国際通貨基金
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1994年12月にはメキシコで資本収支危機が発生したものの、このときはIMFから180億ドルの融資が行われる[20]など各国が大規模支援を行ったため、速やかに経済は回復した[21]

1997年7月にタイでの通貨危機を皮切りに発生したアジア通貨危機において、IMFはタイ・インドネシア韓国の3か国に対して支援を実施した。しかしこれらの諸国の経済の基礎的条件はそれほど悪いものではなく、急速な資本流出こそが問題であったのにそれと関係のない緊縮財政や構造改革などの政策を取ってしまったため信用収縮はさらに拡大し、この3か国は深刻な不況に見舞われた[22][23]。これらの国々に対する厳しい貸し出し条件(コンディショナリティ)は、画一的な財政緊縮策や、対外収支の改善に直接関係しないガバナンス改革等が多く含まれていたこともあって後に多くの批判を招くこととなり、後のコンディショナリティ見直しへとつながることとなった。
金融危機後の資金基盤強化

2008年には、前年のアメリカのサブプライム住宅ローン危機に端を発し、9月のリーマン・ブラザーズの倒産(リーマン・ショック)に代表される世界金融危機が勃発し、IMFは金融危機に瀕した加盟国の支援を行った。こうした中で支援の原資となるIMFの資金基盤強化が急務となった。IMFの融資財源は原則的に加盟国が出資するクォータから賄うこととされているが、IMFの議決権はクォータ比例であるために増資交渉には時間がかかる。そのため、当面は加盟国からの借り入れによって資金基盤を拡大しつつ、同時並行で大規模な増資交渉が行われることとなった。2008年11月に開催された第1回G20サミットでは日本がIMFに対する1000億ドルの貸付を表明[24](2009年2月締結)[25]。その後加盟国からIMFへの貸付による資金基盤拡大が国際的な議論の流れとなり、2009年9月の第3回G20サミットではIMFの資金基盤が最大7500億ドルまで拡大されたことが確認された。[26]

2010年12月15日には、IMFのクォータ(出資額)総額を倍増する第14次クォータ一般見直し、及び全理事選任制への移行などのガバナンス改革のための第七次協定改正が総務会にて決議された(IMF2010年改革)。[27] しかし、2010年改革は、その発効のために投票権シェア85%以上を持つ113ヶ国以上の受諾が必要とされていたが、投票権シェア15%以上で実質的に拒否権を有する米国での国内承認の遅れから発効が大幅に遅れ、2016年1月26日にようやく発効した。[28]
主要会議

毎年秋に年次総会と呼ばれる世界銀行と合同の総務会を開催。また年2度の国際通貨金融委員会の開催も行っている。

総会(英語: World Bank IMF General Assembly)は、毎年秋に1回、世界銀行と合同で開催される。

国際通貨金融委員会(英語: International Monetary and Financial Committee、IMFC)は、年に2回開催される。
構成

意思決定機関として総務会と理事会がある。

英語: Board of governors(一般的に総務会と訳される)」は、各国につき1人の総務(財務大臣中央銀行総裁など)と1人の総務代理で構成される最高意思決定機関で、年1回開催される[1]。投票権は出資金の支払い比率に応じて与えられる。この出資金がIMFの財源であり、経済規模に応じて定められている。

英語: Executive board(一般的に理事会と訳される)」は、24名の理事によるIMFの通常業務に関する執行機関。投票権の少ない国は複数国で一つの理事室を形成している。[29]
幹部

理事は2016年現在24名で構成されている[30]。理事はすべて加盟国によって選出される。

かつてはIMFの上位出資国五か国(アメリカ合衆国イギリスフランスドイツ日本)が任命理事を各国一人ずつ選任し、残りの加盟国が選出理事を投票で19名選出していたが、IMFの機構改革の一環として任命理事を廃止し、24名すべての理事を加盟国によって選出することとする第七次協定改正が行われた(2010年12月総務会決議[31]、2016年1月26日発効[27])。

英語: managing director(一般に専務理事と訳される)」は、理事会の議長と国際通貨基金の代表を務める。専務理事は理事会によって選出されることとなっている。[32]世界銀行の総裁に米国出身者が選出されているのと同様、国際通貨基金の専務理事には欧州出身者の就任が慣例となっている。(また、理事が任命する副専務理事のうち、筆頭副専務理事はこれまで常に米国出身者が務めている。)なお、過去の選出過程では、カムドシュの後任として日本の榊原英資元財務官が、またストロスカーンの後任にメキシコ中央銀行のカルステンス総裁の起用が検討されたこともある。

代専務理事国就任退任
1カミーユ・ガット(英語版) ベルギー1946年5月6日1951年5月5日
2イヴァル・ルース(英語版) スウェーデン1951年8月3日1956年10月3日
3ペール・ヤコブソン1956年11月21日1963年5月5日
4ピエール=ポール・シュバイツァー(英語版) フランス1963年9月1日1973年8月31日
5ヨハネス・ヴィトフェーン(英語版) オランダ1973年9月1日1978年6月16日
6ジャック・ド・ラロジエール(英語版) フランス1978年6月17日1987年1月15日
7ミシェル・カムドシュ(英語版)1987年1月16日2000年2月14日
8ホルスト・ケーラー ドイツ2000年5月1日2004年3月4日
代行アンネ・オズボーン・クリューガー アメリカ合衆国2004年3月4日2004年6月7日
9ロドリーゴ・ラト(英語版) スペイン2004年6月7日2007年10月31日
10ドミニク・ストロス=カーン フランス2007年11月1日2011年5月18日
代行ジョン・リプスキー(英語版) アメリカ合衆国2011年5月18日2011年7月5日
11クリスティーヌ・ラガルド フランス2011年7月5日2019年9月12日
代行デーヴィッド・リプトン アメリカ合衆国2019年7月2日2019年10月1日
12クリスタリナ・ゲオルギエヴァ(英語版) ブルガリア2019年10月1日(現職)

出資額と議決権

IMFの融資財源の大半は、主に加盟国が払い込むクォータ(出資割当額)を原資としており、更に一部加盟国からの借り入れによってクォータ資金を補っている。低所得国向けの譲許的融資及び債務救済は、別途、拠出ベースの信託基金により賄われている。[33]

IMFでの議決権は一国一票ではなく、下記のクォータ(出資額)による。各加盟国は基礎票(約750票)に加え、出資額100,000SDRごとに1票が与えられる。[34]2010年のクォータ改革によって新興国の占める比率が大幅に高まり、BRICs4国は常時10か国入りした。出資比率は2018年1月現在下記の通り。現在第15次一般クォータ見直しの議論が進行中であり、2019年秋の年次総会までに見直しを完了することとしている。[35]

2018年現在の出資上位10か国と票数[36])


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