実質地域を既存の物理的・客観的な単位として定義した場合に、これに対して既存の構造ではなく新たな都市計画や市場開拓の際の対象として捉えられる地域を活動地域という[16]。活動地域は一定範囲の社会や集団を組織化する側面がある[16]。 木内信蔵が地域の属性として挙げた第5番目の「より大なる地域の部分である」の「より大なる地域」が全域(ぜんいき)、「部分」が基域(きいき)に当たる。つまり、基域の集合体が全域である。 例えば、四国は日本全体から見れば一部分であるから、日本は全域、四国は基域である。また見方を変えて、四国を全域と考えれば、香川県は基域である。更に香川県を全域とすると、高松市は基域である。 政治学や経済学においても「地域」の語は用いられるが、地理学ほど地域そのものについて議論されることは少なく、政治学や経済学の辞典では、地域から始まる用語は掲載されていても、「地域」という項目がないものも多い[注釈 4]。 政治学及び地域研究においては、ジュリアン・スチュワードの「世界地域」の説明が「地域」の定義として受容、定着している[17]。スチュワード自身は、以下の5つをすべて「地域」として捉えた[17]。 これに対する批判としては、「世界地域」の概念によって地域研究が政策科学の性格を帯びるようになったこと、きわめて恣意的なくくり方をした人為的区画をもって「地域」と称することができる面があること、が挙げられる[18]。 また、スチュワードが主張した「特定地方」に相当する、国民国家の内部の部分領域を「地域社会」とする用法もある[19]。 経済学で用いられる「地域」の語は、理論的文脈では往々にして不明瞭に扱われ、実証的分析では定義が厳密ではない[20]。このため、取り扱うテーマやデータの利用可能性に合わせて意味合いの変化する概念である[20]。『マグローヒル現代経済学辞典』では、地域(Region)について以下のような説明がなされている[21]。 「都市地域の一部分から,大陸の一地方にいたるまで,さまざまの広さに用いられる用語。たとえば,合衆国では,地域あるいは,地方の資料は,都市地域,地区,州,おもな地域の州群,たとえば,ニューイングランドやミドルアトランテック州のような形で得られる。」 (後略) 経済学における地域は、一般に資本や労働の移動の制約が小さく、移動可能性の高いものとして捉えられる[20][22]。ゆえに、現代は移動可能性が高まっていることから『マグローヒル現代経済学辞典』の定義を超えて、宇宙や地球も地域であると考えられる[22]。また、人類の歴史をたどれば、地域は都市と農村という2つの定住形態からなり、国家が消滅しても存続する概念である[23]。 上記のように、国家の枠を超越した大規模な空間を地域として捉える一方で国家の内部の狭い空間を地域として捉えることもある[23]。よって、地域経済学に関する文献では、地域がさまざまな範囲を指す言葉であることを示した上で、国家の内部の狭い空間を対象とする旨を述べたものもある[24]。 言語学において、地理的に近接した言語同士は、しばしば一群の音韻的・文法的特徴を共有していることが知られており、そのような地域特徴により規定される言語群は「言語連合 (独: Sprachbund)」ないし「言語領域」(英: linguistic area) と呼ばれる[25]。言語連合の範囲は、行政上の地方区分や、自然的・歴史的・文化的な観点から行われた地域区分と一致するとは限らない。例えば、バルカン言語連合の分布地域は、歴史的・文化的な「バルカン」と概ね一致している一方、大陸部東南アジア言語連合は、通常東南アジアの一部とは見做されない地域の言語、すなわち北方官話を始めとする中国語の諸方言が含まれる[26]。
全域と基域
政治学・経済学における定義
政治学における定義
世界地域(world area)…世界的な重要性を持った区域。例えば、ロシア・極東・東ヨーロッパなど。
文化地域(culture area)…共通の文化を持つと考えられる区域。例えば、ラテンアメリカ・近東・マヤなど。
国家(nation)
植民地
特定地方(specific region)
経済学における定義
言語学における「地域」
脚注[脚注の使い方]
注釈^ a b 木内『地域概論』83ページでの表現
^ 中村ほか『地域と景観』109ページでの表現
^ 『地域と景観』112ページでは「形式地域」を"formal region"と訳した場合、「等質地域」と同じになってしまい、用語の混乱を来すことを紹介している。
^ 阿部ほか編(1999)『現代政治学小辞典 新版』有斐閣、金森ほか編(2002)『有斐閣経済辞典第4版』有斐閣、大学教育社編(1998)『新訂版現代政治学事典』ブレーン出版など。いずれも地域から始まる用語を掲載するが、「地域」そのものの項目はない。
出典^ 中村ほか、1991、107ページ
^ a b 中村ほか、1991、108ページ
^ 中村ほか、1991、113ページ
^ 朝野ほか、1988、38 - 39ページ
^ a b c d 中村ほか、1991、110
^ 木内、1968、84ページ
^ 水津、1982、18 - 41ページ
^ a b c 水津、1982、20ページ
^ 木内、1968、83ページからの引用
^ a b 中村ほか、1991、109ページ
^ 木内、1968、87ページ
^ a b 中村ほか、111ページ
^ 中村ほか、112ページ
^ a b c 『地域政策入門』ミネルヴァ書房、2008年、14頁。
^ a b 『地域政策入門』ミネルヴァ書房、2008年、14-15頁。
^ a b 『地域政策入門』ミネルヴァ書房、2008年、16頁。
^ a b 矢野(1987):11ページ
^ 矢野(1987):12ページ
^ 清水ほか(1996):4ページ
^ a b c H.アームストロング・J.テイラー(2005):2ページ
^ ダグラス・グリーンワルド編(1968):390ページ
^ a b 原(2000):4ページ
^ a b 宮本ほか(1990):3ページ
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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