国際捕鯨委員会
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日本の勧奨活動[21]について、日本の水産庁は、日本の海外援助はインドやアルゼンチンなど反捕鯨国にも行われており、援助のためにIWC で日本の味方をする必要も無いし、反捕鯨政策をとったから援助が無くなるわけでもないと、援助とIWCでの投票との関係を完全に否定する主張を以前より行ってきた(水産庁ウェブサイト)。また、日本捕鯨協会は各国の票を政府開発援助と引き換えに得ているという批判に対して「全くのデタラメ」かつ「途上国を侮辱するものであり、カリブ諸国などは怒りを表している」と強く否定している(日本捕鯨協会ウェブサイト)。

但しこれに対してカリブ諸国の一つであるドミニカの環境・計画・農水大臣で当時本問題を主管していたアサートン・マーチンは反捕鯨団体であるドミニカ自然保護協会(Dominica Conservation Association - DCA)の会長でもあったが、日本がODAによる漁業施設建設工事と引き換えに自国票を買収したと非難する発言を繰り返しており、2007年に訪日した際も、こうした日本の行動を「新たな植民地主義である」と主張している(マーチン発言ビデオ映像。3分50秒以降)。

このほか、グレナダでは、日本政府がグレナダ政府に対してIWCに関する資金を拠出していた旨を確認する文書が2005年に発見されている ⇒(グレナダ政府財務省発出文書)[リンク切れ]。また、この文書の存在を伝えた豪州公共放送「ABC」の番組中、ソロモン諸島の元水産専務次官で10年間IWC代表を務めたアルベルト・ワタ (Albert Wata) は、「日本は当国政府の分担金を払っている。日本は会議への代表団もサポートしている。会議への航空運賃とか日当の形でだ[22]」と語り、ワタの後IWC代表を受け継いだネルソン・カイル (Nelson Kile) 元水産相も同様に「日本が当国の会費を払っていた。はっきりしたことは確かではないが、おそらく10年間ぐらいだったと思う[23]」と証言している ⇒(豪州国営放送局ABC特集番組「Four Corners」)[リンク切れ]。シクア (Derek Sikua) ソロモン諸島首相も2008年、日本政府が会議出席費用を支払っていたことを認めている ⇒(豪州国営放送ABCウェブサイト)

2007年に捕鯨支持で新規加入したラオスは、ブアソーン・ブッパーヴァン首相訪日の際に国会で、IWCへの参加を日本との友好関係の例として挙げ、政府開発援助などを要請している[15]。コートジボワールに関しても、同国を訪問した山際大志郎衆議院議員がIWCでの支持への謝意を表明するとともに、漁業に関する技術援助を協議している ⇒(山際大志郎衆院議員ブログ)

そもそも前述のように亀谷博昭農水政務次官はODAによりIWC日本側支持国勧奨を明言しているのみならず、2001年の年次会合に際して当時交渉担当者であった小松正之は、日本のODA活用に関して「何も悪いことはない」と発言[24]、これに対してIWCでは、国連海洋法条約、ウイーン条約法条約、友好関係宣言等を印照しつつ、各国への内政干渉の一切を否認する決議案が採択される事態に至っている ⇒(IWC決議 2001-1号)。こうしたことから、世界自然保護基金(WWF)など多数の環境NGOは、日本がODAとの取引による勧奨行動を行っているとして、これを「買収(vote-buying)」であると批判している ⇒[16]

一方、反捕鯨陣営も1982年のモラトリアム採択に向けて同様に資金援助を伴った新加盟国の勧誘を行っていた。Whale and Dolphin Coalitionの活動家Jean-Paul Fortom-Gouinはアンティグア、ベリーズ、コスタリカ、セント・ヴインセントを勧誘し、IWCへの分担金などを提供していた。

世界自然保護基金(WWF)会長だったピーター・スコット卿(Peter Scott)や/グリーンピースの会長デイビッド・マクタガート(David McTaggart)との会議で、新規勧誘を決めた[25]

当時グリーンピースの海洋哺乳動物のコンサルタントを務めていたフランシスコ・パラシオ(Francisco Palacio)によると、このような工作で新規加盟させた国は少なくとも6か国あり、それら加盟国の年会費だけでも年間約15万ドルに達したという[26]。この頃に日本代表団の首席代表であった米澤邦男によると、新規加盟国の中にはIWCへの分担金をNGOからもらった小切手で支払ったために関係が発覚した例もあった[27]

なお、投票勧奨活動と関連して、日本は「全てのメンバー国が自由に意志を表示できるよう ⇒[17][リンク切れ]」無記名投票制を主張し、2006年までしばしば導入提案を行っていた。これに対しては透明性に問題が生じる、オーフス条約の趣旨に反するなどの批判があり、議長選出などを除いて採用されていない[28]

その後、2007年2月に東京で開かれたIWC正常化に関する会合(後述)でも検討され、少なくとも現時点では秘密投票を目的とするのを再検討すべきであり、評決は避け、コンセンサスによる合意を図るべきであるなどの見解が、同正常化会合のワーキンググループから提示され、この旨が正常化会合議長総括として、2007年の年次会合総会に報告されている[29]。これを受けて2007年のIWC年次会合では、日本側は秘密投票の案件等に対する表決の要請を取り止めている。
日本の脱退

2018年9月10日から14日の国際捕鯨委員会(IWC)第67回総会において、日本が鯨類の保護・持続的利用の両立と立場の異なる加盟国の共存を図るとして提案したIWC改革案について、持続的利用支持国が「これがIWC機能回復のための適切な対応である」などと支持したが、反捕鯨国は「商業捕鯨につながるいかなる提案も認めない」「IWCは保護のみを目的に「進化」しており、モラトリアムの解除は一切認められない」などとして、強硬に反対し、賛成27・反対41・棄権2で否決された[30]。これを受けて「政府・自民党内ではIWC脱退論まで浮上」という報道もされたが[31]、その後の状況について、日本国政府の公式発表はなかった。

2018年(平成30年)12月20日になって報道機関は、政府関係者が明らかにしたという形で一斉に脱退方針の決定を報道した[32][33][34]

日本国政府は、正式に12月25日の閣議で、国際捕鯨取締条約からの脱退を決定し、26日に正式に脱退通知を行い[6][35]菅義偉内閣官房長官談話として公式に発表した[36]。これにより、2019年令和元年)6月30日に国際捕鯨委員会を脱退し、7月1日から商業捕鯨を再開させた[37]


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