地球温暖化の原因
[Wikipedia|▼Menu]
□記事を途中から表示しています
[最初から表示]

農業由来の温室効果ガス(GHG)の排出源別排出量(CO2換算)[32][33]

農林業・土地利用全体から排出されるGHGは直接排出量は総排出量(CO2換算)の約24%とされ、エネルギー利用で間接に排出量されるGHGは全体の0.87%に相当する。農畜産業および土地利用、貯蔵、輸送、包装、加工、小売および消費など食料に関わる全て合わせた食料システム活動からのGHG排出量は最大37%になるとされる[34]。この推定値は、農場内での農作物や家畜の活動からの排出量が9?14%、森林破壊や泥炭地の劣化を含む土地利用や土地利用の変化からの排出用が5?14%、サプライチェーン活動による排出量が5?10%となっている[35]。供給側からの主な排出源は農畜産であり、農畜産業の中で反芻家畜の消化管内発酵が40%(CO2等価)、家畜糞尿が16%と農畜産業全体の56%と畜産が多くを占めている [36]。農場内の作物及び畜産活動から年142+-42Tgのメタン(CH4)と年8.0+-2.5Tgの亜酸化窒素(N2O)を排出し、CO2排出量は森林減少および泥炭地劣化などの土地利用変化からは年4.9±2.5 GtCO2/年を排出している[35]。2016年の農畜産部門に関連しているのはGHG全体の21%にすぎないが、電力などエネルギー部門からの排出は、エネルギー利用効率の向上と再生可能エネルギー源への移行によって、ゼロにまで削減することが可能である。また人口増加や経済発展により食料生産量は増加すると予想され、また、農畜産は複雑で多様な生物的物理的プロセスのため削減することは困難である。そのため、必然的に農業部門のGHGの排出量割合が大きくなっていく[37]。IPCCによると農畜産と食料システムの排出量削減のために対処をしない場合、2050年までに約30-40%増加する可能性が高いとされる[35]。また、IATPの試算によると2050年には世界全体のGHGが51Gt(2016)から13Gtに減少する一方、畜産の排出量は7.14Gt(2016)から10.53Gtに増加し、全体の81%を占めるようになると予測している[38]。農畜産からの排出と吸収源は、地球規模の炭素と窒素の循環の一部である。したがって、農畜産部門の緩和可能性を最適化するためには、これらの循環と農業活動がこれらとどのように相互作用するかを理解することが必要である[37]。農畜産と食料システムは、地球規模の気候変動への対応の一つの鍵である。効率的な生産、輸送、加工などの供給サイドの行動と、食料選択の修正、食料ロスと廃棄物の削減などの需要サイドの介入を組み合わせることで、GHG排出量を削減し、食料システムの強じん性を高めることが可能だとされる[35]

2021年には、食糧農業機関(FAO)の、持続可能な食料システムを維持するために、価格を歪め環境に配慮しない金融支援の問題に関する報告書の中で、農畜産への金融支援について、パリ協定の目標を達成するためには、特に高所得国において、世界の温室効果ガス排出量の14.5%を占める巨大な食肉・酪農産業への支援を転換する必要があり、低所得国では、有毒な農薬や化学肥料や、単一栽培への支援の転換が必要であるとしている[39]
畜産家畜とメタンの増加率

FAO(国際連合食糧農業機関)は、家畜生産に起因する温室効果ガス排出は、農業排出の3分の2(約65%)に達すると指摘して、増大する世界人口を賄う生産とゼロエミッションへの努力を強く求めている[40]

世界全体では、腸内発酵と厩肥管理によって年間2.9?5.3 GtのGHGが発生している。家畜の中でも牛が主要な発生源であり、家畜からの排出量の65-77%を占めるとされる。牛肉は、牛乳、豚肉、卵、すべての作物製品と比較して、タンパク質1 kg当たりを生産するのにGHGの排出量が最も多く非効率的であるとされる[35]。2018年10月、気候変動に関する政府間パネルはレポート「Global Warming of 1.5 oC」の中で、「肉の消費量が健康ガイドラインより多い場合には、肉やその他畜産物の需要をターゲットにすることで、食品システムからの総排出量を減らすことができるという合意が高まっています。」[41]と述べるなど消費量を減らすことが求められている。

排出地域では、発展途上国の排出量が多い傾向にあり[42][43]、家畜の排出量のうち低・中所得国の家畜は反すう動物からの排出量の70%、単胃動物(豚や家禽のような反すう動物の消化過程をもたない動物)からの排出量の53%を占めており、これらの国では畜産物の需要が増加するにつれてGHGも増加すると予想されている[35]。南アメリカとカリブ海諸国は、年間1.3 GtのCO2を排出し、家畜からのGHG排出量の中で最も高い割合を占めている。一方で西欧と北米は家畜生産からのGHG排出量は0.6Gtと少ないが北米では家畜の排出量の3分の2が牛肉の生産に関連している[34]

