国際捕鯨取締条約
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これらの科学的調査事業の学術的有効性については、学術的価値に極めて乏しいという意見が国際学会内で支配的であり、日本国内で捕鯨推進を主張する研究者からも「その意義が見えてこない」[57]と批判されている一方、極めて学術的価値の高い優れた研究プログラムであるという反論も日本鯨類研究所所属及びこれに関連する科学者より強く主張されている。

学術的価値を疑問視する意見を掲載した最も有名なものとしては、自然科学雑誌『ネイチャー』に2005年に査読の上掲載された、日本の科学調査事業の策定計画にも携わった粕谷俊雄博士 ⇒[26]、オーストラリアのニコラス・ゲイルズ (Nicholas J. Gales) 博士、米国のフィリップ・クラパム (Phillip J. Clapham) 博士、同じく米国のロバート・ブラウネル (Robert L. Brownell) 博士 ⇒[27]による「Japan's whaling plan under scrutiny」という論文 ⇒[28]が挙げられる。同論文は、こうした致死的捕獲を必然的に伴う日本政府の科学研究プログラムから「生じた査読論文は極めて少数にとどまっているばかりか、(IWC科学委員会発行の)『Journal of Cetacean Research and Management』に掲載された論文本数はゼロであり、そればかりか種の管理のために用いられる科学的パラメーターに関連した査読論文は、たった1本(系群構造に関するもの)であるに過ぎない[58]」と論難している(同上論文883頁)。

これに対しては日本鯨類研究所ウェブサイトにも、上記主張は「科学者としての信憑性を疑わざるを得ない事実の歪曲や誤認が多く含まれ」たものであり、かつ「感情的な記述」を含んだ全く根拠を欠くものであると強く反駁する見解が掲載されており ⇒[29]、また国際捕鯨委員会科学委員会提出文書にも同趣旨の反論文書が提出されるとともに、日本政府代表よりこれら学術的側面からの批判に対して反論が加えられている。科学調査プログラムとして最大の争点となる学問的有用性についても、査読つきの科学雑誌(英文、和文)に投稿した捕獲調査関連の論文数は84編にものぼる(JARPAが18年であることから、年間4.6本)こと、非査読ではあれIWC科学委員会に提出した論文数は150編以上であること[59]、並びに査読雑誌投稿を試みたものの、査読により論文掲載が却下されたこと[60]を挙げている。

このうち南極海において18年間行われた第一期JARPAプログラムについて、IWC科学委員会は1997年に中間レビュー、2006年に最終レビューを実施した[61]

JARPAの主たる目的の一つは、南極海ミンククジラの自然死亡率と個体数増加率の推定、生態系における同鯨種の解明であったが、「収集されたデータはIWCで援用されている科学的管理には一切必要のないデータであること、それどころか自然死亡率や個体数増加率、生態系における役割に関してはほとんど何も解明できていない、という厳しい評価を受けた」[62]として、この科学を名目とする調査には科学的妥当性がほとんど全く認められないという極めて厳しい批判の声も日本国内の研究者からあがるに至っている[63]。こうした見方に対して水産庁は「100点満点で50-60点がIWCの見方」とIWC科学委員会の結論を捉える一方[64]、日本鯨類研究所は、12月ワークショップが「(JARPA)調査のデータセットは、海洋生態系における鯨類の役割のいくつかの側面を解明することを可能にし、十分な分析を行えば、科学小委員会の作業や南極の海洋生物資源の保存に関する条約など他の関連する機関の作業に重要な貢献をなす潜在性を有している」と結論した[65]ことを踏まえ、「日本の調査の目的は科学であり、商業捕鯨が再開したおり、その捕鯨を持続可能なものにするための科学なのである」としてJARPAの科学的妥当性を強く主張している[66]

日本の南極海における調査捕鯨(JARPA II)に対しては、オーストラリアが日本を相手取り国際司法裁判所に対して同捕鯨がモラトリアム等を定めた条約付表に違反すると提訴を行い、この結果、国際司法裁判所は日本の調査捕鯨が商業捕鯨モラトリアム違反であるとの判決を下した。この結果、日本はJARPA IIを中止し、新たな調査計画を策定中である。

これまでに、日本以外で特別許可証発給を行い捕獲調査を実施したことのある国の例としては、米国[67]、ソ連[68]、オーストラリア[69]、カナダ[70]、韓国[71]などが挙げられる。

最近ではアイスランドがIWC再加盟後、2003年から2007年までのプログラムとしてミンククジラ計200頭(当初表明では年にミンククジラ100頭・ナガスクジラ100頭・イワシクジラ50頭で2年間)について、生物学的データ一般の収集及び捕食量調査を目的とした特別許可を発給の意図を表明した ⇒[30]。そして、実際に2006年までに161頭についての捕獲許可を発給して捕獲した。2007年も残る39頭についての許可を発給し ⇒[31]、うち少なくとも33頭の捕獲を行った ⇒[32]。このほか商業捕鯨も2006年に再開した ⇒[33]が、2007年にその操業を中止している ⇒[34][72]。上記アイスランドの特別許可発給に関しては、2003年のIWC年次会合の科学委員会において審議が行われ、これを受けて開催された本会議において懸念が表明され、賛否両論が付された。この本会議では、アイスランド及び日本の捕獲調査は商業捕鯨モラトリアムの精神に反すること、第8条は商業目的の鯨肉の供給のために供せられるものではないこと、今日では非致死的技術の利用でより優れたデータが低コストで得られること、実施中の捕獲調査及び新規の特別許可発給の自粛を求め、非致死的調査のみにすべきことなどを内容とする決議が、多数決で採択(賛成24・反対21・棄権1)された ⇒(Resolution 2003-2)。但しアイスランド政府は、同決議は何ら科学的・法的妥当性を有さないものであるとして強く反対している[73]
2007年年次会合の結果

採択された付表修正

ベーリング海・チュクチ・ボーフォート海の
ホッキョククジラについて、2008-2012年までの間に280頭陸揚げできる(1年間での銛打ちは67回を超えないこと)とする先住民生存捕鯨捕獲枠がコンセンサス(無投票による全体合意)で設定された。

東部北太平洋コククジラについては、2008-2012年までの間に620頭捕獲できる(1年間での捕獲は140頭超えないこと)とする先住民生存捕鯨捕獲枠がコンセンサスで設定された。

セントヴィンセント・グレナディーンのザトウクジラについては、2008-2012年までの間に20頭捕獲できるとする先住民生存捕鯨捕獲枠がコンセンサスで設定された。

グリーンランドについては、2008-2012年までの間の各年、西部グリーンランドについては、ナガスクジラに対する20回の銛打ち、ミンククジラに対する200回の銛打ち、ホッキョククジラに対する2回の銛打ち、東部グリーンランドについては、ミンククジラに対する12回の銛打ちができるとする先住民生存捕鯨捕獲枠についてコンセンサスが得られなかった。そこで実施された投票の結果、賛成41・反対11・棄権16・欠席4となり、4分の3の多数を得たため可決・設定された。


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