国際連合本部ビル
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設計当初は70か国までの増加を想定していたが、完成から3年後の1955年にはすでにこれを超えてしまったため、1964年に300万ドルをかけて大改装を行い、議場スペースを拡張するとともに126か国まで対応可能なスペースを作った。1976年には1500万ドルの予算で総会議場その他の会議場を拡張する改装が総会で承認され、1980年9月に完成した。1981年6月には総会議場の北側に広がる芝地の地下に文書複写センターが工費2560万ドルをかけて建設され、翌年には、事務局ビルの南東側、イースト川を見下ろす場所にカフェテリア・会議室などを設けた2階建ての建物が870万ドルをかけて建設された[5]
構成
総会議場ビル総会議場。ホール両脇の抽象壁画はフランスの芸術家フェルナン・レジェによってデザインされ、国際連合協会を通じて寄贈されたものである[11]。2006年に行なわれた中東和平プロセス・イラン核問題・ダルフール問題を話し合う第61回総会開会の様子。

国際連合総会が開催される場所。総会議場の建物は敷地のほぼ中央に位置し、縦380フィート(約116メートル)・横160フィート(約49メートル)で、側面が凹面状になっている。屋根には内部に明かりを取り入れる浅い円形ドームがある。議場ホールは奥行き165フィート(約50メートル)・幅115フィート(約35メートル)・天井までの高さ75フィート(約23メートル)で、2階から4階にかけてを占めている。議場には1321席が設けられ、各加盟国に6席ずつ(代表者3名及びその後ろに補助者3名)与えて、192の全加盟国の代表団を収容できる。3階には、代表団補助者、専門機関の代表者、その他の上級職員のために244席が用意され、その上のバルコニーには記者席53席と一般傍聴席280席が設けられている。以上の1898席全てにイヤフォンがあり、議場での発言またはその英語・フランス語・ロシア語・中国語・スペイン語・アラビア語の6公用語による同時通訳を聞くことができる。通訳人はホールを見下ろすガラスのブースに座っている。演壇の後方には各国の投票結果を示す巨大なパネルが置かれており、各国代表団は座席の緑・赤・黄色のボタンを押すことによって賛成・反対・棄権の投票をすることができる。ここで初めて国際連合総会が開かれたのは1952年10月14日からの第7回通常会期だった。下の2つの階には代表団用623席・プレス用44席・一般傍聴者用166席がある会議場がある。また一般来客が利用できる公共スペースには、国連ブックショップ・国連切手の販売カウンター・ギフトセンター・土産物店・コーヒーショップなどが入っている[5]
理事会議場ビル安全保障理事会議場 壁画はノルウェーの画家ペール・クローグの「灰から飛び立つ不死鳥」

理事会議場の建物は総会議場及び事務局ビルの東側に位置し、イースト川沿いを走る高速道路FDRドライブの上を覆うように張り出した片持ち梁構造になっている。理事会議場ビルを介して、総会議場ビルと事務局ビルがつながっている。

2階と3階に安全保障理事会信託統治理事会[注釈 1]経済社会理事会の3つの議場が設けられ、それぞれ幅72フィート(約22メートル)・奥行き135フィート(約41メートル)・高さ24フィート(約7.3メートル)である。最上階(4階)にはダイニングルーム・スタッフ用のカフェなどがある。

安全保障理事会の議場はノルウェーのアーンシュタイン・アーネベルグ(英語版)が設計したもので、一般傍聴席164席とプレス用118席が設けられている。その隣にある信託統治理事会の議場はデンマークのフィン・ユールが設計したもので、一般傍聴席164席とプレス用30席を備える。この部屋は総会の主要委員会によっても使われている。経済社会理事会は信託統治理事会議場と代表団北ラウンジとの間にあり、スウェーデンのスヴェン・マルケリウスの設計によるもので、1973年の理事国の倍増に伴い1974年に改装され、一般傍聴席336席とプレス用40席を備える。2階には経済社会理事会議場の北隣に代表団用ラウンジがあり、安全保障理事会議場の南隣にも小さいラウンジがある。下の階には3つの大会議室(それぞれ幅72フィート・奥行き135フィート・高さ18フィート)があり、第1・第2会議室は代表団用498席・プレス用36席・一般傍聴席144席が、また第3会議室は代表団用548席・プレス用48席・一般傍聴席180席がある[5]
事務局ビル

