土星の衛星のうち24個は、土星の赤道面に対してそれほど傾いておらず、土星の自転方向に対して順行する軌道を公転している規則衛星である。これらには、先述の7個の主要な衛星に加えて、大きな衛星と軌道を共有しているトロヤ衛星が4個、互いに軌道を共有している衛星が2個、および土星の環のF環の羊飼い衛星として機能している衛星が2個含まれている。また、規則衛星のうち2個は土星の環の間隙内を公転している。比較的大きいハイペリオンはタイタンとの軌道共鳴の状態にある。その他の規則衛星は、A環の外縁近くやG環の内部、および主要な衛星であるミマスとエンケラドゥスの間を公転している。規則衛星には伝統的に、ティーターン(巨神族)またはローマ神話のサートゥルヌスに関連するその他の人物に因んで命名されている。
残る122個は、平均直径が 2 ? 213 km の範囲にある不規則衛星である。その軌道は規則衛星と比べて土星から遥かに遠く、かつ土星の赤道面からの軌道傾斜角が大きくなっており、土星の自転方向に対して順行するものと逆行するものが混在している。これらの不規則衛星はおそらく、土星の重力により外部から捕らえられた小惑星、または捕らえられた後に他の天体との天体衝突によって分裂し、一連の衝突族を形成した破片であると考えられている。土星には、直径が 2.8 km を超える不規則衛星は約150個存在していると予想されており、さらにそれより小さい衛星は数百個存在するとみられている。不規則衛星はその軌道の特徴によってイヌイット群、北欧群、ガリア群の3つのグループに分類され、その名称はそれぞれに対応する神話に登場する人物から命名される(ガリア群はケルト神話から命名される)。唯一の例外は19世紀末に発見された土星の第9衛星で、土星を公転する最大の不規則衛星として知られるフェーベであり、フェーベは北欧群に属するが、ギリシャ神話に登場する女巨人の名前に因んで名付けられた。
土星の環は、極めて微小なものから直径数百mの衛星クラスに至るまでのさまざまな大きさの天体で構成されており、それぞれが土星の周りを独自の軌道を描いて公転している[12]。したがって、土星の環の構造を形成する無数の小天体と衛星と認識されている大きな天体との間には客観的な境界が存在しないため、土星の衛星の数を厳格に把握することが出来ない。環の内部に存在する150個を超えるムーンレットが、周囲の小天体に対して引き起こす撹乱効果によって検出されているが、これはそのような天体の総数のほんの一部にすぎないと考えられている[8]。
現時点で83個の衛星が命名されておらず[2]、B環内を公転しているムーンレットである S/2009 S 1 を除いてその全てが不規則衛星となっている。今後命名される際には、衛星が属しているグループに基づいてケルト神話、北欧神話、イヌイット神話に登場する人物から命名されるであろう[13][14]。 望遠鏡による天体写真撮影が登場する前は、8個の衛星が光学望遠鏡を使った直接観測で発見されていた。土星最大の衛星タイタンは1655年にクリスティアン・ホイヘンスによって、彼自身が設計した、口径 57 mm[15] の対物レンズを用いた屈折望遠鏡を使って発見された[16]。
発見口径 12.5 in (31.75 cm) の望遠鏡を使って露出オーバーで撮影した土星。周囲にイアペトゥス (I)、タイタン (T)、ディオネ (D)、ハイペリオン (H)、レア (R) が写っている。
初期の発見