国際捕鯨取締条約
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なお、捕鯨支持国・反捕鯨国間での考えられ得る妥協案として浮上したのが前述のアイルランド提案であり、反捕鯨国のうちにはこれを受け入れる向きもあると報道された ⇒(BBC・2008年ヒースロー中間会合報道記事)[74]
デソト提案

以上の議論を受け、小作業部会のデソト議長は以下の妥協案を2009年2月に提示した ⇒(デソト提案)

まず日本の沿岸捕鯨については、5年にわたり、太地(和歌山県)、網走(北海道)、鮎川(宮城県)、和田(千葉県)から日帰りを条件に5隻以下でのミンククジラ漁を認めるとし、6年目以降については、(1)今後も継続、(2)廃止の両案を併記した。

日本による特別科学許可発給に基づく操業については、2つの案が提示された。

第1案では、(1)ナガスクジラ及びザトウクジラの捕獲を行わない、(2)南極海のミンククジラについては、現在の捕獲量から毎年20%ずつ削減し、5年目に0とする、 という内容となっている。

第2案では、科学委員会からのアドバイスに基づき、今後5年間の捕獲頭数を決定して捕鯨を継続する、というものとなっている。
関連条約の諸規定
海洋法に関する国際連合条約(国連海洋法条約) ⇒[41]
同条約では第65条において、締約国は海洋哺乳類の保存のために協力するものとし、とりわけ鯨類については適当な国際機関を通じて協力する義務を課している。よって国連海洋法条約締約国は、国際捕鯨委員会か他の適当な国際機関を通じて鯨類の管理を協力して行う必要がある[75]
南極海洋生物資源保存条約 ⇒[42]
同条約では第6条において、同条約のいかなる規定も、国際捕鯨取締条約に基づき有する権利を害し及びこれらの条約に基づき負う義務を免れさせるものではない旨を規定している。
絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(いわゆる「ワシントン条約」) ⇒[43]
同条約では付属書Tにシロナガスクジラ、ナガスクジラ、ザトウクジラ、ホッキョククジラ、マッコウクジラ、ミンククジラなどの鯨類を掲載し、これらについては商業目的での貿易並びに海からの持込[76]を禁じている。日本は鯨類に関してミンククジラ、イワシクジラ(北太平洋のものを除く)、ニタリクジラ、ナガスクジラ、イラワジイルカ、マッコウクジラ、アカボウクジラにつき留保を付しており ⇒[44]、上記鯨種については同条約の適用を免れる。但し留保を付していないザトウクジラと北太平洋に生息するイワシクジラについては、公海上での標本捕獲・持込について、当該持込がされる国の科学当局(日本では鯨類の場合、水産庁)が、標本 (specimen) [77]の持込が当該標本に係る種の存続を脅かすこととならないと助言していること、当該持込がされる国の管理当局(日本では鯨類の場合、水産庁)が、標本が主として商業目的 (primarily commercial purposes) のために使用されるものではないと認め、同管理当局が持ち込みに先立ち上記についての証明書の発給を行う必要がある(第3条5項)。なお、経済的な利益獲得のための活動や、経済的利用のための活動は商業的とみなされること、非商業的側面が際立っていると明らかにはいえないあらゆる利用方法 (all uses whose non-commercial aspects do not clearly predominate) は、第3条5項の文言にある「主として商業目的 (primarily commercial purposes) 」であると解釈するものとされている(ワシントン条約第5回締約国会議 ⇒決議5.10)。以上から鑑み、日本によって実施が表明されたザトウクジラと太平洋イワシクジラ捕獲はワシントン条約の諸規定を侵害する違法行為にあたるとの見解が元ワシントン条約事務局長で国際法学者のピーター・サンド教授により提起されている[78]。現在のところ、日本はザトウクジラについては捕獲を見合わせているものの、サンド元ワシントン条約事務局長の見解に対して日本鯨類研究所は、商業目的であるか否かについての判断は締約国に委ねられていると主張している ⇒(日本鯨類研究所)。なおワシントン条約違反行為等に関しては、締約国会議の下に常設委員会が設けられており、同委員会は締約国会合において採択された諸決議に即し、条約違反国に対する貿易制裁を締約国政府に勧告する権限を有している。同委員会の貿易制裁勧告措置があった場合、大多数の条約違反国は是正措置を講じている[79]
脚注[脚注の使い方]^ 「捕鯨をめぐる情勢」 2014年8月 水産庁
^ 1951年2月20日内閣決定、3月23日国会承認、4月21日加入書寄託、同日発効、7月17日公布・条約第2号 ⇒(国立公文書館蔵・国際捕鯨取締条約御署名原本)
^ “国際捕鯨取締条約及び同条約の議定書からの脱退についての通告”. 外務省. 2024年5月5日閲覧。
^ “日本、IWC脱退 商業捕鯨 31年ぶり再開へ”. 日本経済新聞 (2019年6月30日). 2024年5月5日閲覧。
^ a b 1951年(昭和26年)7月17日外務省農林省告示第1号「国際捕鯨取締條約に対する日本国の加入通告書の受理された旨の通告」
^ a b c d 2018年(平成30年)12月27日外務省告示第412号「国際捕鯨取締条約及び千九百四十六年十二月二日にワシントンで署名された国際捕鯨取締条約の議定書からの日本国の脱退に関する件」
^ この点、日本政府は英語正文のscientific findingsについて、加入を行った1951年に科学的「認定」との訳語を当てている。正文は英語のみで、日本語正文は存在しない。本稿では、その後日本国政府(農林水産省)が「scientific findings」に関して「科学的知見」との訳語を当てていること ⇒(玉沢徳一郎農林水産大臣発ニュージーランドHodgson漁業大臣宛発出書簡(2000年1月21日付)別添資料)、また日本鯨類研究所も同様の訳語を当てていること ⇒[1]などに拠って、科学的「知見に基づく」との用語とした。
^ “国際捕鯨取締条約及び同条約の議定書からの脱退についての通告”. 外務省. (2018年12月26日). https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press4_006938.html 2019年1月3日閲覧。 
^ “平成30年12月26日 内閣官房長官談話”. 内閣官房. (2018年12月26日). https://www.kantei.go.jp/jp/tyokan/98_abe/20181226danwa.html 2019年1月3日閲覧。


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