国際通貨基金
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また、2021年12月現在4人在籍する副専務理事のうち、1人は日本の元財務官である岡村健司が務めている(2021年12月着任)[40][41]

なお1997年以降5代連続で、日本人から副専務理事が選出されている。ただし、2017年1月現在日本人職員は59名(全体の2.2%)に留まる[42]。また、IMFアジア太平洋地域事務所が、アジア太平洋地域における窓口として、東京都千代田区内幸町に設置されている[43]
IMFのサーベイランス

IMFは、国際通貨制度を監視するとともに、189の加盟国の経済及び金融部門政策のモニタリングを行う。サーベイランス(政策監視)と呼ばれるこの活動は、国際レベル及び国レベルで行なわれるが、この過程においてIMFは、安定性への考えうるリスクを明確にし、必要な政策調整について助言を行なう。これによりIMFは、各国間における財、サービス、及び資本の交換を促進し金融と経済の安定に必要な条件を確保することで経済成長を維持するという、国際通貨制度の主な目的の達成に貢献する。[44]

IMF4条協議

IMFは、IMF協定第4条に基づき、原則年一回加盟国の経済状況、及び財政・金融・為替等の政策を評価するための調査を実施する(「IMF4条協議」)。エコノミストが加盟国を訪問し、加盟国政府・中央銀行と為替レート、金融、財政、金融部門に関する政策、及びマクロ・クリティカル(マクロ経済に決定的な意味を持つ)な構造改革を中心とした、経済・金融の状況に関する協議を行う(ミッション)。なお、多くの加盟国が、IMFミッションの終了の際に、スタッフによる声明を発表している。当局との議論を踏まえ、本部に戻った後スタッフは、IMF理事会での協議に向け報告書を提出。その後理事会の見解は加盟国当局に報告され、4 条協議と呼ばれるプロセスが終了する。現在ほぼ全ての加盟国が、理事会の見解の総括であるプレスリリースとIMFのスタッフ・レポートや関連分析の公表に同意しており、IMFのWebサイト上で公表されている。[44]  4条協議報告書には加盟国経済の分析に加えて政策提言も記載されており、例えば、2017年の対日4条協議報告書においては、急速に進む高齢化と労働力人口の減少という課題を指摘し、賃金の伸びと生産性改善等のための構造改革への取り組み、持続的な金融緩和スタンスの維持、消費税の0.5%か1%ずつ15%までの引き上げ等の提言を行った。[45][46]

マルチラテラル・サーベイランス

IMFは、個別国のサーベイランスに加え、世界及び地域レベルで経済情勢をモニタリングするとともに、加盟国の諸政策の世界経済への波及効果を分析する。マルチラテラル・サーベイランスは主に、定期的に発表される世界経済見通し (World Economic Outlook: WEO)、国際金融安定性報告書 (Global Financial Stability Repoort: GFSR)、および 財政モニター(Fiscal Monitor: FM)を通して行われる。WEOは、世界経済とその成長見通しに関する詳細な分析を提示し、世界的な金融の混乱のマクロ経済への影響といった問題に取り組むとともに、システミックな国や地域における経済政策・金融政策の国境を越える影響に特に焦点を当てながら、主な潜在的な世界的波及効果を評価する。GFSRは、世界の資本市場の情勢、そして金融の安定性にリスクをもたらす金融の不均衡や脆弱性を評価する。FMは、最新の中期的な財政見通しを提示するとともに、公共財政の情勢を評価する。このほかにも、金融システムで重要な位置を占める国や地域の対外ポジションを分析する対外セクター報告書(External Sector Report: ESR)や、G20財務大臣・中央銀行総裁会議/G20サミットへの経済状況の報告等、様々な形で分析を公表している。[44]
批判

IMFの融資は、対象国に対し財政緊縮策や構造改革などの厳しい貸出条件(コンディショナリティ)を付けるものの、その条件は経済の成長を目的としておらず、むしろ経常収支を均衡させるために国内の景気を冷却化させることを目的としている[47]。また対象国の経済条件を無視して画一的な政策を押し付けるためにより経済状況が悪化することすらあり[48]、しばしば批判の的となっている。IMFのコンディショナリティについては経済学者のジョセフ・E・スティグリッツなども批判を行っている。「ジョセフ・E・スティグリッツ#IMF批判」も参照
不祥事

2011年には、現役の専務理事であったドミニク・ストロス=カーンが女性強姦未遂容疑で米当局に逮捕され、この事は米国メディアで連日大きく取り上げられた。トップのストロスカーンの逮捕とあって、IMFの政策運営に空白が生じれば、財政危機が深刻化し、国債利回りが急上昇しているギリシャ問題、原油高騰を招いている中東・北アフリカ情勢への対応など、重要課題への対応が遅れることなどへ大きな懸念が高まった。

