地球温暖化の原因
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世界の温室効果ガス(GHG)排出量は49Gt(CO2換算)であり、直接排出量で換算すると、エネルギー供給部門(発電・熱生産+その他エネルギー)は35%、農林業・土地利用部門は24%、産業部門は21%、輸送部門は14%、建築部門は6.4%という内訳になっている。発電・熱生産を間接排出量で換算した場合、エネルギー需要部門に分配され、産業は31%、建築は19%に増加する[4][5]

実際、温室効果ガスは現在の地球を平均約14℃の「温室」状態に保っており、それが存在しなければ地球の温度は現在よりも約30℃低くなり[6]、高等な生物が存在することが不可能になると考えられている。

温室効果ガスごとに地球温暖化への影響力は異なり、放射強制力で表される。二酸化炭素メタンは環境中での寿命が長く影響力も大きいとされる一方、水蒸気のように相反する効果を併せ持つものもある。

水蒸気とオゾンを除いたほぼすべての温室効果ガスは、炭素原子を含む物質であり、温室効果ガスの濃度を考える上で、地球上での炭素循環のシステムを理解することが重要とされる。また複数の温室効果ガスを合算して取り扱う際は、二酸化炭素または炭素の量に換算する場合が多い。
温室効果ガスの排出と大気中の濃度大気中の温室効果ガスの増減傾向。各月の計測から、小規模の季節変化が示されている

化石燃料の燃焼、セメント製造時の石灰石(およびドロマイト等)の焼成プロセス、土地利用の変化などによって、毎年約73億トン2004年炭素換算ベース。2000年オークリッジ国立研究所による二酸化炭素換算の推計では230億トン。)の二酸化炭素が人為的に地球の大気中に排出されている。炭素循環全体を見ると、毎年約2,100億トンの二酸化炭素が自然界から排出され、約2,138億トンの二酸化炭素が自然界に吸収されている。この差分が人為的な排出の吸収分で、人為的な排出量のおよそ半分(35億トン)程度の二酸化炭素が、毎年大気中に増えていると考えられている[7]

大気中の濃度は、1750年の産業革命が始まってから、二酸化炭素は31%、メタンは149%分増加(2001年、WDCGGによる)している。これは、氷床コアから得られた信頼できるデータが得られている過去65万年の間のどの時期よりも高い。二酸化炭素がこれよりも高い値を示すのは、間接的なデータであるが4千万年前までさかのぼるとされている。二酸化炭素濃度を最も長期にわたって実際に計測しているのは、マウナ・ロアの観測からであり、1958年に始まった。マウナ・ロアのデータでは年間平均値は315ppmから単調的に増加し(キーリングのカーブ)[8][9]、2015年には濃度は400ppmに到達したが[10]、南極でもほぼ同様の変化を見せている[11]

火山など自然要因の増加も考えられるが、IPCC第4次評価報告書ではその影響量は人為的なものに比べて少ないとされている。これに対して異論を唱える者もいるが、学術的に広く認められてはいない(#懐疑論・異論の節を参照)。
二酸化炭素ハワイのマウナロアで1958から2004年までに観測した大気中の二酸化炭素濃度(絶対基準表示)二酸化炭素の量による赤外線(熱)の吸収と放出と、地球へ戻る赤外線を表した図[12]

二酸化炭素は温室効果係数が小さいながらも環境中での寿命が長いこと、地球放射スペクトルに対する吸収波長の重なりが大きいことから、放射強制力が大きいとされる。

人為的に発生する二酸化炭素量は、石炭を用いた火力発電自動車の排気ガス、工場の排気など化石燃料の燃焼がもっとも多い。熱帯雨林を破壊する焼畑農業も主要な原因であると考えられている。また火山活動や山火事など、自然現象によっても発生する。2006年の国際連合食糧農業機関(FAO)の報告では、二酸化炭素の9%が畜産から発生しており、交通から発生するよりも多い[13]