事務局ビルは39階建ての全高505フィート(154メートル)である。1952年に竣工した[12]。このビルには事務総長法務局及び顧問弁護士事務次長[13]・政務部(英語版)と軍縮部(英語版)の事務次長[14]・総会及び理事会管理部(Department for General Assembly and Conference Management, DGACM[15])のオフィスが入っている。
図書館図書館ビル。

ダグ・ハマーショルド図書館(英語版)は敷地の南西隅にあり、事務局ビルとつながっている。1961年国連チャーター機墜落事故で殉職した、時の国際連合事務総長ダグ・ハマーショルドを記念して、同年11月16日に彼の名前を冠して完成した。建設資金にはフォード財団から660万ドルの提供を受けた。ウォレス・ハリソンの会社エイブラモヴィッツ・アンド・ハリスが設計を担当し、幅84フィート(約26メートル)・奥行き219フィート(約67メートル)・地上3階の地下3階建てとなっている。

図書館にはおよそ40万巻の書籍の他に数百万点の国際連合の文書が収蔵されている。地図部門には8万点以上の地図と1500冊の地図帳がある。定期刊行物書庫には1万点以上の政府公式刊行物と4000点以上の非公式定期刊行物を置いている。その他に330紙以上の日刊紙と225点以上の加盟国の政府公報(日本国官報、アメリカ連邦官報、欧州連合官報、ドイツ連邦官報、ベルギー官報その他)が置かれている。
屋外日本から寄贈された平和の鐘。「国際連合アートコレクション」も参照

国際連合本部の西側正面には500フィート(約152メートル)以上に渡って192か国の加盟国の国旗が並んでいる。英語表記のアルファベット順に並んでおり、48番ストリートのアフガニスタンに始まり、42丁目のジンバブエまで続いている[16]。事務局ビルの西側の総会議場ビルと図書館に囲まれた広場には、アメリカの子供たちからの寄付5万ドルで造られた噴水池がある。1964年にハマーショルド事務総長を記念したブロンズ彫刻が噴水池の端に建てられた。この抽象彫刻は、イギリスの芸術家バーバラ・ヘップワースによる「シングル・フォーム」という題名の作品である。また、事務局ビルの北側広場にはヘンリー・ムーア作のブロンズ彫刻「リクライニング・フィギュア:ハンド」が置かれている[5]

理事会議場ビルの西側の事務局ビルと総会議場ビルに挟まれたスペースには、日本国際連合協会から寄贈された平和の鐘が置かれている。これは1951年に第6回国際連合総会にオブザーバーとして出席した当時日本国連協会評議員の中川千代治が、「平和の願いを込めて、世界の人々のコインで平和の鐘を造りたい」と訴え、その訴えに賛同した代表・ローマ法王・その他子供達を含む60か国以上の人々から寄せられた硬貨・メダルを鋳造して誕生したものである。また鐘楼は釈迦誕生の花御堂を模したもので、材料に欅が使われている。年に2回春分の日と9月の総会開幕日にこの鐘を鳴らすのが慣例である[17]

敷地内の庭園にはバラ・サクラ・ピンオーク(英語版)・アメリカサイカチ(英語版)・カエデバスズカケノキスイセンサンザシモミジバフウプラタナスなど数々の樹木や花々が植えられており、緑が広がっている[5]
法的地位

敷地は国際連合の所有である。国際連合の特権及び免除に関する条約(英語版)(国連特権免除条約)により、国際連合の構内は不可侵とされており(2条3項)、連邦捜査官ニューヨーク市警察などは事務総長の同意無しには立ち入れない。ただし連邦政府との合意により、アメリカ合衆国の法律による逮捕を免れようとしている者・同国政府により他国への送還が要請されている者・法手続きの執行を免れようとしている者の避難場所として使用出来ないことになっている。2003年にはイラク戦争前に当時のジョージ・W・ブッシュ政権や戦争支持国による国連盗聴疑惑(英語版)が起きており、実際に盗聴器が設置されていたことがわかっている[18][19][20][21]


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