土壌
[Wikipedia|▼Menu]
電気抵抗は土壌に埋められる金属コンクリートの腐食速度に影響する[24]。このような土壌の性質は土壌の深さ、すなわち土壌層位によって変化する。これらのほとんどの性質が、土壌の通気性と土壌中に水が流れたり保持されたりするような能力に影響する[25]

土粒子が土壌の性質に与える影響[26]性質砂シルト粘土
保水性小中から大大
通気性大中小
排水速度速中から遅とても遅
土壌有機物量少中から多多から中
有機物分解速度速中遅
春の気温上昇速度速中遅
締め固めやすさ低中高
風食に対する耐久度中(細砂であれば弱)弱強
水食に対する耐久度細砂でなければ強弱団粒化されていれば強、さもなければ弱
膨潤度とても低低中からとても高
水の浸透を止める働き弱弱強
降雨後の耕起しやすさ良中悪
汚染物質の浸透性高中低(亀裂がなければ)
植物の栄養保持力低中高
pH緩衝能低中高

土性アメリカ合衆国農務省の土性分類システムによる粘土、シルト、砂の割合と土性 カナダのクーテネイ国立公園のペイントポット近くの鉄分が多い土壌

土壌の鉱物粒子はシルト粘土があり、その割合によって土性が決まる。土性に影響を受ける土壌の性質には、間隙率、透水性浸透、膨潤度 (en)、圃場容水量、そして侵食に対する強さがある。USDA(アメリカ合衆国農務省)の三角座標による土性区分で示されているように、砂、シルト、粘土のいずれかが主成分となっていない(つまり、程良く混ざっている)ような土壌はロームと呼ばれる。純粋な砂、シルト、粘土も土壌ではあるが、伝統的な農業の観点からは、いくらかの有機物があるローム土壌が「理想的である」とされ、農業による長期的な作物の収穫によって奪われた栄養分を補給するために、肥料堆肥が使われる[27]。ローム土の鉱物組成は、たとえば質量比が砂40%、シルト40%、粘土20%である。土性は土の性質、特に栄養分を保持する性質(たとえば陽イオン交換容量[28] と水移動に関する性質に影響を与える。

砂とシルトは母岩の物理的および化学的な侵食によって形成され[29]、粘土は母岩が降雨に溶解して生成された二次鉱物であることが多く、雲母の風化によるものもある[30]。土粒子の比表面積と土粒子表面イオンの電荷土壌肥沃度にとって重要なはたらきを持ち、陽イオン交換容量として測定される[31][32]。砂は比表面積が最も小さく陽イオン交換容量が小さい。シルトはその次に小さく、粘土が最も陽イオン交換容量が大きい。土壌にとって砂の最も大きな役割は、締め固めに対する耐久力が大きく、土壌の間隙率を大きくしていることである。ただし、この性質は純粋な砂に対するものであり、砂がより小さな鉱物と混ざることにより、砂の粒子の間に小さな鉱物が入るため間隙率が小さくなる[33]。シルトは鉱物的には砂と似ているが比表面積が大きいため物理化学的な反応性は大きい。粘土は比表面積が極めて大きく大量の負電荷を持っているため、土壌の水と養分の保持能力の高さを決めているのは粘土の量である[31]。粘土質土壌は風と水による土壌侵食に耐える力がシルト質土壌や砂質土壌と比べて大きい。それは、粘土は粒子と粒子の間を結びつける力が大きいことと[34]、有機物による侵食緩和効果によるものである[35]

砂は土壌鉱物の中で最も安定している。岩の破片と一次石英粒子によって構成され、直径 0.05 から 2.0 mm である(USDAの粒径区分)。シルトは直径 0.002 から 0.05 mm である。粘土は直径が 0.002 mm 以下で厚さは 1 nm (10?9 m) ととても小さいため、光学顕微鏡で観察することができない[36][37]。中程度の土性の土壌では、粘土は水によって下方に溶脱 (en) して、下層に集積 (en) する。土壌鉱物組成の大きさと鉱物の性質の間には明確な相関はない。砂とシルトの粒子が石灰質であることも石英質であることもあり[38]、粘土の粒子 (0.002 mm) が細かい石英であることも多層の二次鉱物であることもある[39]。ある一定の粒径組成に属する土壌鉱物は、比表面積(それに関連する保水性)のような共通の性質を持っているものの、陽イオン交換容量のような化学組成に関係する性質は共通ではない。

直径 2.0 mm よりも大きな土壌の成分は岩あるいは(れき)と分類される。土壌を土性によって分類するために粒径の組成を決定する時には除外されるが、名称に含めることもできる。たとえば、砂質ローム土が20%の礫を含めば、礫砂質ローム土と呼ぶことができる。