世界自然保護基金(WWF)は、2030年までに、最大でアマゾン熱帯雨林の60%が破壊され、この影響で二酸化炭素の排出量が555億トンから969億トンに増える可能性があることを報告した[14]。2006年の国際連合食糧農業機関(FAO)の報告では、伐採された森林の90%が放牧地へと転換されている[13]

二酸化炭素は海中にも直接取り込まれ、降雨に溶け込み湖沼に流れ込み、最終的に海洋にも流れ込む。海中のサンゴ炭酸カルシウムなどとして海水含有分から取り込まれ、森林の木々の組成には大気中や地中の水分などから固定される。この両者の固定されている炭素量は、人類による環境破壊や資源としての利用の結果、年々減少傾向にあり、そのことも、間接的にも人為的に二酸化炭素を増やす要因となっている。

人間の呼吸からも二酸化炭素は発生し、一人が1日に排出する二酸化炭素を約1kgとすると1年間に全人類が吐き出す二酸化炭素の量は約24億トンの計算となる。これは化石燃料の消費によって全世界から排出される二酸化炭素量の約9%に相当する。しかし、人間が体内に取り入れる炭素は、植物や植物を食べる動物などの食物から摂取する有機物からであり、元は植物が太陽エネルギーと二酸化炭素を利用して光合成によって生産したものである。よって人間の出す二酸化炭素はカーボンニュートラルとなる計算となる[15]

なお、二酸化炭素の増加そのものが生態系に及ぼす影響も指摘されている(地球温暖化の影響#主たる報告書の概要を参照)。
メタン

排出されるメタンガスは温室効果ガスの約16%占める。大気中に放出されるメタンの約40%が湿地やシロアリからなどの自然起源であり、60%が畜産や稲作、化石燃料採掘、埋め立て、バイオマス燃焼などの人為起源である[16][17]。地球上に排出または発生するメタンガスは、野牛や家畜の牛・羊などによる呼吸だけで25%を超え、他に肥料、天然ガス水田ゴミ埋め立て化石燃料燃焼などで年に2億5千万トンが放出されている。2006年のFAOの報告では、メタンガスの37%が畜産から発生しており、主に反芻動物の消化器官から発生している[18]。そのため現在、家畜においては、バイオテクノロジーによる飼料の開発が進められている。海底から噴出するメタンに限定するなら、単体のメタン同様、近年、海底内に大量に存在することが発見されたメタンハイドレートによる影響も、(発見されて間もないために調査不足ながら、)少なからずあるとの主張も出てきている(構造や生成原因などについては、メタンハイドレート参照)。深海部の平均水温が2-3℃上昇すると、海水に接しているメタンハイドレートが一気にメタンガスに変わり、メタンハイドレートの160倍以上のメタンとなるとされる。さらに、海底部の水温が上昇する環境下では、海水全体の温度が上昇し、二酸化炭素同様、メタンが水中に溶けきれず、空中に放出されてしまう。メタン単体は温暖化係数(電磁波の吸収率)が高く、温暖化現象を促進する。また、それがさらに海水温を上昇させ、ハイドレート融解に影響するといった形で、悪循環(正のフィードバック)にもつながるとされる。

メタンの赤外吸収のピーク波長は 7.6μm 付近にあり、水蒸気や二酸化炭素による赤外吸収がほとんどない窓領域と呼ばれる波長領域(8 - 14μm)に一部吸収が重なるため、微量ながらも温暖化効果は比較的大きいとされる。
一酸化二窒素

一酸化二窒素(N2O)または亜酸化窒素と呼ばれる主要な温室効果ガスである。排出量は少ないが強い温暖化効果を持つ。海洋や自然土壌からの自然起源が約60%、農場での窒素肥料や家畜からの堆肥製造、バイオマス燃焼、化石燃料などの人間活動から約40%が排出される[16][19][20]。2006年のFAOの報告では、亜酸化窒素の65%が畜産から発生し、主に排泄物から発生する[18]
水蒸気

水蒸気の赤外線吸収量は二酸化炭素やメタンに比べると桁違いに大きい[21]。加えて地球では大気中に大量に存在する。なお大気中の水蒸気量は気温に大きく依存する。


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