日本の家畜からは0.014Gt(消化管内発酵、家畜排せつ物等、家畜排せつ物 の管理 の合計)が排出されている[44]。また、1997年の研究では植物を食べる家畜(動物性たんぱく質)を育て、食肉生産する過程で使われる化石燃料(石炭・ガスなどで燃やすと二酸化炭素、窒素酸化物など発生させる)は、大豆などの植物性たんぱく質の生産過程使われる化石燃料より8倍多く必要とされるとの研究がある[45]

GHG削減対策として、腸内発酵の抑制する技術により、世界全体で年間0.12?1.18 Gtが削減でき、厩肥管理の技術開発により、世界全体で年間最大0.26 Gtである。これらの技術開発により2050年までに農畜産業からの排出の42%が緩和できる可能性を持っている[34]

また、例えば野菜中心の健康的な食事に切り替えることで、土地部門からの排出量を世界全体で年間0.7?8 Gt CO2e削減できる[35]。健康的で持続可能な食事の例としては、エネルギー消費の多い動物由来食品や、嗜好品的食品(甘味飲料など)の量が少なく、雑穀、豆類、野菜及び果物や、ナッツ及び種子が多く、炭水化物の閾値がある食事など。もし、世界人口の半数が肉からのタンパク質の量を1日60gに制限した食事をした場合、GHG排出量を2.2Gt削減することが出来るとされる[34]。2018年、Scienceに掲載された論文[46]によると各食品の二酸化炭素排出量を算出したところ、豆が0.4kg、牛乳1.6kg、卵2.1kg、家禽肉2.9kg、豚肉3.8kg、牛肉17.7kg(タンパク質50gあたり)という結果であった。また、乳製品は豆乳やライスミルク、アーモンドミルクと比較して約3倍の温室効果ガスを排出すると試算されている[47]。2016年のオックスフォード大学は「食肉消費を大幅に削減すれば、環境にも健康にもよく、温室効果ガスを最大3分の2削減、世界全体で約242兆円のコストを節約できる可能性があるという研究を発表した[48]

また、代替肉(植物製品由来)、培養肉などが注目されているが[49]、IPCCは代替肉(植物製品由来)、培養肉、昆虫などの肉の類似品は、カーボンフットプリントや受容性が不確かであるとしている[35]

食肉を大量生産をする食肉会社も問題とされ、2017年のランドマーク調査によれば、家畜を大量生産をする食肉会社大手のJBSカーギルタイソン・フーズの3大企業は、2016年にフランス全土よりも多くの温室効果ガスを排出したと試算した。大量生産大量消費ではなく小規模で適切な量の肉や乳製品を提供する持続可能なものへとシフトし、公的資金を小規模な事業の支援へ向けるべきだとしている[50]
土地利用温室効果ガスと土地利用の増加率

森林とサバンナの食料及び飼料生産への開発転換は、2010年の食料部門からの全GHG排出量の19%(CO2換算2.67 Gt )に寄与した。自然の草原やサバンナは森林よりも開発が進んでいるが、そこには450Gtの炭素(地表に含まれる炭素の5分の1)を貯蔵してるとされる。それらの開発転換(森林減少、森林劣化、泥炭地転換、沿岸湿地転換)を減少さることで、年間4.6 GtのCO2削減が見込める[34]
畜産の土地利用

家畜の土地利用には、放牧地と飼料作物や飼料の生産に供される耕作地が含まれる。実際、畜産(放牧地と飼料作物の生産に使われる耕作地を含む)はすべての人為的土地利用の中で最大のものであり、その総面積は広大で2004年時点で全農地の70%であり[18]、2019年には77%まで拡大していおり、それは地球上の氷のない地表面の30%に相当する[51]。しかし、氷のない地表面の内41%が乾燥地帯であり、これらの土地の大部分は乾燥や低温によって作物を作るには不向であり、人もあまり住まないような土地である[52]。そこに世界の家畜全体の50%が存在しているとされる[53]
耕作地

水田からのメタン排出、泥炭地栽培からのCO2排出、肥料施用からの亜酸化窒素 (N2O)排出を含めたGHGは年2?3 Gt(CO2換算)と推定される。その3分の2は泥炭地の劣化に関連したものであり、次い多いのが合成肥料からのN2O排出、次に水田からのメタン排出である。アジア地域からの排出は多くとくに、インド、中国、インドネシアから多く排出されており、世界全体の耕作地からの排出量の約50%を占めるとされる[35]

また、土を耕すことでも温室効果ガスの排出に違いがあり、耕した土壌は、耕さない土壌よりも地球温暖化への寄与率が20%大きくなるとされる[34]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:98 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef