地方自治特別法
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直接請求制度に基づく住民投票

地方自治法や市町村合併特例法等の規定による直接請求制度に基づく住民投票制度がある[1]
地方自治法詳細は「リコール (地方公共団体)」を参照

地方自治法では直接請求のうち、議会の解散(第76条?第79条)、議員の解職(第80条、第82条?第85条)、首長の解職(第81条?第85条)について有権者の一定数の署名を集めて請求した場合、住民投票に付さなければならない規定がある[1]

住民投票に必要な署名の数は、普通地方公共団体の有権者の数によって異なる。
有権者の数が40万人以下の場合
有権者の数をxとすると x 3 {\displaystyle {\frac {x}{3}}}
有権者の数が40万人を超え80万人以下の場合
有権者の数をxとすると 400000 3 + x − 400000 6 {\displaystyle {\frac {400000}{3}}+{\frac {x-400000}{6}}}
有権者の数が80万人を超える場合
有権者の数をxとすると 400000 3 + 400000 6 + x − 800000 8 {\displaystyle {\frac {400000}{3}}+{\frac {400000}{6}}+{\frac {x-800000}{8}}}

請求が成立したときは選挙人の投票に付され、告示の日から60日以内に行われなければならない(地方自治体施行令第81条第2項・第100条の2・第113条)。投票の告示は、都道府県に関するものは30日前、市町村に関するものは20日前までに告示しなければならない(地方自治法施行令第116条の2)。

選挙には公職選挙法の普通地方公共団体の選挙に関する規定が原則的に準用される(地方自治法第85条第1項)。
合併特例法の規定に基づく住民投票詳細は「直接請求#合併協議会設置の請求」を参照

2030年3月31日までの時限措置である合併特例法(「市町村の合併の特例に関する法律」)には、住民発議による合併協議会設置の直接請求が出来る規定があり、有権者の50分の1の署名が必要である。

この直接請求に対して議会が否決した場合、首長による投票に付する旨の請求があった場合、住民投票が行われる。また首長が投票に付さない場合でも、有権者の6分の1の請求によって住民投票を実施する規定がある。

なお、上記いずれの場合においても、合併関係市町村の議会のうち合併設置協議会設置協議について否決ないし議決しない団体の全てが住民投票を行う場合に限って、住民投票を行う(否決ないし議決しない団体のいずれか1つでも住民投票請求がなかった場合は住民投票は実施しない)。

この請求は、あくまで合併協議会設置の請求であって、合併そのものについては関係市町村の議会の議決が必要である。

単独請求型では、住民投票の請求のあった旨の告示があったとき、その他の場合は、合併協議会設置議案が議会で否決された団体全てで住民投票の請求があった旨の報告のあった旨の告示があったときから40日以内に実施する。告示は投票日の10日前まで行う。

投票は、投票用紙の所定の欄に「賛成」または「反対」と記載して投票する。

投票運動に関する規制は、おおむね解散及び解職に対する住民投票に関する規制に準じている。
改正前の合併特例法による住民投票

2005年4月から2010年3月まで施行されていた改正前合併特例法では、都道府県知事が定める市町村合併推進構想に基づき定める組合せに基づき、都道府県知事が合併協議会を設置するよう勧告した場合で市町村の議会が合併協議会設置協議について可決しない場合等は、市町村長の要求または住民の6分の1以上の直接請求により合併協議会設置に関する住民投票が可能であった。しかし、同制度に基づく住民投票の実施例は実際にはなかった。
条例に基づく住民投票詳細は「住民投票条例」を参照

地方公共団体は住民投票に関する条例を制定して住民投票を行うことがある[1]。通常は市町村合併の是非など問題とされている案件のみを対象とした特別の住民投票条例に基づいて行われる[1]。一方で重要な政策について常設型の住民投票条例を制定している地方公共団体もある[1]
その他の法令に基づく住民投票
大都市地域における特別区の設置に関する法律に基づく住民投票

道府県の区域内において特別区を設置する場合、特別区が設置される道府県の議会及び特別区が設置されることとなる市町村(以下「関係市町村」という)の議会の承認を経た上で、関係市町村で選挙人の投票を実施しそれぞれの市町村で有効投票の過半数の賛成を要することとされている。

この法律に基づいて、大阪市において2回住民投票が行われ、いわゆる「大阪都構想」の是非を問うこととなった。

2015年5月17日大阪市における特別区の設置についての投票が実施され、否決という結果が出た。

2020年11月1日大阪市を廃止し特別区を設置することについての投票が実施され、否決という結果が出た。

旧警察法の規定による住民投票

1947年から1954年まで施行されていた旧警察法及び市の警察維持の特例に関する法律[注 1]では町村が運営する自治体警察を住民投票で廃止または復活することができた。
日本以外の国での住民投票制度

スイスアメリカ(一部の州に限る)等の国では、住民投票による直接立法も行われる。

台湾(中華民国)における「国民投票」については、マスコミなどにおいて「公民投票」、もしくは「公投」と呼ぶことが一般的である。

1回の投票で賛成か反対かを決することから、政情不安の国では住民投票が終了しても「賛成派」と「反対派」の対立が継続し、内戦暴動につながる場合もあり[2][3]、かえって民主主義を損なう危険性がある。

また、否決された側が、裁判所に提訴し住民投票の正当性を問う事例も見られる[4][リンク切れ]。
アメリカ合衆国

により重要な政策決定(例えば、死刑廃止)で住民投票が行われることがある。
スイス詳細は「国民投票#スイス」を参照

スイスの直接参政権の主軸は、国民投票である。住民投票は、国民投票に取り込まれる形で、形骸化しつつある。

スイスの住民投票にあたる参政権は、「ランツゲマインデ」である。[5]ランツゲマインデを実施している州は、アッペンツェル・インナーローデン準州グラールス州の2つの州であり、毎年4月の最終日曜日に行われている。主な議題は、州の政治課題への賛否と、州議員や州判事の選出である。意思表示の方法は、有権者による挙手であり公開投票であることから、有権者の意思の対立が生じにくく、住民どうしの対立が生じにくい反面、秘密投票でないことから、活発な議論は行われなくなっている。そのため、参政権として意義についてスイス国内からの批判がある。[5]また、公開投票は、ヨーロッパ人権条約へ抵触するため、同条約の批准に際し、スイスはランツゲマインデを同条約の適用外とする特別条項を追加した。
脚注[脚注の使い方]
注釈^ 市の警察維持の特例に関する法律(昭和27年法律第247号)
第一条 警察法(昭和二十二年法律第百九十六号)第四十条第三項の規定に基き国家地方警察に警察維持に関する責任の転移が行われた町村の区域をもつて、又はその区域と警察を維持しない他の町村の全部若しくは一部の区域をもつて、市が設置された場合においては、当該市は、同条第一項の規定にかかわらず、その議会の議決を経て警察を維持しないこととすることができる。
2 前項の議決は、当該市の設置の日から五十日以内に行わなければならない。この場合において、当該市長は、議決の結果を国家公安委員会を経て内閣総理大臣に報告しなければならない。
第二条 前条の規定により警察を維持しないこととなつた市は、住民投票によつて警察を維持することができる。
2 前項の住民投票については、警察法第四十条の三の規定を準用する。この場合において、同条中「町村議会」とあるのは「市議会」と、「町村」とあるのは「市」と、「町村長」とあるのは「市長」と、それぞれ読み替えるものとする。

出典^ a b c d e f g h i j k l m n “「国民投票制度」に関する基礎的資料”. 衆議院憲法調査会事務局. 2020年6月7日閲覧。


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