地球寒冷化
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しかし近年の科学的かつ世界的に広く認められた複数の調査結果は、長期的には寒冷化ではなく、地球温暖化が進行していると結論付けている[26][27][28][29][30][31][32][33]#現在の知識の水準節を参照)。またIPCC第4次評価報告書にて評価された全ての気候モデルにおいて、近い将来に寒冷化が始まる可能性が否定されている[34][35]1937年 - 1946年の平均気温に対する、1965年 - 1975年の平均気温の変化。この期間は寒冷化が進んだ地域が多かったことが分かる。世界の年平均気温の偏差の経年変化(1891?2010年)[36]
20世紀半ば以降の地球寒冷化の議論の経緯
1970年代以前

ミッチェル(J. Murray Mitchell)は、 1940年から数十年規模で寒冷化していると1963年に示した[37]。1965年にコロラドで開かれた気候変動に関する会議では、予測された太陽活動の僅かな変化が、どれぐらい氷期のきっかけになるのかの憶測が、ミランコビッチサイクルを裏付ける兆候があったことで巻き起こった。1966年にはエミリアーニ (Cesare Emiliani) は「新しい氷期が2、3千年以内に始まるだろう」と予測していた。1968年の「人口爆弾[38]」では、「二酸化炭素の量の急増で現在温室効果がさらに高まっている。…これは、飛行機雲、チリ、その他汚染物質による低層雲によって打ち消される。今のところ、大気をゴミ処理場のように使っていたことが、どんな気候をもたらすかは予測できない[22]。」とされていた。
1970年代の認識1975年における気温データ。次の図と比較せよ。地球全体の平均気温の記録

人為的温暖化の可能性が査読付論文では主流であった[1] が、1970年代に寒冷化への関心は最も高まった。(1945年から20年ほどの気温低下傾向は、数十年の気温上昇の後に、谷に到達したことを示唆している。)この関心の高まりは、世界の気候や、氷期の原因について知られていなかったことに依るものである。しかし、気候学者たちは、この傾向に基づく予測は不可能であることを認識していた。なぜなら、この傾向は研究されておらず理解もされていなかった(例えば[39])。それにも関わらず、一般紙においては、寒冷化の可能性が当時の科学的報告による注釈なしで報道されていた。そして、「1972 - 73年にかけてのアジアや北米の一部での異常に寒い冬が、一般の意識にすりこまれた[1]」。1970年代には、全球、半球の気温データの集計が始まった。ワートによる「温暖化の発見とはなにか[40]」では、「1970年代には、科学者も大衆も地球が温暖化してきたか寒冷化であったのか確かではなかったが、地球の気候が変化しつつありそれが僅かなものではないと徐々に信じるようになってきた。」としている。1972年にエミリアーニは「人間活動は新たな氷期の到来を早めるか、氷帽の大幅あるいは全量の融解を引き起こすかもしれない。」と警告している[41]。同年、氷河期研究の専門家達は「温暖期の終焉は疑うことなく近い(undoubtedly near)」と同意した[42]。しかし、同じ会議の第四紀の研究報告の版では、「この部会の議論で見いだされる結論としては、気候変動のメカニズムを理解するために必要な知識は残念ながら不十分である」と述べている。人間活動による影響がなくても、本格的な寒冷期が「数千年・数世紀の内に予測される」と考えていた。しかし、他の多くの研究者達はこの結論を疑っていた[43][44]同年、ククラ(George Kukla)とマシュース(Robert Matthews)はサイエンス誌上での会議報告で、いつどのように現在の間氷期が終わるのかを問いかけ、「人間が有史以来経験してきた変動幅を大幅に超える地球寒冷化とそれに関連する環境の急激な変化は、数千年から数世紀のうちに生じるに違いない」と結んでいる[45]
1970年の「重要環境問題研究」

1970年の「重要環境問題研究」(SCEP)[46]では、二酸化炭素の増加によって温暖化する可能性に触れているが、寒冷化への懸念については触れず、「地球寒冷化」に関心が払われなかった。
1971年の温暖化と寒冷化の要因に関する論文

1971年7月、S・イチティアク・ラスール (S.Ichtiaque Rasool) とスティーブン・H・シュナイダーによる論文が、雑誌「サイエンス」で発表された。この論文は「大気中の二酸化炭素とエアロゾル:大きく増加する地球的気候への影響」と銘打たれ、将来起こり得る二つのタイプの人間の環境における排出物の影響を模索している。
二酸化炭素などの温室効果ガス。

