国際捕鯨委員会
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しかしながら、後述のように当初捕鯨支持として加入した一部中南米諸国が反捕鯨側での投票行動をとるようになったこと、EU加盟各国が新たに反捕鯨国としてIWCにも相当数が加盟したこと、さらには捕鯨を支持するアフリカ諸国の一部が分担金の不払いにより投票権を失っていること等によって、2007年年次会合ではIWC内での勢力比は反捕鯨国側に傾くこととなった。但し、日本側も2008年3月にアフリカ、アジア大洋州の加盟検討国他12カ国を招請して東京で会合を開くなど、引き続き新規加盟の勧奨を続けていた[13]
加盟国と勢力分布青色で塗られた国が加盟国

加盟国は88か国(2019年7月現在)。反捕鯨国が優勢となっている。年次会合における各国の投票行動を下に示す([13] [14] を基に作成した)。代表団は、捕鯨支持国代表では水産問題担当官庁、反捕鯨国では環境問題担当官庁が中心となって構成される傾向が見受けられる。

アジア:8(捕鯨支持4、中間派2、反捕鯨2)

捕鯨支持:カンボジアモンゴルラオス韓国

中間派:オマーン中国

反捕鯨:イスラエルインド

アフリカ:20 (捕鯨支持17、中間派2、反捕鯨1)

捕鯨支持:エリトリアガーナカメルーンガンビアギニアギニアビサウコートジボワールコンゴ共和国サントメ・プリンシペセネガルタンザニアトーゴベナンマリモーリタニアモロッコリベリア

中間派:ガボンケニア

反捕鯨:南アフリカ

オセアニア:8 (捕鯨支持5、中間派1、反捕鯨2)

捕鯨支持:ツバルパラオキリバスナウルマーシャル諸島

中間派:ソロモン諸島[14]

反捕鯨:オーストラリアニュージーランド

ヨーロッパ:32 (捕鯨支持3、中間派1、反捕鯨28)

捕鯨支持:アイスランドノルウェーロシア

中間派:デンマーク

反捕鯨:アイルランドイギリスイタリアエストニアオーストリアオランダキプロスギリシャクロアチアサンマリノスイススウェーデンスペインスロバキアスロベニアチェコドイツハンガリーフィンランドフランスブルガリアベルギーポーランドポルトガルモナコリトアニアルクセンブルクルーマニア

北アメリカ:1 (反捕鯨1)

反捕鯨:アメリカ合衆国

カリブ諸国:6 (捕鯨支持5、不明1)

捕鯨支持:アンティグア・バーブーダグレナダセントヴィンセント・グレナディーンセントクリストファー・ネイビスセントルシア

不明:ドミニカ国[15]

中央・南アメリカ:15 (捕鯨支持1、反捕鯨14)

捕鯨支持:スリナム

反捕鯨:アルゼンチンウルグアイエクアドルグアテマラコスタリカコロンビアチリドミニカ共和国ニカラグアパナマブラジルベリーズペルーメキシコ

総計:88(捕鯨支持36、中間派3、反捕鯨50、不明1)

上記のとおり、地域ごとに捕鯨支持・反捕鯨の勢力比が大きく異なっている。

アジア、アフリカ、オセアニアの各地域では、捕鯨支持国が優勢である。

EU諸国(27か国中25か国がIWCに加盟。マルタ、ラトビアが未加盟)は、デンマーク[16]を除き、全て反捕鯨の立場である。EUでは1992年の「ハビタット指令[17]」が(全ての鯨類を付属書Wに掲げて)EU内での意図的捕殺に関する保護措置を取り、製品の保持・輸送を禁じている。2008年のIWC年次会議にはEU議長国としてスロベニアが代表して発言を行うなど、共通のポジションを取っている。

ラテン・アメリカでは、日本側はカリブ諸国やニカラグア、パナマ、ベリーズなどに対してIWC加入を勧奨し、これら諸国は当初捕鯨支持国であった。しかし、ブラジル・アルゼンチン・チリといった主要ラテンアメリカ諸国(いずれも反捕鯨国)の唱導によって、ラテンアメリカ諸国は国連における表決と同様、地域ブロックとして共通の投票行動(この場合、反捕鯨)をとるようになり、反捕鯨国となっている[18][19][20]

内陸国(モンゴル・ラオス・マリ・オーストリア・サンマリノ・スイス・スロバキア・チェコ・ハンガリー・ルクセンブルク)も加盟している。

新規加盟国

2008年以降の新規加盟国は以下の通り。

ルーマニア(反捕鯨・2008年4月加盟)

タンザニア(捕鯨支持・2008年6月加盟)

エリトリア(捕鯨支持・2008年9月加盟)

リトアニア(反捕鯨・2008年11月加盟)

エストニア(反捕鯨・2009年1月加盟)

ポーランド(反捕鯨・2009年4月加盟)

ガーナ(捕鯨支持・2009年7月加盟)

ドミニカ共和国(反捕鯨・2009年7月加盟)

ブルガリア(反捕鯨・2009年8月加盟)

コロンビア(反捕鯨・2011年8月加盟)

サントメ・プリンシペ(捕鯨支持・2018年5月加盟)

リベリア(捕鯨支持・2018年8月加盟)

勧奨活動

日本の勧奨活動[21]について、日本の水産庁は、日本の海外援助はインドやアルゼンチンなど反捕鯨国にも行われており、援助のためにIWC で日本の味方をする必要も無いし、反捕鯨政策をとったから援助が無くなるわけでもないと、援助とIWCでの投票との関係を完全に否定する主張を以前より行ってきた(水産庁ウェブサイト)。また、日本捕鯨協会は各国の票を政府開発援助と引き換えに得ているという批判に対して「全くのデタラメ」かつ「途上国を侮辱するものであり、カリブ諸国などは怒りを表している」と強く否定している(日本捕鯨協会ウェブサイト)。

但しこれに対してカリブ諸国の一つであるドミニカの環境・計画・農水大臣で当時本問題を主管していたアサートン・マーチンは反捕鯨団体であるドミニカ自然保護協会(Dominica Conservation Association - DCA)の会長でもあったが、日本がODAによる漁業施設建設工事と引き換えに自国票を買収したと非難する発言を繰り返しており、2007年に訪日した際も、こうした日本の行動を「新たな植民地主義である」と主張している(マーチン発言ビデオ映像。3分50秒以降)。

このほか、グレナダでは、日本政府がグレナダ政府に対してIWCに関する資金を拠出していた旨を確認する文書が2005年に発見されている ⇒(グレナダ政府財務省発出文書)[リンク切れ]。また、この文書の存在を伝えた豪州公共放送「ABC」の番組中、ソロモン諸島の元水産専務次官で10年間IWC代表を務めたアルベルト・ワタ (Albert Wata) は、「日本は当国政府の分担金を払っている。日本は会議への代表団もサポートしている。会議への航空運賃とか日当の形でだ[22]」と語り、ワタの後IWC代表を受け継いだネルソン・カイル (Nelson Kile) 元水産相も同様に「日本が当国の会費を払っていた。はっきりしたことは確かではないが、おそらく10年間ぐらいだったと思う[23]」と証言している ⇒(豪州国営放送局ABC特集番組「Four Corners」)[リンク切れ]。


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