国際連合平和維持活動
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監視団が展開される地域に既に平和維持軍が配置されている場合は、その平和維持軍の指揮下に入ることになる[17]
平和維持

平和維持 (Peacekeeping) の任務は兵力引き離し、撤退監督などによって平和を維持することであり、武装した軍人で編成される国際連合平和維持軍 (Peacekeeping Force, PKF) と、武装した警察官で編成される国連警察(UNPOL)の武装警察隊(FPU)によって行われる。

具体的には、諜報活動対ゲリラ作戦、外交援助、紛争当事者の調停、停戦および休戦の監視、兵力引き離し監視、戦争犯罪の調査、戦犯引き渡し監督、戦犯被疑者の逮捕、選挙監視、非武装地帯の建設維持、避難民の移動、人道救援活動、インフラの復旧などが挙げられる[18]
平和維持行動
分離行動

分離 (Separation) とは紛争状態である両勢力を合意に基づいて引き離すことであり、平和維持軍は割込み行動 (Interposition operation) に運用される。これはまず準備段階において停戦が実行され、さらに停戦ライン (Cease-Fire Line, CFL) が設定されることとなる。この停戦ラインの設定においては、軍事上の見地から交通要路、交差点、平地の拠点などの緊要地形が含まれないことや住民生活への影響を考慮し、その上で両勢力が共有する地図で線引きを行う。共通のグリッド座標を使用して線引きを行い、両勢力間で異なった見解を持つ場合は両方を記録しておく。そして現地調査で移動を統制するための地標を設置して現地で線引きする。そして両勢力の関係者全員の合意を成立させる。

次に緩衝地帯 (Buffer zone) が合意によって設定され、両勢力の戦力は緩衝地帯から撤退する。緩衝地帯からの撤退は同時に行われなければ以後の和平交渉においても両者に深刻な不信感を残すことになる可能性があるため、公平な実施が求められる。平和維持軍は停戦ライン付近に監視所・陣地を構築してそこに部隊を配し、停戦監視または兵力展開や部隊移動の統制、捕虜交換の実施、武器密輸の阻止、避難民キャンプの運営支援などを実施する[19]
移動統制

平和維持のため緩衝地帯はあらゆる作戦部隊の侵入と行動が禁止される。ただし受入国の警察部隊は特別な協定に基づけば侵入することは出来る。平和維持軍の軍事要員・警察要員は個別の内部規則によって異なるが、しばしば緩衝地帯における侵入者を捜査する権限を持つ。

緩衝地帯は検問所によって移動を統制し、検問で平和維持軍の要員はあらゆる武器弾薬の輸送を制限する。検問所の任務は移動の統制・密輸防止・難民統制・その他の監視所の準任務である[20]
不測事態対処

不測事態とは作戦計画の立案で予測不可能な事態であり、これに対処するための不測事態対処計画が策定される。この対処は平和維持軍に部隊を派遣する全ての国家の部隊から所要兵力を抽出して編成された予備隊によって実施される。この予備隊の任務は国連の存在の顕示、武力の示威、緩衝地帯の支援、緊張状態が発展する前に両勢力の間に割り込み、危機的な状況に陥った平和維持軍を支援・救出などである。その部隊は装甲車中隊が中核となり、航空、通信、衛生、整備、補給の部隊が支援する[21]
武力行使

武力行使は常に最低限、統制的に実施しなければならない。これは受入国の信頼、派遣地域の緊張状態、平和維持軍参加国の態度を悪化させる危険性が高いからである。ここでは武力は人員・装備・施設を一切傷つけずに物的な力を使用した無撃的武力と損害を与える物的な力を使用した加撃的武力の二種類がある。

無撃的武力は車両による道路封鎖など、加撃的武力は小火器の使用などが挙げられる。最終的手段としての加撃的武力の行使は自衛戦闘においてのみ認められている。自衛戦闘に該当する場合の例として兵士個人または部隊の一部が危険に陥った場合、対立勢力の一方が平和維持軍を撤退させようとして平和維持部隊の安全が脅かされる場合、武力で平和維持軍の武装解除を行おうとする場合、平和維持要員を逮捕・誘拐しようとする場合、平和維持軍の資産を武力で侵犯した場合などが挙げられる[22]

国連2001年に、アフガニスタンにおける治安維持支援目的のために有志国が集まって編成した、北大西洋条約機構 (NATO) が統率する国際治安支援部隊 (International Security Assistance Force, ISAF) の設立を承認したが(安保理決議1386)、ISAFは国際連合平和維持活動ではなく、湾岸戦争と同様、国際連合憲章第7章に基づき国連安保理に派遣を承認されたいわゆる多国籍軍である。
後方支援
兵站

兵站は平和維持軍の編成の段階から重大な事項である。何故なら平和維持軍が派遣される地域にしばしばいかなる支援拠点も有たないからである。また複数の軍事組織から編成される平和維持軍は装備や兵站組織が異なっているために、軍需品の複雑性が増大する。

またしばしば活動地域においては交通拠点の機能が停止しており、補給路の維持が困難である場合も多い。1個大隊の兵站支援部隊の部隊構成は1個戦闘工兵小隊、通信小隊、通信整備分遣隊、憲兵部隊などから成り、さらに栄養士・救急医・歯科医などの要員、または大型トラック・給水車・燃料車・調理車・電源などの装備、土嚢・弾薬・補給物資などの物資が充てられる。その兵站支援の方式としては平和維持軍に参加する一国が担当する一国支援担当方式、相互依存の原則に基づき複数の参加国が他国分担方式、地域ごとに担当区域を定めて行う分権方式がある[23]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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