事件を受けて、ドミニク・ストロス=カーンは専務理事を辞任、クリスティーヌ・ラガルドが後任に選出された。しかし、後に被害を訴えた女性の証言の信憑性が低く、性犯罪の証明が困難との判断から、検察の訴追取り下げ申請が行われ、公訴は棄却されている[49]
脚注[脚注の使い方]
注釈^ 世銀・IMF合同開発委員会とは、G7を含む先進国、途上国の24か国の財務大臣、開発担当大臣等が一堂に会し、途上国への開発援助問題に関するその時々の重要なトピックについて議論し、世界銀行・IMFの総務会に勧告を行うハイレベルな会合である。事務局長は、開発委員会議長、世界銀行総裁、及びIMF専務理事と協議しつつ、委員会の運営にあたる。なお、日本政府は、「国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律」(昭和27年法191)を制定して政府がIMFに法定出資できること及び出資方法を定めている。

出典^ a b c 「世界地理大百科事典1 国際連合」p405 2000年2月1日初版第1刷 朝倉書店
^http://www.imf.org/external/np/sec/memdir/members.aspx "IMF Members' Quotas and Voting Power, and IMF Board of Governors" 2018年1月 2018年1月5日閲覧
^http://www.imf.org/external/about/histcoop.htm
^ 「南北・南南問題」(世界史リブレット56)p19-20 室井義雄 山川出版社 2009年9月25日3版18刷発行
^ キングストン (ジャマイカ)で合意されたのでこの名がある
^ 「国際機構 第四版」p177 家正治・小畑郁・桐山孝信編 世界思想社 2009年10月30日第1刷
^ 「アフリカ経済論」p96 北川勝彦・高橋基樹編著 ミネルヴァ書房 2004年11月25日初版第1刷
^ 「IMF(国際通貨基金)使命と誤算」p59 大田英明 中公新書 2009年11月25日発行
^ 「IMF(国際通貨基金)使命と誤算」p62 大田英明 中公新書 2009年11月25日発行
^ 「国際経済システム読本 国際通貨・貿易の今を考える」p134 野崎久和 梓出版社 2008年4月20日第1刷
^ 「アフリカ経済論」p113 北川勝彦・高橋基樹編著 ミネルヴァ書房 2004年11月25日初版第1刷
^ 「アフリカ経済論」p103 北川勝彦・高橋基樹編著 ミネルヴァ書房 2004年11月25日初版第1刷
^ 「IMF(国際通貨基金)使命と誤算」p68-69 大田英明 中公新書 2009年11月25日発行
^ 「ケニアを知るための55章」pp136 松田素二・津田みわ編著 明石書店 2012年7月1日初版第1刷
^ 「アフリカ経済論」p102 北川勝彦・高橋基樹編著 ミネルヴァ書房 2004年11月25日初版第1刷
^ 勝俣誠「現代アフリカ入門」第1刷、1991年11月20日(岩波書店)p119
^ 「ケニアを知るための55章」pp137-138 松田素二・津田みわ編著 明石書店 2012年7月1日初版第1刷
^ 「IMF(国際通貨基金)使命と誤算」pp96 大田英明 中公新書 2009年11月25日発行
^ 「現代国際関係の基礎と課題」内第2章「国際経済の構造」須賀周平 p38 建帛社 平成11年4月15日初版発行
^ https://www.imf.org/External/japanese/pubs/ft/whatj.pdf 「国際通貨基金とは」p15 国際通貨基金 2018年9月15日閲覧
^ 「IMF(国際通貨基金)使命と誤算」p76-77 大田英明 中公新書 2009年11月25日発行
^ 「国際経済システム読本 国際通貨・貿易の今を考える」p153 野崎久和 梓出版社 2008年4月20日第1刷
^ 「IMF(国際通貨基金)使命と誤算」pp92-93 大田英明 中公新書 2009年11月25日発行
^http://www.kantei.go.jp/jp/asospeech/2008/11/15naigai.html 金融・世界経済に関する首脳会合内外記者会見 2018年1月5日閲覧
^ https://www.imf.org/en/News/Articles/2015/09/28/04/53/sonew021309a ”IMF Survey: IMF Signs $100 Billion Borrowing Agreement With Japan” 2009年2月13日 2018年1月5日閲覧
^ https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/g20/0909_seimei_ka.html 首脳声明 ピッツバーグ サミット (仮訳)2018年1月5日閲覧
^ a b https://www.imf.org/external/japanese/np/exr/facts/changingj.htm 「ファクトシート 世界経済危機へのIMFの対応」国際通貨基金 2016年3月22日 2017年3月3日閲覧


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