性

第2作業部会(WG2)は、「気候変動 - 影響・適応・脆弱性」をテーマとして扱う。この報告書は、2022年2月28日に公表された。この報告書では、以下のような主な知見が示された。

気候変動はすでに自然と人間のシステムに広範な影響を及ぼしており、その多くは観測されている。

1.5℃の温暖化では、AR5に比べてより高い確信度で影響の増加が予測される。2℃の温暖化では、さらに大きな影響が予測される。

気候変動の影響は地域や分野によって異なり、不平等や不公平を悪化させる可能性がある。特に貧困や脆弱性の高い人々や地域は、気候変動によるリスクにさらされやすい。

気候変動への適応は、影響を軽減し、持続可能な開発や気候変動の緩和に貢献することができる。しかし、適応の限界も存在し、一部の影響は避けられない。

気候変動への対応には、科学的知識だけでなく、文化的・社会的・制度的・政治的・経済的な要因も重要である。気候変動への対応は、多様な主体やスケールでの協力やイノベーションを必要とする。

第3作業部会(WG3)- 気候変動の緩和

第3作業部会(WG3)は、「気候変動 - 気候変動の緩和」をテーマとして扱う。この報告書は、2022年4月4日に公表された。この報告書では、以下のような主な知見が示された。

気候変動の緩和は、気候変動によるリスクを低減し、持続可能な開発や気候変動への適応に貢献することができる。

気候変動の緩和には、温室効果ガス排出源や吸収源の管理、エネルギー・産業・交通・建築・土地利用などのシステム変革、技術的・社会的・制度的・行動的イノベーションなどが必要である。

今世紀末までに1.5℃の温暖化を限定するためには、2050年までに世界全体で二酸化炭素排出を実質ゼロにすることが必要である。そのためには、2030年までに世界全体で二酸化炭素排出を2010年比で45%削減することが必要である。

1.5℃や2℃の温暖化限定シナリオでは、再生可能エネルギーが2050年までにエネルギー供給の約70?85%を占めることが予測される。また、エネルギー効率や電気化などの措置も重要である。

気候変動の緩和には、多様な主体やスケールでの協力や責任分担が必要である。また、気候変動への対応は、社会的・経済的・環境的なコストや便益、公正性や包摂性などを考慮する必要がある。



影響要因としくみ二酸化炭素濃度の過去80万年の変化と産業革命以降の急激な上昇。二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素の推定排出量と大気中濃度測定平均値の増加率「地球温暖化の原因#影響要因としくみ」を参照

気候システムは、自然の内部的プロセスと外部からの強制力への応答との両方によって変化する。外部強制力には人為的要因と非人為的(自然)要因がある。その外部強制力には、下記のようなものがある。

温室効果ガス:主に二酸化炭素メタン、ハロカーボンなど。


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