同様のムーンレットはF環内にも存在している可能性がある[8]。ここでは「ジェット」状の物質構造がみられ、これは近くを公転している衛星プロメテウスからの摂動効果によって引き起こされた、ムーンレットとF環のコア部分の衝突により形成されたものである可能性があるとされている。F環を公転している最大のムーンレットの一つが、まだ衛星としてははっきり確認されていない S/2004 S 6 である可能性がある。F環には、環のコア付近を周回する直径約 1 km のさらに小さなムーンレットから生じると考えられる、「ファン」と呼ばれる一時的な構造もみられる[57]。
最近発見された衛星の1つであるアイガイオンは、G環にあるアークと呼ばれる明るい円弧部分の中に存在しており、ミマスとは7:6の平均運動共鳴の状態にある[29]。これは、アイガイオンが土星の周りを7周公転する間に、ミマスはちょうど6周公転することを意味する。アイガイオンは、この環の中において構成物質である塵の最大の発生源となっている[58]。
羊飼い衛星土星の羊飼い衛星であるアトラス(上)、ダフニス(中)、パン(下)の実際の縮尺に合わせた画像。赤道付近には、周囲に存在していた環の構成物質が降着することで形成されたと考えられる明確に連なる尾根のような地形がみられる。詳細は「羊飼い衛星」を参照
羊飼い衛星は、惑星の環の内部または環のすぐ外を公転している小さな衛星である。羊飼い衛星はその重力で環の崩壊を防ぎ、周囲に空隙や間隙を形成させる。土星の羊飼い衛星には、パン(エンケの間隙)、ダフニス(キーラーの空隙)、アトラス(A環)、プロメテウス、パンドラ(F環)が知られている[26][29]。これらの衛星は、後述する軌道共有衛星とともに、おそらく環の中に元々存在していた物質密度の高い部分である「核」へ砕けやすい環の内部の物質が降着の結果として形成されたと考えられている。現在知られている衛星の3分の1から半分程度の大きさを持つ物質の核部分は、それ自体がかつて環の中に存在していた衛星が崩壊したときに形成された破片である可能性がある[53]。
軌道共有衛星「馬蹄形軌道#土星の衛星」および「エピメテウス_(衛星)#ヤヌスとの軌道の共有」も参照
ヤヌスとエピメテウスは軌道共有衛星 (co-orbital moon) と呼ばれる[24]。両者はともに直径はほぼ同じで、ヤヌスの方がわずかに大きい程度である。ヤヌスとエピメテウスの土星からの軌道半径の差はわずか 50 km 程度で、これは両者が接近してすれ違おうとすると互いに衝突してしまうほど近い。公転周期の差により両者の衛星の距離は次第に近づいていくが、衝突することはなく、両者間の重力の相互作用により、4年ごとに軌道が「交換」されるという現象が発生している[59]。
内大衛星群カッシーニが2005年に撮影したエンケラドゥスの画像。下部に見える複数の筋が「タイガーストライプ」と呼ばれる地形である。土星の環と共に写る内側にある主要衛星同時に写る3個の衛星。上からテティス、エンケラドゥス、ミマス。土星の環とテティス土星の前に写るディオネのカラー画像
土星に近い軌道を公転する大型の衛星は、3個のより小さな衛星が属する副群であるアルキオニデスと共にE環より内側に存在している。