スモッグなどの微粒子による汚染。それらの一部はエアロゾルとして数年間大気中に浮遊する。

温室効果ガスは、地球温暖化を促進する本当の要因と考えられそうだが、一方で微粒子による汚染は太陽光をさえぎり、寒冷化を進める。論文において、ラスールと シュレイダーは、予測可能な未来においてエアロゾルは、温室効果ガスよりも気候変動に影響しやすい、と言う説を立て、エアロゾルが四倍になれば、「(地球の)平均気温が3.5℃も下がりうるだろう。もしこれが何年間か続いたら、このような気温低下は氷河期を引き起こすのには十分なものになりうるだろう」と明言した。 この一節が示すように、ラスールとシュナイダーは地球寒冷化を、将来起こりうる筋書きと考えていたが、寒冷化の「予測」までは行っていなかった。
1974年及び1972年の科学委員会

ワシントン・ポストに発言の一部が掲載された中に、後のエネルギー省長官のジェームズ・シュレジンジャーは、1974年に米国科学審議会において、米国科学財団の理事会が次の様に明言したことを記している[47]。「過去20年から30年の間、地球の気温は下がってきており(1974年現在)、それも最初は不規則的だったが、ここ十年間ではっきりしてきている」

この内容は正しいものだが(過去の気温変化を参照)、ワシントン・ポストは、この意見に賛成ではなかった。ワシントン・ポストは、審議会がその時よりも二年前に次のようなことを、すでに認識していたと述べた。「過去の間氷期の記録から判断すると、今の気温の高い時代は終焉を迎えるはずで、(省略)次の氷河期に向かっていくだろう」

しかし、この文章は前後関係を無視した引用で、誤解を生じさせるものであった。完全な文章は以下の通りであった。「過去の間氷期の記録から判断すると、今の気温の高い時代は終焉を迎えるはずで、(省略)次の氷河期に向かっていくだろう。だがしかし、人間による干渉が環境を変える可能性よりも、気候パターンが予想と違う軌道を描く可能性の方が高く、そうなりやすいとさえ言える(後略)」
1975年の全米科学アカデミーの報告

全米科学アカデミー (NAS) による、更に研究が必要な問題に関しての報告があった[48]。これは、気候が変化すると言う事実に対して興味を向けた。1975年、NASによる「気候変化の理解。問題と対策」と言う題名の報告は予測を行っておらず、次の事実を述べていた。「我々は、気候のメカニズムや、何が気候の変化を決めているかの定量的な理解がされていない。基礎的な理解を行わずに、気候を予測することは不可能であると考えられる」。その「計画とやるべきこと」は、「気候変動の定量的評価に必要な情報を収集し、十分に調整され期待できる数値モデルの使用することである」ため、更なる研究を単に呼びかけた。

その報告は、更に次のように述べていた。.mw-parser-output .templatequote{overflow:hidden;margin:1em 0;padding:0 40px}.mw-parser-output .templatequote .templatequotecite{line-height:1.5em;text-align:left;padding-left:1.6em;margin-top:0}「地球の気候は常に変化しており、将来もこの変化は間違いなく続く。将来これらの変化がどれだけ大きく、どれだけ広く、どれだけ急速に生じても、我々は知ることはできない」

これは、科学及び環境政策プロジェクト (Science & Environmental Policy Project、SEPP) による発言、「NASの『エキスパート』は、1975年の報告で恐怖で取り乱している」と対立していた[49]
1975年のニューズウィークの記事

これらの議論が科学者の集まりで行われている間、一般メディアではさらに劇的な事態が生じていた。1975年4月28日、ニューズウィークマガジン[50]の「寒冷化する世界」と言う題名の記事が、「地球の気候パターンが変化しつつあると言う不吉な前兆」と言う点や、「1945年から1968年の間の北半球の平均気温が華氏温度で半分になった」と言う点を指摘した。この記事は「これらの(地球寒冷化の)予測を裏付ける証拠は、それを集めるために気象学者が大変な状況になるくらい、現在大量に収集が始まっている」と述べた。「ニューズウィーク」の記事は寒冷化の原因については述べていなかった。ただ、「氷河期の大小の要因が何かと言うのは謎である。」と述べ、NASの結論「基本的な科学的な疑問はほとんど回答できない。ほとんどの場合、我々は根本的な問題に焦点を当てるほど知識が無いのだ。」と言う文章を引用した。

その記事では、「黒いすすに覆われ氷河が解けるか、氷河の進路を変えるか」の2者択一の解を示していた。


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