土壌有機物の量が非常に多い時には、その土壌は鉱物土壌ではなく有機質土壌であるとされる。有機質土壌の条件は次のようなものである。
鉱物成分の 0% が粘土で有機物が 20% 以上

鉱物成分の 0% から 50% が粘土で有機物が 20% から 30%

鉱物成分の 50% 以上が粘土で有機物が 30% 以上[40]

構造

土壌の砂、シルト、粘土成分が集まって塊となることで団粒(aggregate)が形成され、団粒がさらに大きな塊となった構造はペッド(ped)と呼ばれる。土粒子が有機物、酸化鉄炭酸塩、粘土、二酸化ケイ素によって粘着し、凍結融解と湿潤乾燥過程によって団粒が分解し[41]土壌動物土壌微生物のコロニーと植物の根の先端によって団粒が形成される[42]、といったようなメカニズムによって、土壌は明瞭な幾何学的形状を形成する[43][44]。ペッドは様々な形へと発展する[45]。土塊 (soil clod) はペッドのように形成されたものではなく、耕起のような土壌への機械的な撹乱によってできたものである。土壌構造は通気性、水移動、熱移動、植物の根の成長、土壌侵食への耐久性に影響を及ぼす[46]。一方、水は土壌構造に強い影響を与える。直接的には、鉱物を溶解し降雨によって供給し、団粒をスレーキング (en) によって機械的に破壊する[47]。間接的には、植物、動物、微生物の成長を促進する。

土壌構造は土性、有機物量、微生物の活動、過去の土壌生成過程、人間の利用履歴、土壌生成の化学的および鉱物学的条件を知るための手がかりとなる。土性は鉱物組成によって決まる変化しない性質であって農業活動によって変化しないが、土壌構造は農作業のやり方や時期によって発達させることも壊すこともできる[43]

土壌構造の分類[48][49]
形状: ペッドの形と配列によって区分する。
板状 (Platy): 厚さ 1?10 mm のペッドが平板状に重なる。森林土壌のA層と池の沈積物に見られる。

柱状 (Prismatic): 鉛直に長く、幅は 10?100 mm である。上部が平らな角柱状 (Prismatic) と上部が円形の円柱状 (Columnar) に分かれる。ナトリウム土壌のB層に粘土が集積すると生じやすい。

塊状 (Blocky): 不完全な 5?50 mm の立方体の角形のペッド。鋭い角を持つ角塊状 (Angular) と滑らかな角を持つ亜角塊状 (Subangular) に分かれる。粘土が集積したB層に生じやすく、水の浸透が少ないことを示唆している。

粒状 (Granular): 1?10 mm の多面体の長球状のペッド。粒状 (Granular) と屑粒状 (団粒状; Crumb) に分かれ、屑粒状の方がより多孔質で理想的であるとされる。有機物があるA層でよく見られる。


大きさ: ペッドの最小径によって区分する。ペッドの形状によって大きさの分類が異なる。
細: <1 mm の板状か粒状; <5 mm の塊状; <10 mm の柱状

小: 1?2 mm の板状か粒状; 5?10 mm の塊状; 10?20 mm の柱状

中: 2?5 mm の板状か粒状; 10?20 mm の塊状; 20-50 の柱状

大: 5?10 mm の板状か粒状; 20?50 mm の塊状; 50?100 mm の柱状

極大: >10 mm の板状か粒状; >50 mm の塊状; >100 mm の柱状


発達程度: すなわちペッド内の密着度であり、強度と安定性をもたらす。
弱度: 弱い結合はペッドが砂、シルト、粘土へと分解されやすい。

中度: 未撹乱土壌ではペッドが明瞭ではないが、撹乱すると団粒、いくらかの壊れた団粒、わずかな団粒化されていない土壌に分かれる。これが理想的な状態であるとされる。

強度: 土壌層位を観察している時点で明瞭なペッドが見られ、簡単には壊れない。

無構造: 土壌が粘土板のように大きな塊にしっかりと固着されているか、砂のように全く結合がない。

最も大きなスケールでは、土壌構造は粘土鉱物の膨潤と収縮によって形成される。初期は水平方向に働き、垂直方向の角柱のペッドを形成する。この機構はバーティソル (en) という種類の土壌に特徴的である[50]。粘土質土壌は、土壌表面からの水の蒸発速度の差が大きいため、水平方向の亀裂を生じ、土壌の柱を塊状のペッドへと分解する[51]、小動物、虫、凍結融解が大きなペッドをより小さい球形に近いペッドへと分解する[42]

より小さいスケールでは、植物の根は大きな間隙(マクロポア)の中を伸長して水を吸い上げるため[52]、マクロポアの体積を大きくして間隙率を小さくし[53]、団粒をより小さくする[54]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:226 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef